魔法袋
調合と錬金を覚えてから2日後の朝、俺はアルスのダンジョン行きに同行することになった。
コウガはどうやら仕事でダンジョンへは行けないらしい。
なので、マリーが一緒にダンジョンへ行くことが決まった。
コウガが仕事でいないことは結構あるのだ。1日中の時はあまりないが、午前だけや午後の少しの時間など度々家を抜け出すことがあった。
今回も午前中は迷いの森の近くの門に出向いている。ここには何人か常に滞在しており、森の監視を交代でしている。
コウガが仕事に出るのと同時に俺たちもダンジョンへ向かった。まずは冒険者ギルドに行くらしい。
冒険者ギルドに着くとアルスとマリーが入っていった。俺はテンプレ展開で絡まれるのを避ける為に、ギルドから少し離れた場所で待っている。訳ではなく、前に断られたから自分から待ってると言いだしたのだ。
冒険者ギルドへは俺が10歳になった時の楽しみにとっておくことにした。
アルスとマリーが出てきたので、ダンジョンに向かう為に迷いの森とは逆方向の門、北門へ向かう。
「お兄様、冒険者ギルドでは依頼を受けてきたのですか?」
「そうだよ。ダンジョンに行く人用の魔石を納品する依頼があるんだ。それと魔法袋を借りることができるんだよ」
アルスが腰から下げている袋を見せてくれた。見た目は週刊誌ぐらいの大きさだ。
マホウブクロ?魔法袋だと!?それってマジックバッグやアイテムボックス、ストレージとかみたいな異次元にたくさん入る袋の事だよね?
「魔法袋ですか!?もしかして見た目以上に物が入る袋の事ですか?」
「リオンは相変わらず、すごいなぁ。魔法袋はね、この大きさだけど物がたくさん入るんだ。それに、今も昼食用の携帯食料と水を買って入れてあるんだけど、それよりも重くないんだよ」
「リオンちゃんは相変わらず詳しいわね。アルスちゃんが持ってるのは魔法袋(小)よ。パパとママも魔法袋は持ってるけど、魔法袋(中)で小よりも大量に入るんだけど希少だからね。ギルドで借りることにしたのよ」
魔法袋は容量違いもあるのか。小と中があるってことは大もあるな。これは冒険する時に是非とも手に入れておきたいものだ。
話していたら、町の門へ辿り着いた。ダンジョンへ向かう方向の門だな。他にもいくつか門はあるぞ。
そこで、見張りの門兵が身分証を確認していた。
マリーとアルスはステータスプレートを出していたが、俺は持っていない。
だが、マリーが息子を連れてダンジョンの入口まで見学に行くというと通してくれた。
どうやら身分証のない小さい子は保護者がいなければ通れないのかもしれないな。
「お母様、門では毎回ステータスプレートの確認をしているのですか?」
「そうよ、大きい町だとどこもそうだと思うけど、盗賊や犯罪を犯した人を入れたくないでしょ。それで町の出入口で確認しているのよ」
何でもステータスプレートには、犯罪を犯した者に対して犯罪歴を刻める者がいるとのことだ。
実際偉い人なのだが、その中の1人が領主である。つまりコウガだ。あとはギルドマスターとかだな。
ダンジョンへ向かう途中の道すがら、魔法袋の事を鑑定してみた。
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名称:魔法袋(小)
状態:高品質
価値:Aランク
錬金素材:シャドウメイジの布と魔法の粉
詳細:袋の中が異空間になっており、袋の大きさよりも多くの物を収納できる。重量は関係なく容量は1辺が10メートルの立方体分収納可能である。
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初めて高品質見た。さすが魔法袋だな。しかも小なのに、思った以上に容量が凄いな。
錬金素材のシャドウメイジの布ってモンスターのドロップアイテムっぽいな。あと魔法の粉は錬金アイテムかもしれない。
価値もAランクと今まで見てきた中では一番高い。小なのにAランク、性能はぶっ壊れだから納得だ。
将来の為に錬金レベル上げておいた方がいいな。素材が手に入った時に自分で作れるようにしないとね。
それにしても、こんな価値の高い物を毎回ギルドは貸してくれるのだろうか?マリーに聞いてみるか。
「お母様、ギルドでは魔法袋を毎回冒険者に貸してくれるのですか?」
「魔法袋を貸してくれるのはね、冒険者登録したばかりの初心者の人だけなのよ。冒険者のランクがあって1つ上がれば、もう貸して貰えなくなるわ」
なるほど、初心者の時だけ貸して貰えるってことか。
「魔法袋(小)は50万Lするからね。あとから買って貰う為に最初に貸し出してるのよ」
「えっ、魔法袋って買えるのですか?」
「冒険者ギルドで売ってくれるわよ、冒険者の最初の目標みたいなものかしら」
何と、普通に冒険者ギルドに魔法袋は売っているみたいだな。ちなみに50万Lは日本でいう50万円と同じ価値だと考えてくれれば大丈夫だ。単位はリミー。
魔法袋が50万Lで買えるのが高いかどうかはわからないが、確かに最初の目標になるのは分かる。
「僕も学校が始まるまでに魔法袋が買えるように頑張ります」
「アルスちゃん、流石に50万Lは学校始まる前までには溜まらないわよ。でも、頑張ることはいい事よ」
「あの、魔法袋(小)が50万Lなら中はいくらなのですか?」
これは単純な疑問だ。小でさえ50万もするのだ。中だと一体いくらぐらいの値段になるのだろうか。
「魔法袋(中)はギルドでは売ってないのよ。大体はオークションで落札するのだけど、最低でも800万Lはするんじゃないかしら。1000万Lを超えることもあるからね」
魔法袋(中)めちゃくちゃたけーー!!
これは中を手に入れるのは当分無理だな。ダンジョンでお宝をたくさん手に入れないといけないな。
「お母様、オークションとは何ですか?」
アルスがオークションに興味を持ったようだな。いや、知らない単語が出たから気になっただけかな?
「オークションはね、珍しいものをたくさんの人たちがお金で競って、最高金額の人に売ることかな。だから、同じものでもその時で競う人が違うから値段が変わってくるの。魔法袋(中)は珍しいから、いつも値段が高くなるのよ」
「なるほど、それで値段が決まっていないのですね」
「そうよ」
そういえば、コウガもマリーも魔法袋(中)持ってるって言ってなかったか?
やばいな。うち、貧乏貴族じゃなかったのかもな。
「お母様、確かうちに魔法袋(中)が2つあると言っていたと思うのですが」
「パパとママが1つずつ持ってるわよ。ママはオークションで手に入れたのだけど、パパはダンジョンで手に入れたって言ってたわね」
何とダンジョンから1000万級のお宝が出るのか。それは夢があるな。
とはいえ、そんなのが出るのはおそらく上級とかのダンジョンだろうな。初級ではそんないいの出ないだろう。
「ダンジョンで手に入れれるなんて、夢がありますね」
「そうよ、ダンジョンはね、夢と希望に満ち溢れているのよ。危険もその分、含まれているけどね」
魔法袋の話の後は、たわいない話をしながら進んで行く。
アルスはダンジョンで剣捌きをもっと上手くなりたいと言っていた。
そして、いつの間にか初級ダンジョンが見える位置にまで来ていたのだった。
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