生活魔法のウォッシュ
魔力操作を教えて貰ってから1週間が経った。
「2人ともかなり魔力操作に慣れてきたと思うから、今日からは実際にウォッシュを使えるように練習するぞ」
「はい、お父様」
「がんばります」
ようやく生活魔法が覚えられるぞ。この1週間はひたすら魔力操作をしていたからな。
マリーがいくつか布を持ってきた。
「この布を使ってウォッシュを覚えていくぞ」
「ウォッシュはね、一度使った服やタオルを洗ってきれいにする事ができる魔法なの」
なるほど、どおりでうちに洗濯機が無いわけだ。さらにドライで乾燥させていているんだな。日本と違い洗濯機や乾燥機がなくても、魔法があるので相当便利だということがわかった。
「まずはアルス、この布に手を置いて、触れている部分に魔力操作で魔力を集めてくれ」
「はい」
そういうとアルスは布に手をあて魔力を指先に集めた。
その手の上に、コウガが自分の手を重ねて、
「俺がアルスの魔力を使ってウォッシュを使うから、感覚で覚えてくれ」
「感覚で覚えるのですか?」
「そうだ、生活魔法は実際に使える者が教える者の魔力を使い、感覚で覚えていくものだ」
「難しそうですね」
「まあ、まずはやってみようか。〈ウォッシュ〉」
アルスの手から布を全体的に覆う感じに水が出て、1秒程で消えていった。洗った水は消えたが布は濡れているところがあるので、全ての水が消える訳ではなさそうだな。
「わあ、布が水で洗われました」
「この状態だと布を乾かさないといけないから、〈ドライ〉」
「布が乾きました」
「すごいですね、おにいさま」
思った通り、ウォッシュで洗い、ドライで乾かすという洗濯機と乾燥機の使い方だな。もちろん応用は利きそうだ。
「まずはウォッシュを使えるように、今の感覚を元にこの布で練習してみようか」
「はい、お父様」
「アルスちゃん、がんばってね。じゃあ、リオンちゃんはママが教えてあげるから、こっちの布で感覚を掴みましょうね」
「おかあさま、おねがいします」
マリーはアルスのことも好きだが、リオンの事はさらに輪をかけて大好きだな。何かと俺と肌を合わせようとしてくるからな。もちろん悪い気持ちはこれっぽっちもないよ。こんなに若くてきれいな母親は俺としてもうれしいし誇らしい。だが、少し恥ずかしいのだ。やはり日本での記憶が残っている以上、精神年齢は俺の方が上だし、日本ではこれほどの美人と話したこともない。
それでも、もう少し控えてほしいと思うのは贅沢だろうか。ちゃん付けもむず痒いんだよな。アルスは平気なのだろうか?5歳はまだそういう気持ちはないのかな?
そんなことを考えながら、マリーにウォッシュを、手を重ねて俺の魔力を操作して教えて貰った。
これは俺の予想だが、魔法はイメージが大事だ。予想というか数々のラノベが俺に教えてくれたから間違いないはず。
まず、手のひらに魔力を十分に集める。その魔力を水に変換して対象の布を覆ってから洗濯機のようにぐるぐる洗うイメージだ。
「いきます、〈うぉっしゅ〉」
俺の子供っぽい発言とともに、布は水に覆われた。そして、すぐに水はどこかにいってしまった。そう、魔法を発動できたのだ。生活魔法といえど、念願の魔法を使うことが叶った。
「おおー-、できたー-やったー-!!」
あっ、やっべ。テンションが上がりすぎて親の前なのに、貴族っぽくない言葉を使ってしまった。いつもは子供っぽさを残しつつ丁寧な言葉使いを気にしていたのに。
「リオンちゃん、すごいわ。1回でウォッシュを使えるようになるなんて、魔法の才能があるんだわ」
「リオン、本当にすごいぞ。生活魔法とはいえ、魔力操作が十分できるようになったとしても、そこからウォッシュを使えるまでは普通何日もかかるものなんだ」
「ありがとうございます」
言葉使いを注意されるかと思ったが、それよりもウォッシュを1回で出来たことに対して驚いているみたいだな。まさしく異世界転生のテンプレっぽい展開ですよ。フフフ。
「リオン」
しまった。アルスはもう何回もやってたけど、まだ出来てなかったんだった。弟に先を越されてグレたりしないよね?大丈夫だよね?
「すごいね、どうやってウォッシュをやったか教えてくれる?」
セーフ。アルスは純粋にウォッシュを覚えたいみたいだな。どこぞの覆面みたいに『兄より優れた弟など存在しねぇ』ってならなくて本当に良かった。
「おにいさま、みずをつよくいめーじしながらためしてください。ぼくはそれでできました」
「水を強くイメージ……分かった。やってみるよ。〈ウォッシュ〉」
アルスの手の先にある布が水で覆われた。成功だ。
「おにいさま、できましたね、おめでとうございます」
「出来た……リオン、ありがとう。アドバイスのおかげですぐに出来るようになったよ」
「いえ、おにいさまのどりょくのたまものです」
ちょっと子供っぽくない発言だが、いいだろう。アルスも魔法が使えたんだ。アルスは魔法の才能があるのかもしれないな。でも、才能があるといったら、天狗になって、努力を怠るかもしれないからな。こういえば、才能にあぐらをかくこともなくなるだろう。という思いで言ったのだが、
「アルスちゃんもすごいわ。私たちの息子は2人共、天才かもしれないわね」
「本当に驚いたぞ、普通こんなに簡単に生活魔法は覚えられないからな」
べた褒めだよ。せっかくの俺のセリフが台無しになりそうじゃないか。でも、親だとやっぱり普通よりも優秀だとうれしいんだろうな。ちょっと親バカなところがあるけど、異世界でも日本でも親はやっぱり親なんだな。
「おにいさま、このかんかくをわすれないうちに、もっとれんしゅうしましょう」
「そうだね、完璧に使えるようになろうね」
「「〈ウォッシュ〉」」
俺とアルスは20回ぐらい〈ウォッシュ〉を使ったら、使えなくなり少し憂鬱な感じになったが、その状態は魔力切れだと教わった。
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