第三章 ダンジョン攻略編

リオンの秘密

 アル兄が王都の学校に旅立ってから、もうすぐ1年になる。

 そう、もうすぐ俺の[鑑定の儀]がやってくるのだ。

 まあ、職業は鑑定士と決まっているので、そこまで重要ではない。

 ただ、今の俺のステータスはそこらの10歳児とは比較にもならない程高くなってしまっている。

 主にスキルの熟練度上げを頑張りすぎてしまったからだろう。

 スキルレベル上げが楽しすぎるのがいけないんだ。

 上げてしまったものはしょうがない。

 アル兄にはリオンの秘密事項を渡したので、俺がスキルを使えることやスキルにもレベルが存在するということも知っているはずだ。読んでいればの話だが……

 ただ、このことを他の家族には話していない。

 とりあえず、家族には[鑑定の儀]前に話した方がいいだろう。

 というか、強くなったことを話して最初からダンジョンには1人で行きたいのだ。

 その為にダンジョンの場所もアル兄に付いて行って覚えたのだから。

 

 さて、コウガとマリーに説明する為には、やはりマニュアルを使った方がいいだろう。

 ちなみにアル兄に渡したのは、アル兄用に俺がまとめたものだ。

 一応原本というか、スキルや魔法をまとめたメモノートを昔から書いていたのだ。

 あとは昔から検証していた魔力の回復時間だったり、鑑定で確認したものとか色々な情報をまとめている。所謂、異世界版の攻略本だな。ここにダンジョンの攻略情報を今後追加予定だ。

 リオンの秘密事項だけは、アル兄用と親に説明する用で2部作ってある。少しだけ変えている部分はあるが内容に差異はない。秘密事項とあるが俺が異世界からの転生者だとは流石にバラす訳にはいかないので、その事には一切触れていない。

 それを使って説明するのが一番わかりやすいかな。


 朝食を家族で食べ終わった。

 いつもなら、少し休憩した後に魔力操作の練習をしていることが多い。

 でも、今日は話を聞いてもらおう。


「お父様、お母様、大事な話があります。この後、聞いてもらえますか?」


「リオン、どうしたんだ?鑑定の儀が近いからその話か?話を聞くのは大丈夫だぞ」


「えっと、その話も少しありますが、全然違う話もします」


「リオンちゃんが話したいなら全然いいわよ」


「では、2人は少し椅子に座って待っていて下さい。部屋に戻って、説明する荷物を持ってきますので」


 話をする機会は作って貰えたな。

 部屋に魔法袋を取りに行き、急いでコウガ達の元に戻る。

 まずは魔法袋を見せてから、反応を伺って次第に魔法袋からスキルのメモノートとリオンの秘密事項を見せよう。


「これを見て貰えますか?」


「リオン、これは……魔法…袋…なのか?」


 コウガとマリーは口を開け、驚いた顔をしている。

 リカルドとミランダも驚いていた。


「そうです。去年お兄様が学校へ向かう直前に僕が荷物を渡したのを覚えてますか?」


「覚えてるわ、リオンちゃんはその時、秘密って言って教えてくれなかったわよね?」


「確かアルスが帰ってくる前には教えるって話だったか?まさか!?」


「はい、あの荷物に魔法袋(小)を入れました。ついでに手紙とか色々と」


 さて、2人は以外と冷静な感じだな。最初こそ驚いた感じだったがこのまま話を進めるかな。


「この魔法袋は僕が作りました」


「何だって?リオンが魔法袋を作ったというのか?」


「はい、正確には錬金で魔法袋を作りました。素材は……シャドウメイジの布と魔法の粉です」


 また、コウガとマリーが驚いている。

 しばらくしてから、コウガがぽつりと語り始める。


「……そうか、シャドウメイジの布と魔法の粉か…リオンがどうしても欲しいと言ってた物で確かあれも今は何に使うか言えないとは言っていたな…そうか、魔法袋を作る為に必要だったということか……」


「リオンちゃん、[鑑定の儀]がまだなのに、錬金のスキルを覚えているってことなの?」


 俺は黙って頷き、そして魔法袋からリオンの秘密事項を取り出す。


「お兄様に渡した手紙は全部で4つ、強くなる為のマニュアル(スキル編初級)とスキル編中級、スキル一覧表、そして今取り出したリオンの秘密事項です。まずは読んでみて下さい」


 手紙というか、冊子なんだけどね。

 コウガとマリーは黙って、リオンの秘密事項を読みだした。


「リカルドさんとミランダさんはあとで読んで貰おうと思っているので、出来ればこの話し合いが終わるまでは聞いていて貰えますか?途中訳が分からない事があるかもしれませんが、あとで秘密事項を読んで貰えればわかるかと思うので」


「リオン坊ちゃま、わかりました。先にお話を聞かせて頂きます」


「私もお話を聞かせて頂きます。手紙は後でちゃんと読ませて下さいね」


「はい、ありがとうございます」


 しばらくコウガとマリーは何も話さずに読み続ける。

 きちんと最後まで読み切ってようやくマリーが話し出したのだが…


「リオンちゃん……あなた、アルスちゃんの事、アル兄って呼んでいるの?」


「……えっと、そこですか?」


 おいおい、マリーは急に何を言っているんだ。確かに俺は心の中ではアル兄って呼んでいるが、実際にはお兄様としか呼んだことはない。

 もちろんアル兄と2人きりで話している時もだ。

 俺が学校に行くようになって向こうで話す時にアル兄って呼ぼうと思っているだけなのだ。


「マリー、今はそこじゃないだろう……確かに俺もその事は気にはなったがな……」


「えっと、お兄様と2人の時でもアル兄って呼んだことはありません。心の中だけです。ただ、学校に行ったら向こうではそう呼ぼうと思っています」


 少し間が空き、皆が一息付いたところでコウガが話始めた。


「リオンの職業は鑑定士なんだよな?鑑定の儀の前に鑑定というスキルで職業や取得している魔法やスキルも分かるんだよな?あとスキルや魔法にもレベルがあるんだよな?」


 何か質問が一気に来たな。困惑しているのかな。


「そうですね、お父様の言う通り僕は鑑定というスキル、正確にはエクストラスキルを取得していて、その鑑定を使って自分が鑑定士であること、取得しているスキルと魔法もレベル毎に分かります。これは自分以外にも鑑定して見る事が可能です」


「リオンちゃんはママの魔法のレベルも分かるの?」


「分かりますよ。火魔法がレベル7、魔力操作がレベル8、生活魔法がレベル3です」


 マリーは昔、魔法師団に入っていたので、魔法に関することが気になるようだな。


「火魔法がレベル7っていうのは、7種類の火魔法が使えるってことなの?」


「そうです。6つはレベル上げで使っているから分かると思いますが、7つ目の火魔法はフレアバーストです」


「フレアバーストだと!?マリー、上級魔法が使えたのか?」


 へえー、どうやらフレアバーストというのは上級魔法の様だな。

 ラノベとかでもたまに見かけるけど、かなり上位の魔法だったりするからな。普通のフレアとかも。納得だ。

 ちなみになぜ俺が火魔法のレベル7が分かるかというと、マリーの火魔法を鑑定しているからだ。鑑定結果はこうだ。


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火魔法:火属性の魔法を操ることが出来る

 LV1:〈ファイアボール〉を覚える 魔力+5 魔力消費2

 LV2:〈ファイアウォール〉を覚える 精神力+5 魔力消費2

 LV3:〈ファイアアロー〉を覚える 魔力+5 魔力消費3

 LV4:〈ファイアストーム〉を覚える 抵抗力+5 魔力消費6

 LV5:〈フレイムバレット〉を覚える 魔力+5 魔力消費5

 LV6:〈フレイムピラー〉を覚える 精神力+5 魔力消費8

 LV7:〈フレアバースト〉を覚える 魔力+5 魔力消費12

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 魔法はレベル毎にステータス上昇と新しい魔法を覚えるみたいだな。

 それにレベル7のフレアバーストの魔力消費が12とスキルのアーツと比べてもかなり高いのだ。

 ちなみにアル兄に渡したスキル一覧表に火魔法は載せていないが、俺のメモノートにはちゃんと鑑定結果が書かれているぞ。

 さすがにアル兄に魔法の情報も与えてしまうと、魔法とスキルの両方とも張り切り過ぎて、倒れてしまうかもしれないと思い記載しなかった。もっともどうやって魔法を覚えればいいかいまだに分かってはいないのだが……


「知らなかったわ。私、いつの間にか上級魔法が使えたのね」


 マリーがかなり驚いている。いつもならママって言ってるのに私って。まあそれはいいとして。

 なるほど、鑑定がないと今どれぐらいのレベルか分からないからな。そもそもスキルや魔法のレベルの存在すら知らなかったみたいだしね。

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