さあ、周回をしよう

 俺は戸惑いの森ダンジョンの入口から真っすぐ一直線に走っている。

 前回イモムーが出現した場所に今回もいた。


「おっ、同じ場所にいたな」


 俺はすれ違いざまに鉄の剣で斬りつける。

 イモムーは光の粒子になって消えたので魔石を拾い魔法袋にしまって、すぐ次のイモムーの場所へ走り去る。

 そして次の場所にも同様にイモムーがいた。


「ここも一緒だな、これは毎回同じ配置かもしれないな」


 再度イモムーを鉄の剣で斬りつけて倒し、魔石を回収した。

 そしてそのまま5体目まで同じ配置だったので、そのまま倒して階段を目指す。


「次の階層への階段も同じ場所だな。こりゃ、周回がかなり楽だぞ」


 ここまで、全部が前回と同じだ。

 次の階層も同じである可能性は高い。

 ライトを使い階段も一気に降りて、そのままゴブリンを目指す。


 ゴブリンの位置も前回同様に5体とも配置は同じだったので、一撃で倒し魔石を回収していく。

 そして、次の階層への階段も一緒の場所にあり下りればセーフティーゾーンがある。


「ここまで一緒なら毎回同じ配置のダンジョンに違いないな」


 俺はウキウキな気持ちで、ボス部屋に乗り込んだ。


「さあ、次の宝箱は何が入ってるかな?」


 そう言いながら、俺はゴブリンキングへ駆けていく。

 ゴブリンキングの大剣を鉄の剣で受け流したら、〈身体強化〉しながら蹴りと共に〈インパクト〉を放つ。

 ゴブリンキングが怯んだ隙にさらに〈インパクト〉、〈インパクト〉、大剣を受け流してからの〈インパクト〉、〈インパクト〉。

 ゴブリンキングはわずか1分程で光の粒子へと変わっていった。


「よし、攻撃と受け流しのタイミングだけ身体強化をすれば魔力の消費も抑えられるな。いい実践経験になった」


 周回するには魔力の消費を抑えなければならないので、身体強化の使用はタイミングが大事だ。

 俺はゴブリンキングの戦闘2回目にして、かなり慣れてきていた。


 魔石を回収した後、宝箱の方へと向かった。


「あれ、木箱だ。これは宝箱にもランクがあるな。一番高いランクのは金箱とか虹箱かな?出てくるのが楽しみだ」


 俺は木箱をすっと開ける。木箱はおそらく一番低いランクだと思うからだ。


「あっ、ポーションだ」


 木箱の中にはポーションが2本入っていた。

 うん、外れだね。

 でも、手持ちが2本しかないからそれなりに予備は持っててもいいかもね。魔法袋がいっぱいにならないうちはだけど。

 ちなみにポーションを鑑定するとこうだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名称:ポーション

状態:普通

価値:Eランク

調合素材:薬草と魔力水

詳細:傷にかけると少し治り、体力を40回復する。飲むとかける時より体力を10多く回復する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 薬草の上位互換だね。

 魔法袋からダンジョン攻略のノートとペンを取り出す。

 宝箱のページを開き、木箱で何が出たかを書くのと、赤箱と木箱で種類がいくつかあると思われるので分類するように書いた。

 魔法袋にノートとペンをしまい、替わりに水を取り出し、水分補給をした。ほんの少し休憩だ。



「よーし、3周目行ってみよー-!」


 俺はテンションが高かった。気づけば右手を空に上げ、ジャンプしているではないか。

 例え木箱ではずれが出ようと宝箱に種類があり、まだ見ぬレアアイテムがあるかもしれないと思うとワクワクするのだ。

 これはゲーマーの性だからどうしようもないのだ。

 それにファンタジー感満載になってきたので、心も子供に戻っているのかもしれない。


 そして、3周目のゴブリンキングを倒して宝箱を見てみると赤箱だった。


「赤箱はわりと出やすいのかもしれないな」


 そして赤箱を開けてみると、


「あれ、ポーションが2本……木箱と同じものが出るのか?」


 ポーションを2本取り出してみると、中身の色が違った。どうやら性能違いのポーションのようだな。ハイポーションとかかな?

 ちなみに普通のポーションは薄い青色で、今宝箱から出たポーションは薄い桃色だ。

 取り出したポーションに〈鑑定〉してみた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名称:マジックポーション

状態:普通

価値:Dランク

調合素材:ポーションと魔力草

詳細:身体にかけると魔力が40回復する。飲むとかける時より魔力が10多く回復する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 マジックポーションだ。所謂、魔力回復ポーション。

 今の俺からすると回復量が微々たるものだが、これよりも上位のマジックポーションが手に入れば、十分使えるな。

 そもそもここは初級ダンジョンなのだから、ここでは十分な性能なのかもしれない。


 ノートの宝箱情報にマジックポーションを書き込んだ後、転移陣に乗り4周目に向かった。




「はっ、止めだ」


 本日、4回目のゴブリンキングが光の粒子に散ったところだ。

 絶好調だ。かなり身体強化のタイミングも掴めたし、剣で捌いて蹴りでダメージを与える戦闘方法も身についてしまった。

 我ながら独特の戦い方だと思いつつ、結構いい感じなのがとても気に入っている。

 そう思いながら、宝箱に近づいてようやくあることに気が付いた。


「ふぁっ。銀箱だー-!!」


 今日の最後で、レアっぽい宝箱を引いてしまった。

 やはり俺は持っている男なのだろう。

 さあ、なーにがでるかなー。


「これは、玉…だな。謎の玉を手に入れたな」


 ビー玉を少し大きくしたぐらいの玉を手に入れたが、何に使うか全くわからない。

 色は水色だな。こういう時は鑑定を使うに限るな。

 覚えてよかった鑑定様、レベル上げてよかった鑑定様。

 それじゃあ、謎の玉を〈鑑定〉っと。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名称:水魔法のオーブ(LV1)

状態:高品質

価値:Bランク

詳細:水属性の魔力を秘めたオーブ。所持している状態だと、水魔法のウォーターボールが使えるようになる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふおおぉぉぉーー!大当たりだ。ヤッフーー!!」


 これは俺的には大当たりでしょ。やったよ、魔法使えるようになるんじゃないか。

 問題は使い捨てなのか、回数制限付きなのか、永続的に使えるのか……だな。

 うー-ん、帰ってコウガに聞いてみた方がいいかもしれないな。

 もし知っているようなら、教えて貰えばいいからな。

 よし、そうと決まればすぐに帰ろう。

 俺は転移陣に乗り、急いでダンジョンを後にしたのだった。

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