鑑定の儀
今日は1月1日[鑑定の儀]の日だ。
空は晴れ渡っており、風が少し冷たく吹いている。
「さて、今日は[鑑定の儀]が終わったら、鉄の剣を買って貰いダンジョンに乗り込むぞ」
待ちに待った[鑑定の儀]の日だ。
ダンジョン解禁日でもある。
リオンの秘密事項を見せた後に、鑑定の儀が終わったらダンジョンに1人で行ってもいいとコウガより許可を貰っている。
コンコンとドアをノックする音が聞こえ、扉が開いた。
「リオン様、おはよう。今日は[鑑定の儀]だね」
「ミラさん、おはよう。待ちに待った[鑑定の儀]がようやく来たよ」
「ふふっ、それじゃあ、ご飯食べにいこっか」
「うん、朝食が済んで少ししたら出かける感じだったよね?」
確かアル兄の時はご飯食べて少し休憩してから出かけてた記憶がある。
「そうだね。ご飯食べてから少しは休憩できると思うよ」
ミランダと[鑑定の儀]について会話しながら食堂へ向かう。
どうやら[鑑定の儀]は9時開始らしい。今が7時少し前だから、朝食が済んでから少しはゆっくり出来る感じだな。
ここから教会までは20分かかると計算して8時30分頃出れば、余裕で間に合う感じだ。
食堂に着くとコウガ、マリー、リカルドがすでに集まっていた。
「お父様、お母様、リカルドさん、おはようございます」
「おはよう。リオン」
「リオンちゃん、おはよう」
「リオンお坊ちゃま、おはようございます」
リカルドは挨拶を済ますと、ミランダと一緒にキッチンへ料理を取りに向かった。
ちなみにミランダは俺を起こしに来る前に、すでにみんなと挨拶を済ませている。
みんなと朝食を済ませてから、今日の[鑑定の儀]の話をする。
「リオン、少し休憩したら[鑑定の儀]に向かうぞ。それで終わったら鉄の剣を買ってから……ダンジョンに行きたいんだよな?」
「出来ればダンジョンに行ってみたいです」
「わかった。約束したからな。ダンジョンに行く前に冒険者ギルドに登録もしような」
「はい、ありがとうございます」
冒険者登録も今日するんだったな。
一気にやることが増えた感じがするな。
それにしても相変わらず、俺のしたいことを許してくれる親で本当に良かった。
「リオンちゃん、ダンジョンに行くのはいいけど熱中しすぎて、帰りが遅くなるのはダメよ」
「はい、気を付けます。それにしてもよく1人で行くのを許してくれましたね?」
そうなのだ。ダンジョンに俺1人で行きたいと言ったら、普通に許可が下りたのだ。
「そりゃあ、あの説明を受けたらダンジョンへ行っても問題ないと判断できるしな。一応ステータスプレートが出来たら確認だけはするからな」
「ママにもステータスプレート見せてね」
「わかりました。ステータスプレートで分かる範囲を確認して下さい」
ステータスプレートだとスキルレベルがないからな。
だけど、能力値は表示されるから、それで判断して貰おう。
そうこうしている間に時間が来たので、コウガと一緒にテルーゼの町の教会に向かった。
教会前に着くとすでに何十人と人が集まっていた。
「お父様、今年は50人以上の子供が鑑定の儀を行うようですね」
「アルスの時もこのぐらいの人がいたぞ」
あれ?アル兄は100人ぐらいいたって言ってたような気がするんだけど、もしかして大勢いたからあまり数えずに100人ぐらいって言ったのかも。
でも、大体50人ぐらいはいるんだな。確か近くの村とかからも集まってくるらしいからな。
少し遠くの村とかだと前日には、この町の宿屋に泊っているとのことだ。
9時になり時間が来たため、順番に教会の中に入っていく。
その時、名前を確認しながら保護者と一緒に入っていった。
教会の中は講堂のようになっており、奥に少し高くなった壇上があり、その中央の机の上には魔道具と思われるものが置かれている。
その後ろの一番奥には真っ白な女性の像の彫刻が建てられている。
周りには神官が数名待機している。
全員が入ったところで壇上に司教様が上がってきた。
「本日は皆様、[鑑定の儀]にお集まり頂き、ありがとうございます。私は司教のダリスと申します。[鑑定の儀]にて、ステータスプレートが作られ職業やスキル、魔法などが発現致します。これらは創造神アトラトス様より授けられたとされており、将来の為の指針になりましょう」
司教様の声が教会の中、全体に広がっていく。
どうやらマイクのような魔道具を使っているようだ。
職業とかは創造神から授けられた設定になってるんだな。何かゲームっぽいな。創造神アトラトスか、はじめて神様の名前知ったな。これは鑑定の儀の中で神様に会うパターンでは!?少しだけ期待してるぞ。
「それではこれより[鑑定の儀]を1人ずつ順番に行いますので、名前を呼ばれましたら保護者と一緒にこちらの壇上まで上がって来て下さい。上がられましたら、こちらの鑑定用の魔道具の水晶に魔力を流して下さい。ステータスプレートが作られます。ステータスプレートは身分証になりますので、大切にして下さい。終わりましたら、空いているところで全員が終わるまでお待ち下さい。最後に少し説明がありますので。それでは、始めましょう。まずはソルシャ、前に来て下さい」
こうして名前の呼ばれた者から順番に[鑑定の儀]が始まった。
1人ずつ鑑定の儀が行われるのだが、俺の予想とは違い、どの職業についたか言われないのだ。俺はてっきり一人ひとり発表されるとばかり思っていた。
だが、これなら俺が鑑定士であると知られるのは司教様だけになるから、周りに驚かれることはないだろう。
少し回りを見てみるとほとんどが人族だが少しだけ獣人族もいるようだ。
ただ、エルフやドワーフは今だに見たことがない。
獣人はこの町にもいるので、初めて見た時ほど興奮はしていない。
1時間程経過して8割りぐらいが終わった頃、ようやくお呼びがかかったようだ。
「リオン、前に来てください」
俺はコウガと壇上へ向かい、魔道具の前まで行った。
「ダリス、リオンはうちの次男になる。今日はよろしく頼むな」
「これは領主様、こちらこそ精一杯務めされて頂きます。では、リオンはこちらの鑑定用の魔道具の水晶に手を当てて、魔力を流して貰えますか?」
「わかりました。こうですか?」
言われた通り、水晶に手を当てて魔力を流してみる。
すると、水晶がぼんやりと光を放ちだした。
「こ、これは……」
司教様が僅かに驚いたようだったが、すぐに元に戻った。
光はすぐに消えたと思ったら司教様から手を放してもよいと声が掛かった。
「こちらがステータスプレートになります。詳細は後ほど説明致しますので、大切にして下さい。それではこれで終わりですが、まだの人もおりますので、領主様も、もうしばらくお待ち下さいませ」
「ああ、ありがとう。ダリスもあと少しよろしく頼む」
「司教様、ありがとうございました」
お辞儀をして壇上から下がった。
神様に会えなかったな。残念だ。
少し空いている場所に行き、コウガと待つことにした。
「リオン、ステータスプレートを見せて貰ってもいいか?」
「どうぞ、確認して下さい」
コウガはやはりステータスプレートが気になっているようだ。
ステータスプレートは手のひらサイズの長方形のプレートで、魔力を流すと、ステータスの内容が、ディスプレイの様にプレートの上に表示されるのだ。鑑定結果と同じ感じだが、こちらは他の人も見れるみたいだからな。
今出来たばかりのステータスプレートの内容をコウガに見せる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:リオン・スペンダー
年齢:9歳
種族:人族
性別:男
状態:普通
職業:鑑定士
ステータス
レベル:1
体 力:207/207
魔 力:818/1079
攻撃力:102
耐久力:62
敏捷力:101
精神力:36
抵抗力:36
スキル
剣術、体術、調合、錬金
魔法
魔力操作、生活魔法
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「こ、これがリオンのステータス……聞いていた通りだな。それに職業も鑑定士になっているな……」
小さな声で独り言を言った後、コウガはもうステータスプレートに魔力を流さなくてもよいと言った。
ステータスプレートへの魔力を切ると表示されていた内容が消える。
何ともファンタジーだ。
「それにしても、流石ダリスだな」
「何が流石なのですか?」
ダリスって司教様だよな?俺の知らないところで何かあったのか?
「リオンのステータスプレートが出来た時に内容を見ているはずなのに、一瞬驚いただけだったからな。普通はいきなりそのステータスの値を見たら驚き過ぎて固まったり、呆然とすると思うぞ」
「なるほど、ステータスプレートを見たのに普通に対応していましたからね。確かにすごい事です」
コウガと小声で話していると、どうやら[鑑定の儀]は最後の人まで終わったようだ。
司教様のダリスがまた壇上からマイクのような魔道具で話し始める。
「全員の[鑑定の儀]が終わりましたので、これよりステータスプレートについてお話致します。ステータスプレートは魔力を流さないと内容が見えなくなるようになっており、その状態の時は表面に名前のみが表示されます。ステータスプレートの持ち主が魔力を少し流すと内容を表示されるようになっており、逆に本人以外が魔力を流しても何も反応しません。そして、魔力を流した時にステータスプレートが最新の情報に更新されます。それから、万が一にステータスプレートをなくしてしまったり、破損させた場合は教会でまた作り直すことが出来ますが、その際は1万Lのお金が必要になりますので、よろしくお願いします。以上で説明を終わりたいと思います。皆様、お疲れさまでした。何か聞きたいことがあれば、この後残っていただければお答えいたします」
こうして、司教様のお話が終わりようやく解散となったので教会を出ることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます