幕間 リオンの手紙1
アルス視点
家族とお別れの挨拶を交わしてから、馬車に乗り込んだ。
馬車には僕の他に4人の子供が乗っている。ここにいるのは全員同い年だ。ちなみに他のところの子供だと2歳上の子もいる。学園で2年過ごしたら1回町に帰って来てるからだ。
お互いに自己紹介をし、終わったタイミングで馬車がゆっくり進みだした。
これからずっと同じ馬車に乗るので、仲良くしておこうと全員で会話していく。
初めは僕が領主の子供だと知ると緊張していたが、お昼休憩に入ったころには、ある程度は緊張も解けて話してくれていたと思う。
そして、午後に入ってリオンに貰った箱を確認する。暇になったら馬車の中で見るように言われたことを思い出しながら開封していく。
開けると手紙が2枚と見たことがある袋が1枚入っていた。
「えっ、この袋もしかして?」
すごく見覚えのある袋が出てきた。確かリオンは、かなり役に立つものとは言っていた。
もしかして、お父様が買ってくれたのか?50万Lはするって話だったのに、でも学校で役に立つのは間違いないだろう。
すごく嬉しい気分になり、そのまま上にある方の手紙を読んでみることにした。
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尊敬するアル兄へ
アル兄、入学おめでとうございます。
まず、この手紙と一緒に入っているものは魔法袋(小)です。これは僕が作りました。
材料はお父様にお願いして用意して貰ったので、この袋は家族からのプレゼントになります。
そして、もう一枚紙が入っていると思うのですが、そっちは魔法袋に入っている物の一覧表になります。
その中で注意事項という表紙のがあるのですが、これを最初に読んでください。
そして、魔法袋の中の物で、読むことの出来るものは必ず1人で読むようにして下さい。
かなり重要なことが書いてあります。そして、他の人に知られないようにして下さい。
それでは、楽しい学園生活を過ごして下さい。
リオンより。
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読んで唖然とした。
お父様が買ってくれたと思った魔法袋(小)はリオンが作ったとのこと。
材料をお父様にお願いしたのは分かる。リオンが自分で調達できるとは思えないからね。
でも、材料があっても作ることができるの?謎すぎるんだけど。
ただ、思った通り僕の弟はとんでもない天才だということが今回の件で、はっきりとわかった。
普通、50万Lという大金で買う魔法袋を作るなんて、大人でも難しい事をリオンは平気でやってのけるのだ。
初級ダンジョンで手に入る魔石は1つ50Lだ。これはイモムーとゴブリンどちらも同じ値段で買取して貰っていた。
お父様はダンジョンで稼いだお金は僕の好きなように使っていいと言っていた。
最初の目標は魔法袋を買うこと。単純計算で1万個の魔石があれば、50万Lは貯まる。
でも、冒険者は武器のメンテナンスや回復などのポーション、あとダンジョンでの食事や飲み物などお金が必要なものは多い。
お父様がお金は好きに使っていいが、それらのことも自分で出来るようにしないといけないと言われ、少なくても毎日携帯食料と飲み水は買っていた。
時には武器のメンテナンスでもお金がかかり、新しい装備については初級ダンジョンでは必要なさそうなので、王都で買おうと思ってお金を貯めていた。
それでも、1年で稼いだお金は20万Lに届くか届かないかぐらいだ。
手に入れるのにどれ程難しいかが分かる。それをこうも簡単に手に入れてしまった。
もちろん、すごく嬉しい。これさえあれば、学校でのダンジョン攻略は比較的楽になるだろう。
魔法袋のない場合のダンジョン攻略の話をお父様に聞いたら、普通の袋やカバンなどに魔石を持てる分しか持って行かないし、食料とかもかさばるから最低限しか持っていけないと言っていた。
それらがなくなるだけで相当楽になると思っていた。
「リオンには、とんでもない借りが出来ちゃったな」
ふぅっと一息つき、今度はもう一枚の魔法袋の中の一覧表を確認する。
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魔法袋の内容一覧
〇注意事項 ※重要
〇強くなる為のマニュアル(スキル編初級)
〇強くなる為のマニュアル(スキル編中級)
〇スキル一覧表
〇リオンの秘密事項
〇携帯食料×5
〇飲み水×5
〇お菓子(クッキー)×2袋
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気になるものが多すぎる。
注意事項はいいとして強くなる為のマニュアルが初級と中級あるし、スキル一覧表ってお父様から聞いたスキル以外にリオンが知っているということかな?
そして、一番気になるリオンの秘密事項。ものすごい情報が書いてあるに違いない。
リオンが書いているはずだから、おそらく家族に秘密にしていた事を僕に教えてくれるということだろう。
ふぅー--っと、さっきよりも深い一息をついてから、今度は魔法袋の中から注意事項の冊子を取り出した。
表紙の真ん中にでかでかと[注意事項]と文字があり、その下には[最初に必ず読むこと]と書いてある。
注意事項の冊子はすごく少ないページ数だ。それをゆっくりと読み始める。
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注意事項
魔法袋の中にある読み物の内容は全て他の人には言わないようにして下さい。
読むだけで誰でも強くなってしまうので、他言無用でお願いします。
これは僕からアル兄への一方的なお願いになりますが、出来れば誰にも言わないで下さい。
一応、一部教えてもいい内容は、そのページに書いてあります。
読む時も横からや後ろから覗かれないように注意して下さい。
まず、はじめに強くなる為のマニュアル(スキル編初級)を読むことをおすすめします。
その中で1日中起きていないといけないものがあるので、5日間の旅のどこかで時間を作るようにするといいと思います。
本当に丸1日以上起きていないといけないので、やり方を完全に覚えてから、1回寝て起きたタイミングで始めることをおすすめします。
失敗すればやり直しです。最初からになるので、寝落ちだけは気を付けて下さいね。
そして、その起きている時間を利用して、リオンの秘密事項を読むことをおすすめします。
アル兄が抱えている疑問も少しは解決するかもしれません。
それ以外のことも多く載せているので、王都に着くまでには是非見て下さいね。
強くなる為のマニュアル(スキル編中級)とスキル一覧表は馬車の中で読まなくても大丈夫です。
ただ、強くなるためのマニュアル(スキル編初級)の途中でスキル一覧表は必要になります。
馬車の中で全部を見る必要はないです。
強くなる為のマニュアル(スキル編中級)は初級が全部終わってからでもいいですし、余裕があるなら初級やりながらでも大丈夫です。
読み物については以上です。
携帯食料と飲み水は昨日買ったものです。お腹が空いた時に食べて下さい。
お菓子のクッキーも昨日、お母様とミラさんに作って貰ったものなので、おやつにどうぞ。
大まかな注意事項はこれで終わりです。
細かい注意事項は各読み物に書いてあるので、そちらを御覧下さい。
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全部で3ページに渡り注意事項が書いてあった。
うーん、とにかく内容は誰にも言わないようにして読む時も見られないようにしないといけないことは分かった。
次に読むのはマニュアルの初級がいい事は分かったが、1日中起きていないといけないのは良くわからないな。
読んでみれば分かるかもしれないから今はいいとして、肝心のリオンの秘密事項はその1日中起きている時に読むのがいいみたいだな。
マニュアルの中級とスキル一覧表は馬車で読まなくても良さそうな感じではあるが、1日中起きてるのであれば時間があるから一度目は通しておこう。
ちょうど小腹も空いたのでクッキーを頂こう。お母様とミランダさんの作ったクッキーはおいしいからな。
クッキーを食べながら一息つく。正直、この後が少し怖い。
今の僕のレベルは5だ。これは1年間初級ダンジョンでひたすらレベル上げを頑張った結果だ。
お父様もこのレベルで入学したら目立って、一躍人気者になれるとまで言っていた程だ。
僕よりも高いレベルの1年生はいないだろうとのこと。
ただ、それさえも簡単に超えてしまいそうなマニュアルに思えてしょうがない。
魔法袋から飲み水を取り出し、二口程飲んでいく。
ふぅーっと、また一息つき、強くなる為のマニュアル(スキル編初級)を取り出し読み始める。
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強くなる為のマニュアル(スキル編初級)
このマニュアルは強くなる為に必要な知識を提供するマニュアルです。
強くなる為にはいくつか要素があります。今回は4つ紹介したいと思います。
1、ステータスのレベルアップ
2、魔法、スキルのレベルアップ
3、トレーニング
4、装備更新
1は単純にレベルアップすると全ステータスが上昇します。一番わかりやすいです。
2は魔法やスキルにもレベルがあり、そのレベルが上がるとステータスの一部が上昇します。
3は2と似ていますが、こちらはトレーニングの種類によってステータスの一部が上昇します。例えば剣の稽古を続けていくと攻撃力と敏捷力が上昇します。多く打たれると耐久力も上昇するでしょう。
4は強い装備に変更する事で、その分強くなります。
このように強くなる為にはいくつかの手段を用いれば強くなれます。
そして、馬車の中で強くなる事も可能です。
簡単な例を挙げると生活魔法を1つ覚えると魔力が5増えます。そして、生活魔法は全部で8つあります。
全部覚えれば魔力が40も増えることになります。
なので、このマニュアルでは魔法やスキル獲得を目的としています。
大事なのが魔法レベル、スキルレベルを上げるときには覚えているものを一定回数使うとレベルが上がるということです。
魔法やスキルのレベル上げには、魔力が多い方がいいですし、魔力回復も速ければ速い程いいです。
ここで基礎的なことですが、起きている間に魔力は30分で1回復します。
寝ている時はどれぐらい回復するかわかりませんが、5時間も寝れば0から全回復します。
さて、ここで一番必要なスキル獲得を紹介します。
そのスキルは魔力超回復です。これは特殊スキルに分類されるもので、ステータスプレートには多分表示されないでしょう。
ですが、確認は簡単です。一度魔力を0にしてから、30分後に1しか回復しないのでウォッシュを使うと1回しか使えませんが、魔力超回復を取得してからなら最低7回は使えるようになります。
魔力超回復の効果は5分経過で魔力が1%回復するというものです。
一応、スキル一覧表にも効果と取得条件は書いてありますが、重要なのでこちらにも書きます。
取得条件は魔力残量10%以下の状態で1日経過するです。
これは魔力が10%以下になってからカウントが開始されるので、出来たら眠りから覚めてからすぐ始めるのがいいと思います。24時間眠れないのは辛いですからね。
そして、魔力は常に0を保つかそれに近い感じにした方が、何かあった時に10%を超えてしまう恐れをなくす事ができるでしょう。
そのついでに生活魔法のレベル上げを同時に行い、魔力の総量も増やしていきましょう。おそらくレベル3のファイアは使えると思います。
生活魔法の魔法名と効果はスキル一覧表に載っているのでそちらを御覧下さい。
生活魔法を使う前にステータスプレートで魔力の最大値がいくつか確認して、何回か使ったらステータスプレートを更新し魔力が増えていないか確認すると魔法レベルが上がったかが分かります。
魔法レベルが上がれば新しい魔法が使えるようになるので、スキル一覧表で効果を確認して使えるようにしてみて下さい。
以上が、馬車の中でも出来る強くなる為の手段です。
次からは実践的なことが多いので、ある程度動ける場所が必要です。
実践で役に立つスキル
剣術スキルなど剣を持っていることが条件のスキルなどとは別で普段の行動でも力を発揮するものがあります。
それは体術スキルです。
体術スキルにはレベルを上げていくと体を動かす時に疲れにくくなるという効果を発揮するものがあります。
これを覚えるだけで、実践はもちろん、ダンジョンの探索でも疲れにくくなるので、是非覚えて欲しいスキルです。
スキル一覧表の体術のところを見て貰えばわかると思いますが、最初は体術レベル2を目指して下さい。
さて、体術スキルを獲得する方法ですが、手っ取り早いのが体術レベル1のアーツ〈スマッシュ〉を覚えることです。
スマッシュは基本の構えを左手左足を少し前にやり、右手を胸の前で構えます。
左手は右手と同じ高さに合わせ、右手を胸の前から内側にえぐるように突き出しながらパンチします。
その時、右手、又は身体全体に魔力を纏わせながら、「スマッシュ」と発するとスマッシュが発動しやすいです。
1度スマッシュが発動すれば、あとは剣術のスラッシュと同様にいつでも使えるようになります。
その後はひたすらスマッシュを繰り返し使い続け、体術スキルのレベルを上げていきます。
体術レベル2になると体力が10増えるので、練習前にステータスプレートで体力を確認するといいと思います。
スマッシュの練習中でもレベル2になれば、少し疲れにくくなるのがわかるかもしれません。
最初はレベル2になるまで、頑張って下さい。
次の目標はレベル6ですが、こちらはマニュアルを全部読み終わった後に、優先順位を付けてどのスキルを上げるか考えてから上げた方がいいです。
スキルは1つずつ順番に上げていった方が効率がいいからです。
ただし、ステータス上昇をメインに考えてる場合は、低いスキルレベルの方が上げやすいので、レベル2かレベル4まで上げたら、次のスキルレベルを上げるという方法もあります。
ただ、魔法と違ってスキルのレベルが上がってもステータスが上がらない事があるので、その時はある程度アーツを使ったら、スキル一覧表を見て次のアーツが発動できるか試してみて下さい。
実践で役に立つスキルはこの位にしましょう。
最後に魔力総量を上げる魔法とスキルを紹介します。
魔力総量が上がるものは結構あります。
魔法は生活魔法しか知りませんがレベル8までで1レベル毎に5ずつ上がり最大で40も増えます。
ちなみに魔力超回復を覚えた時点で、嬉しいことに魔力が50も増えます。
他に調合や錬金もレベルが1上がる毎に5上がるのですが、これには専用の器具が必要になるのと材料がないと行えないので記憶に留めておくだけで大丈夫です。
本題ですが、生活魔法は魔力超回復を覚える為にレベル上げをするとして、それ以外で上げられるもので重要な魔法を書きます。
それは魔力操作です。もう既に覚えていると思いますが、レベルは最大の10まで上げることをおすすめします。※魔力操作はスキルではなく魔法に分類されます
魔力操作は魔力を使わずに出来るので、いつでもどこでも行うことが可能です。そしてレベル9までは魔力が5ずつ増えますが、レベルが9から10に上がると魔力が25も増えるところもいいところです。
子供の頃から毎日魔力操作を行っている場合はレベルが5から6ぐらいまでは上がっていると思います。
しかし、そこから先の上達はイメージによって全然違ってきます。
まず、身体全体を血液と同じように魔力を流すということをしてきたと思います。それをしっかり出来ていればレベル5か6までは上がります。
しかし、そこから先はどんなに頑張っても上がりずらいと思います。
ですが、身体全体に魔力を流す速度を変えるだけでレベル8までは上がるようになります。
おそらく今まで魔力操作で流す魔力の速度は、いつも一定の速さだったと思います。
なので、いつもの速さの倍まで速く魔力を流せるようになって下さい。
そして、その後は逆にいつもの半分ぐらいの遅さで魔力が流せるようになれば、レベル8には到達していると思います。
レベル9になるには、魔力を身体の一部だけに集める感じで留めて下さい。
この時、その他の場所は全く魔力を纏わないことが重要です。
例えば右手に魔力を纏ったとします。それ以外の部分の魔力を完全に遮断して、今度は右手の魔力を親指から人差し指、中指、薬指、小指と回ってきてまた、親指に向かい魔力をぐるぐる回すようにして下さい。それを速度を変えたり、逆に反対回りにしたりできるようになればレベル9に上がるでしょう。
レベル10は9にする為に行った事を右手と左手の同時にやれれば上がるはずです。この時に右手は右回り、左手は左回りなど違うことをやると上がりやすいです。
魔力操作は魔法やスキルを覚える為にある程度レベルを上げないと覚えれないスキルや魔法があります。詳しくはスキル一覧表の魔力操作の効果を見て下さい。
魔力操作以外で魔力量が比較的簡単に上げられるものがあります。
これは魔力超回復を手に入れてからになりますが、エクストラスキルに魔力回復というのがあります。
これは常に魔力超回復で魔力を回復しているだけで魔力回復のエクストラスキルを取得する事ができます。
つまり、常に魔力を満タンにしないということです。起きている時だけでいいですが、注意することもあります。
家にいる間や安全が確保している場合の時は魔力が空近くてもいいのですが、ダンジョンなどに挑戦している時は魔力は多くあった方がいいので、その時は10ぐらい減らした状態にしておくぐらいに留めた方がいいです。
もう1つ注意する事があるのですが、これはエクストラスキルになる為、魔力操作レベル6になっていないと一向に覚えないということです。
魔力操作をしっかり上げている人は大丈夫ですが、そこも注意して下さい。
ここまで読んだ内容を実践すれば、スキルを獲得したタイミングで、確実に強くなれるでしょう。
このマニュアルに載っているスキルは数あるスキルや魔法の中でも特に役に立つものになっているので是非取得して下さい。
以上で、強くなる為のマニュアル(スキル編初級)は終了となります。
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