短剣とナイフの完成

 家族が水魔法を覚えてから3日が経った。

 今、俺はダンジョン周回中である。(いつも通り)

 今日の周回は早めに上がって、ホストンさんに依頼していた武器を取りに行く予定だ。


「〈タイダルウェーブ〉〈タイダルウェーブ〉〈タイダルウェーブ〉〈タイダルウェーブ〉〈タイダルウェーブ〉よしっ、いい感じだな」


 手のひらから水の波が勢いよく飛び出し、名前通り津波のように敵に襲いかかった。

 俺は水魔法のレベルが上がって覚えたタイダルウェーブでゴブリンキングを倒した。

 一昨日レベルが上がった水魔法を鑑定する。


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水魔法:水属性の魔法を操ることが出来る

 LV1:〈ウォーターボール〉を覚える 魔力+5 魔力消費2

 LV2:〈ウォーターウォール〉を覚える 精神力+5 魔力消費2

 LV3:〈ウォーターアロー〉を覚える 魔力+5 魔力消費3

 LV4:〈アクアバレット〉を覚える 抵抗力+5 魔力消費5

 LV5:〈タイダルウェーブ〉を覚える 魔力+5 魔力消費8

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 このタイダルウェーブ、おそらくゲームでいう所の全体攻撃や範囲攻撃に分類される魔法で威力はアクアバレットより少し弱いぐらいだ。

 全体攻撃の水魔法という事で、放てば辺り一面が水浸しになってしまう。

 なので、周回がしにくくなると思ったのだが、タイダルウェーブを放った後に、ウォッシュのように水よ、なくなれと思ったら水がそれなりに消えたのだ。

 水溜まりが少し残っているが、大体は消えていった。

 ウォーターボールでも試したが、移動途中で消した場合、スッと玉のほとんどが消え、少し残った水がその場に落ちる感じだ。

 これは魔法レベルが上がれば完全に消せるかも知れないな。それまではダンジョンの外で使うのは避けようと思う。

 ちなみにすぐに魔法を消しても魔力消費は変わらないし、魔力が戻ってくることもない。

 

 周回が終わった最後に、残った魔力で検証もそこそこ行っている。

 タイダルウェーブの範囲を狭めたり、逆に広げたりとしているが、少ししか変わらない。

 これも水魔法のレベルを上げる必要があるのかもしれない。

 魔力操作レベル10には変幻自在に使えるようになるとあるが、いきなり使える訳ではなく努力する必要があるようだ。

 そしてウォーターボールのカーブも少し曲がるようになった。

 水属性への変換もかなりスムーズに行えるようになったので、あとは水魔法のレベルを上げてからの検証になりそうだ。


 時刻を確認してみると15時30分になろうとしていた。

 いい時間なので帰還する事にした。

 この3日間の成果は1日目と2日目は15周ずつ、今日は14周と安定して周回出来ている。

 そして、銀箱6個、赤箱21個、木箱17個という結果になった。

 とりあえず、銀箱で出たものは銀のインゴット、ハイポーション2本、漆黒のとんがり帽、武闘家の指輪、パワーストーンリング、槌術のオーブLV1だ。

 とうとうオーブが出た。出たが、スキルオーブだったのだ。残念。槌術ということはハンマー系の武器が必要だし、当分使わないと思う。武器を作るまでは、魔法袋の中だろう。

 それと銀のインゴットはホストンさんの所の武器屋で見た白銀の剣が銀を特殊加工して作られていたから、これを使っていたのかもしれないな。あとでホストンさんに聞いてみよう。

 ハイポーションはいいとして、残りは装備品なのだが、初めてアクセサリー以外の装備が出たのだ。漆黒のとんがり帽、頭の防具だな。見た目は魔女の帽子のような感じだ。

 漆黒のとんがり帽を鑑定してみる。


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防具名称:漆黒のとんがり帽

状態:良品質

価値:Eランク

特殊効果:なし

詳細:つばが広く頭上の先が尖った漆黒の帽子。少し魔法に耐性がある。耐久力+10、抵抗力+10

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 耐久力と抵抗力の両方が上がる防具だ。

 指輪の時もそうだったが、装備品は自動で大きさを調節してくれるみたいで、自分の頭の大きさにサイズが変更されるようなのだ。しかも走ったり、頭を激しく振っても落ちない。流石ファンタジー世界だ。理由は分からないが、とにかくすごい。


 残りのアクセサリーも鑑定してみよう。


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アクセサリー名称:武闘家の指輪

状態:普通

価値:Fランク

特殊効果:なし

詳細:攻撃力と耐久力がほんの少し上がる指輪。攻撃力+5、耐久力+5


アクセサリー名称:パワーストーンリング

状態:普通

価値:Fランク

特殊効果:なし

詳細:攻撃力が少し上がる指輪。攻撃力+10

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 銀箱の指輪はステータスアップ値が合計10になる感じだな。

 このパワーストーンリングを2つ付ければ、俺の持ってる鉄の剣よりも攻撃力が高くなるから、そう考えると銀箱の指輪強いな。


 この後はダンジョンから帰還してギルドまで走って行き、報告した後に武器屋へ向かった。


「こんにちは、ホストンさん」


「いらっしゃいませ」


「いらっしゃいませ、親方なら奥にいるので、少しお待ちください」


「あ、お願いします」


 店に入ったと同時にホストンさんに挨拶したが、本人はいなかった。

 そのかわりに、この店に店員さんがいたのだ。しかも2人も。もしかして店の中にも何人かいるのか?あとで聞いてみよう。


 しばらくするとホストンさんが短剣とナイフを持ってやってきた。


「おお、リオン来たか。出来てるぞ。これだ」


「ホストンさん、こんにちは。すごいですね。ありがとうございます」


 鞘から抜いて見てみると、銀白色に輝く短剣とナイフは、鏡のように反射し俺を写していた。両方を鑑定してみる。


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武器名称:鉄の短剣

状態:高品質

価値:Eランク

特殊効果:なし

詳細:鉄で作られた短剣。攻撃力+15


武器名称:鉄のナイフ

状態:良品質

価値:Eランク

特殊効果:なし

詳細:鉄で作られた解体用のナイフ。短剣としても使用可能。攻撃力+13

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 おお。短剣の方、高品質になってる。まじか。鉄の剣はいくつかある中で2本しかなかったのに、いきなり高品質作り出してくるなんて、やはり凄腕の鍛冶師なんだな。それに鉄のナイフも短剣として使えるみたいだ。普通に強い。


「短剣の方は鉄の剣と比べても遜色ないですし、ナイフの方もすごく出来がいいですね。本当にありがとうございます」


「短剣の出来の良さが分かるとは、流石だなリオン。ナイフの方はダンジョン潜ってる間は使わないだろうが、冒険者稼業をやっていくなら持ってて損はないと思うぞ」


 学校を卒業したら冒険者として生きていきたいと思っているからな。非常に助かる。

 ついでに銀のインゴットについても聞いてみるか。

 他の店員さんもいるけど、今後もボスを倒した事を隠すのは難しそうだから、普通に話してしまおう。

 俺は机の上に銀のインゴットを取り出して、ホストンさんに聞いてみた。


「銀のインゴットを手に入れたのですけれど、これでどんな武器が作れますか?」


 銀のインゴットといえば、ゲームだと換金アイテムだったりするのがあるからな。

 この世界だとあそこにある白銀の剣の材料になっているんじゃないかなって予想はしているがどうだろうか?


「お、お前ぇ、銀のインゴットが出たのか?」


 あれ、結構驚いていないか?他の店員さんも口をぽかーんと開けてるし。


「はい、普通に出ましたけど何かあるんですか?」


「いや、中級ダンジョンでは割と出るって聞くんだが、まさか初級ダンジョンから銀のインゴットが出てくるとはな。驚いただけだ」


 中級ダンジョンだと結構出るんだな。それなら、今は残しておいた方がいいかもしれないな。初級ダンジョンじゃ量もあんまり貯まらないだろうから。


「そこにある一際輝いてる剣があるだろう。あれは白銀の剣っていうんだが、あれの素材の一部で銀を使ってるんだ。ただあれぐらいの剣を作るとなると、銀のインゴットがあと3つは欲しいな」


 やはり白銀の剣に銀のインゴットが使われているのか。あと3つの銀のインゴットが必要っと。


 この後は少し世間話をしたり、店員さんの話を聞いた。

 どうやら店員さんは店番に2人と店の中に2人、1人お休みで全員で5人いるらしい。

 こないだ店員さんがいなかったのは、このお店が本来は9時から開店なので店員さんがまだ出勤してなかっただけだったそうだ。

 ホストンさんはもっと早くからお店を開けているらしいのだが、理由が俺みたいな客がたまーにいるから、お店にいるそうだ。

 ついでに、俺がボスを倒している事は口止めして貰うようにお願いした。知られても問題ないかも知れないが、念のためだ。


「あっ、忘れてました。ホストンさん、鉄のインゴットで今度は槍を作って欲しいです。これでお願いします。足りますか?」


 俺は鉄のインゴットを5つ取り出して机の上に並べた。


「いや、インゴットは5つもあれば足りるが、槍も欲しいのか?」


「はい、色んな武器を使いたくて」


「そうか。槍には片手槍と両手槍があるんだが、どっちを使うか決めてるか?」


「うーん、決めてないですけど、どう違うか教えて貰えますか?」


 何となく分かるけど、ここは違いを聞いた方が良さそうだな。


「片手槍は片方の手で槍を操り、もう片方の手で盾を持ち攻守バランスの取れた戦い方が出来るんだ。両手槍の方は両手で槍を持ち、攻撃力重視になる。攻め際をしっかり見極めないと行けないから、上級者向けの武器になるな」


「なるほど、それなら片手槍にします。加工費はいくらになりますか?」


「加工費は5000Lになる。片手槍ならインゴットは4つでいいから1つ返すな。また出来のいい槍を作ってやるからまかせな。また3日後の夕方までには出来るようにするからな」


「はい、楽しみにしてますね。よろしくお願いします」


 こうして俺は短剣とナイフを手に入れて、さらに槍の注文をしてから家に帰るのだった。

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