スキルについて熱く語る
マリーはフレアバーストを使えることを知らなかったみたいだな。
そしてもう1つここにいる全員が覚えているが使ったことない魔法がある。
「お母様、上級魔法以外にも覚えてるのに使ったことがない魔法があります」
「上級魔法以外にも新しい魔法を使えるの?」
そう、ここにいる全員が覚えているのに誰も使っているのを見たことがない魔法がね。
「生活魔法です。レベル3でファイアの魔法を覚えるのですが、僕は家で誰かが使っているのを見たことがありません」
「生活魔法のファイアか、聞いたことないな。水が出るウォーターなら聞いたことあるが使えなかったからな」
「火魔法のファイアボールみたいな名前ね。ファイアは火が出るのかしら?」
コウガはファイアを知らないのにウォーターは知っているんだな。なぜだろう?謎だ。
おそらく覚えている魔法は魔法名とイメージがあれば使えるはずなので、実際に見せた方がいいな。
顔の前で右手の人差し指を上向きに立てながら、
「ファイアは指先から小さな火が出ます。まずは見て下さい。〈ファイア〉」
人差し指の先からぽっと小さな火が灯った。
「それがファイアか。思ったよりも小さい火だな」
「そうね。少しかわいいかも」
「生活魔法はどれも魔力消費1で使えます。ファイアは野営の時などで暖を取る時や料理など、着火させたい時に使えると思います。ですが、魔道具があれば事足ります。しいて言えば、魔道具を持ち歩かなくても火を扱えるところが便利ですね」
正直、魔道具があればファイアはあまり必要としないんだよね。
と思っていたのだが、
「魔道具があればというが、消耗品だからな。使えなくなったら魔石を交換しないといけないから、その度にお金がかかる。だが、ファイアなら魔力さえあれば使えるんだ。すごいことだぞ」
「そうよ。料理は毎日するから、その度に魔道具を使わずにファイアを使えればかなり節約になるわ」
魔道具にはエネルギーの補充の仕方が2種類あるらしく、魔石を交換するタイプと魔道具自体に魔力を流して充填するタイプがあるらしい。一般的なのは魔石を交換するタイプで、安価なようだ。充填タイプはかなり高額になるらしい。
うちにある魔道具は魔石を交換するタイプがほとんどで着火用の魔道具だけでも節約出来るのはありがたいとの事だった。
ちなみに魔石は魔物から手に入れたものを直接交換は出来ずに、一度加工しないと使えないとの事だ。それ専用の魔石屋と呼ばれるお店があり、交換用の魔石はここで買う事が出来る。
魔道具や魔石の話は学校で習う事なので、特に教えて来なかったとの事だ。
「なるほど。では、ファイアを使ってみましょうか。魔法はそのレベルに達していて、どのような魔法かをイメージ出来ていれば発動可能なはずです。実際に見て貰いましたし、魔力消費も1でレベルはみんな3なので使えると思います」
先程、実際に見せたこともあり、簡単にイメージ出来たのだろう。
コウガ、マリー、リカルド、ミランダ全員がファイアをすぐに使うことが出来た。
皆が新しくファイアを使うことができ、驚きと興奮で話が盛り上がっている。
とりあえず、話が少し脱線したので戻すことにした。
「ファイアはこれぐらいにして、話の続きをしましょう」
「おお、そうだな。正直いろんなことが凄すぎてこの先も少し怖いな」
「リオンちゃん、本当にすごいわよ。この後はどんな話があるのかしら?」
あとは強くなる為のマニュアルに沿って話を進めるだけだ。
アルス用に作ったマニュアルは手元にないが、大体は覚えているので、マニュアルとスキル一覧表の元になったメモノートを見せながら説明していこう。
「アル兄に渡した強くなる為のマニュアルの話をしますね。これを作った理由が王都までの時間を使ってアル兄に強くなって貰おうと考えたのがきっかけです」
「王都までは馬車で5日はかかるな。だが、馬車の中にいることがほとんどだぞ」
「パパ、少なくとも今教えて貰ったファイアは馬車の中で使えるわよ」
「た、確かにそうだな」
その辺りもスキル一覧表を見ながら説明していこう。
というかコウガはまだ少し混乱しているみたいだな。
「マニュアルの中には、馬車の中でも出来る事が結構書いてあるんですよ。最初に覚えて欲しいと思ったのは魔力超回復ですね」
こうして、アル兄に渡した強くなる為のマニュアル(スキル編初級)の俺はどれだけ素晴らしいスキルかをどんどん説明していった。
魔力超回復から始まり、体術スキル、身体強化の有用性から、魔力操作のレベルが上がらないとスキルや魔法を覚えられない等々。
それはもう懇切丁寧に伝えた。
これはそう、前世で子供の頃、ゲームの裏技を発見して友達に教えるような感覚で、スキルを教えていった。
俺は今、この世界に生まれて一番熱く語っているに違いない。
それはもうすごい勢いでスキルについて熱く語った。
そしてその結果、家族全員驚きと困惑で言葉が出ず、しばしの沈黙の時間が流れてしまった。
やっばーい。熱く語り過ぎた。
みんな黙っちゃったよ。ドン引きされたかな。
と思っていたら、
「リオンがそんなに熱く語るなんてな。少し…いやかなり驚いたけど、それ以上に話の内容に驚かされた。これが世に知られれば国が崩壊するかもしれない」
「え、国が崩壊ですか?」
国が崩壊ってそこまでの情報なのか?
確かに強くなる為に貴族はお金や権力で何かするかもしれないけど、国が滅びるとは思えないけどな。
「可能性としてだ。この情報を知れば誰でも強くなれる。例えばこれを全ての人が読んだとした時に、誰でも強さが同じになったと仮定したら平民と貴族では平民の方が圧倒的に人数が多い」
「なるほど、平民が国に対して反逆に出る恐れがあるということですね。それで国が崩壊するということですか?」
「そうだ。あくまで可能性の1つに過ぎないから、絶対にそうなるという訳じゃないがあまり広めない方がいいと俺は思う。それに国に知られたら、戦争の引き金になりそうだしな」
なるほどな。平民の方が多いから誰でも強くなる情報は無闇やたらに教えてはいけない感じか。それと戦争の可能性もあるのか。他にも色んな可能性がありそうで怖いな。教えるのは身内だけにしておこう。
アル兄には一応話さないようにしてって書いたし、マニュアルも見られないようにしてくれていると思うから大丈夫だろう。
「一応アル兄には誰にも教えないようにと手紙に書きましたので、大丈夫だと思います。ただ、生活魔法だけは教えてもいいと伝えてあります」
「そうか、それなら大丈夫だな。アルスならしっかり秘密を守るだろうから」
「そうね、アルスちゃんならきっと大丈夫よ。それよりも魔力超回復だったかしら?ママも覚えたいわ」
やはりマリーは魔力超回復を覚えたいようだな。
この特殊スキルはどう考えても魔法使いにとっては、必須のスキルだと俺は思ってるからね。
これが有る無しでダンジョン攻略などの難易度が相当変わってくると思う。
「魔力超回復は魔法使いだったら、絶対に欲しいスキルですからね。とりあえず、取得するのに1日中魔力を消費させないといけないので、しっかりとお休みしてからの方がいいと思いますよ。それと次の日が忙しくない時の方がいいかもしれないですね」
「確か魔力を常に10%以下にした状態で1日経過するだったか。1日中起きていないといけないのは結構きついな」
「それじゃあ、今日はもう寝ようかしら」
ちなみに今はお昼の11時を少し過ぎたぐらいの時間だ。
話始めたのが朝食後だったから、3時間程は経っている。
ちなみにリカルドとミランダもずっと一緒に聞いていたので、誰も昼食は作っていない。
「今からみんな寝ますか?寝る前に魔力を使い切ることをおすすめしますよ。ファイアを使って生活魔法のレベルを上げるのがいいと思います。僕はお昼ご飯を町に買いに行ってきますね」
「一人で大丈夫か?何だったら俺もついていくぞ」
「一人で大丈夫です。夜までゆっくり休んで下さい。そうすれば明日寝る時は夜になるので、一日の感覚も戻りやすいと思います」
魔力超回復を覚えるコツは時間管理だ。次の日の寝る時間に合わせるように、今日の起きる時間を調整するのがポイントだ。
納得したのか、コウガ、マリー、リカルド、ミランダはみんな自室へと戻っていった。コウガは仕事大丈夫なのだろうか?あと、聞かなかったけど、お昼ご飯よかったのかな?
結局、俺は1人でダンジョンに行ってもいいのだろうか?鑑定の儀が終わったらすぐにダンジョンに行きたいんだけどな。何かスキル覚えるのが優先になった気がするんだが!まあ、その気持ちは分からなくないから仕方ないか。
俺は色んな疑問を浮かべながら、昼食を町で買う為に出かけるのだった。
そして、次の日の夜には全員魔力超回復を覚えたのだが、コウガは前日の分の仕事も含め1日中忙しそうにしているのであった。
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