ダンジョンの話を聞く

 夕方5時頃になり、アルス達は帰ってきた。

 コウガとマリーは変わらずという感じだが、アルスは少し疲れているように見える。

 流石に初めてのダンジョンで、精神的にも肉体的にも疲れたのかもしれないな。

 さらに朝から出かけていたから、1日中外にいたことになる。今までこんなことなかったから、それも疲れの原因だろう。


 そして夕食をとりながら今日のダンジョンの話を聞いた。


「お兄様、初級ダンジョンはどうでしたか?」


「すごかったよ。まず入口が転移陣に乗って入るんだけど、いきなり景色が変わったと思ったら森の近くにいたんだ」


「一瞬で場所を移動したんですね。魔物はどうでしたか?」


「1階層はイモムーという芋虫の大きいのがいたよ。動きは遅かったけど、糸を吐いてきて当たると動きが鈍くなるらしいよ。でも、全然強くなかったかな」


「芋虫ですか。お兄様は魔物相手に気後れしなかったのですね!すごいです」


 転移陣はミランダに聞いた通りだな。それよりも初級ダンジョンの最初の魔物はイモムーという芋虫か。大きい芋虫はちょっと気持ち悪そうだな。

 強くなかったらしいから、レベル上げは安全に出来そうなところだな。


「リオン、ありがとう。2階層はゴブリンが出てきてね、こん棒持ってて振り回してくるんだ。イモムーよりは速いけど、避けてから攻撃するか動く前に攻撃すれば簡単に倒せる相手だったよ」


「ゴブリンですか!お兄様はもうゴブリン相手でも簡単に倒せるようになったのですね」


 おお、今日行ったダンジョンにゴブリンいるんだな。あいつは大体のラノベで初心者でも簡単に倒せる相手だからな。


「それで魔物をダンジョンで倒すと地面に吸い込まれていくんだ。そこに魔物の魔石が残るんだけど、魔石を回収して冒険者ギルドに渡すとお金になるんだよ」


「魔物を倒せば魔石が手に入るのですね。しかも魔物を解体しなくてもいいのは楽ですね」


 ダンジョンで魔物を倒すと魔石だけ残すって、まるでゲームみたいじゃないか。

 これは周回が捗りそうだな。正直解体とかって慣れるまで大変そうなんだよね。


「リオンは本当に何でも知ってるね」


「リオンちゃんは本当にすごいわ」


「本当にな、一応アルスには話したんだが、迷いの森でもゴブリンが出るんだが、倒したら解体して魔石を取り出すんだ。取り出した後に焼き払うんだが、焼くのは魔物の死体をそのままにすると環境に悪いからだな。ただ、焼くときは森の中だから十分に気をつけなければいけないがな」


 解体しなくていいのは、ダンジョンだけだったようだ。ダンジョン以外だと解体をしないといけないらしい。

 でも、そうしないと魔物の素材とかで武器や防具作れないか。それにこの世界には魔獣(獣型の魔物)の皮が使われた服とかコートなどがあったりするんだよね。装備の鎧とかにも、もちろん使われている。

 そして死体はちゃんと処理しないといけないと。しかも森だと焼くのにも注意しないといけないしな。火事になったら大変だ。


「お父様、次にお兄様がダンジョンに行くときに入口まで付いて行ってもいいですか?ダンジョンがどんなところか見てみたいのです」


「ダンジョンが見たいのか?うーん、連れて行ってもいいんだが、予定がどうだったかな」


「ママが連れて行ってあげるわ。一応アルスちゃんがダンジョンまで1人で行けるかの確認も含めてね」


「本当ですか!?お母様、ありがとうございます」


 やったぞ、ダンジョンを近くで見れることになった。出来れば転移陣も見たいが、今は町の外に出られるのが嬉しい。

 この世界に来てから家にいることがほとんどだったからな。あとは町にちょっと出かけるぐらいだ。


「一応ダンジョンまでの道のりは注意するんだぞ。アルスには言ったが、ダンジョンまでで魔物が出ることはほとんどないが、それでもたまに出るからな。それに盗賊とかも出るかもしれないから十分気を付けること」


「わかりました。あの、盗賊が出る程治安が悪いのですか?」


「いや、治安は悪くないが念の為だ。油断するんじゃないぞ」


「はい」


 盗賊でないよな?フラグじゃないよね?当日少し怖いな。一応気を付けよう。


 ダンジョンまで行く許可を貰い、食事も終わったので自室に戻ってきた。

 今から調合を行うのだ。調合スキルを覚えられるかもしれないからな。


 真っ白な調合釜を机に置き、ウォッシュとドライをかけておく。

 そして、調合釜の中央に癒し草を2つ重ねて乗せる。


「さて、魔力で調合釜全体を覆うように流して、さらに癒し草と癒し草が薬草に変化するイメージを作って……〈調合〉」


 調合釜を覆っていた魔力が中央の癒し草に集まり、一瞬光を放った。

 光を放った後は1枚の葉に変わっていた。

 調合の成功だ。癒し草2枚は薬草1枚になっていた。


「よし、調合成功だ。調合スキルを覚えたぞ」


 正直変化するイメージがよく分からなかったが、薬草を知っていたのが良かったのかもしれない。

 とりあえず、薬草を『〈鑑定〉』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名称:薬草

状態:普通

価値:Fランク

調合素材:癒し草と癒し草

詳細:傷に当てていると傷の治りが速くなり体力を15回復する。食べると当てる時より体力を5多く回復する。少し苦い。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 薬草を当てれば傷の治りが速くなって体力も回復するのか。回復量は15で食べると5多くなると。ミランダは食べたり飲んだりしないって言ってたけど、少し苦いってなってるから食べる人がいないのだろうな。実際は食べた方が少し回復量が良くなるわけだ。良薬口に苦しだな。例えが本当に薬だけど、なるほどね。


 それにしても調合覚えるの簡単過ぎるぞ。でも、新しいスキルを覚えられたのは、すごくうれしいな。

 調合の鑑定もしてみるか。『〈鑑定〉』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

調合:2つの物を混ぜ、新たな物を作る

 LV1:〈調合〉を覚える 魔力+5 魔力消費2

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 おっ、材料は2つだけで良さそうだな。これは難易度が大幅に下がったな。3つ以上だと探すのも集めるのも苦労するからな。2つなら大分楽だ。

 さて、癒し草はあと4枚しかない。調合のレベル上げをしようと思ったら、もっと大量に癒し草が必要だが今は手に入れる手段がない。

 なので、調合は覚えただけに留めておく。変わりに錬金だ。

 食事の後にミランダが錬金について教えてくれた。

 最初に錬金するのは石2つとのことだ。大きさは手のひらに乗るぐらいで大きすぎるとダメみたいだ。そして出来るのが投擲石。何でも投げやすい丸い石になるらしい。あと見た目よりも重いと言っていた。

 ということで、庭に石を取りに行こう。なぜ部屋に戻る前に取って来なかったかというと、調合が出来なかったら錬金も出来ないと思ったから、調合出来てからでいいかなと思って取りに行かなかったんだよな。

 こんなことなら先に取りに行けばよかったかな。


 こっそり庭まで来て、大きさは直径5センチ前後の石を10個程拾って部屋に戻った。


「さて、錬金をやるのだが調合と同じようにやって出来るのだろうか?」


 錬金は使える人が近くにいないから見せて貰ってないが、錬金も調合釜を使えば出来るとミランダが言っていたので、やり方は同じ気がする。

 一度やってみてダメだったら考えればいいか。

 一度調合釜をウォッシュとドライで綺麗にしてから、石を2つ中央にセットする。錬金するけど、調合釜でいいのかな?とりあえずは調合釜と呼ぶことにしよう。


「頼む。出来てくれよ〈錬金〉」


 先ほどの調合同様に、調合釜を覆っていた魔力が中心の石に集まり、一瞬光を放ち石2つがなくなり1つのまん丸い球体の石に変わっていた。

 丸い石の大きさは俺の握りこぶしぐらいある。


「錬金も出来ちゃったよ。本当に丸い石だな。確かにちょっと重い気がする。しかも元のより少し大きい」


 投擲石だったかな。まずは『〈鑑定〉』


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名称:投擲石

状態:普通

価値:Fランク

錬金素材:石と石

詳細:投擲用の石。投げやすいように丸くなっている。通常の石よりも頑丈で重い。

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 普通に戦闘で使えそうだな。

 戦闘中になくしても、元が石だからまた作ればいいし、護身用で数個持ち歩いてもいいかもな。護身用になるか分からないけど。


 よし、あとは錬金のスキルを確認しておこうかな。『〈鑑定〉』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

錬金:2つの物質を錬成し、新たな物を作る

 LV1:〈錬金〉を覚える 魔力+5 魔力消費2

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 調合と同じ感じだな。調合は薬関係がほとんどで、錬金はそれ以外っぽい感じかな。


 あと石が8個あるので、スキル上げの為、錬金を4回行った。

 石なら庭にいくらでも転がっている為、調合よりも錬金の方がレベル上げはしやすいな。


 今後は錬金のスキルレベル上げをしていくことを決めるのであった。

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