魔法を見た
この世界に転生して3年が経過した。普通に歩けるようになり、普通に喋れるようになった。
喋れるようになり、家族のことがある程度わかった。
まず、父親はコウガといい、さらさら銀髪の翠眼でかなりのイケメンだ。そして身体を鍛えているのだろう、見た目は細マッチョだ。
次に母親のマリー。金髪に碧眼でナイスバディの母親さ。笑うと少しロリっぽいところがあるが、黙っている時は美人顔だ。
あとは、兄のアルスだ。眼は碧眼で母親譲りなのだが、髪は赤という親とは全然違うが、これは別におかしい事ではないらしい。この世界では親と違う色の髪であっても本当の親かどうか疑うとかはしないようだ。ただ、全然違う髪色の子が生まれてくるのは、この異世界の七不思議かもしれない。
それから、うちはどうやら貴族らしく執事とメイドを1人ずつ雇っている。
執事の方は、髪が白髪だが目はかなり鋭く、背筋がピンッとしており、いかにもセバスチャンという感じなのだが、名前はリカルドだ。
そして、メイドさんの方は、歳はかなり若く10代半ばぐらいだろうか。体格は小柄だが元気がよく、すごく明るい。名前はミランダ。
リカルドは基本、コウガの補佐を行っており、ミランダはマリーと一緒に食事を作ったり、掃除、買い出しと家事を行っている。
2人しか雇っていないということは、貴族としてあまり裕福ではないのかもしれない。だが、決して貧しい訳ではないので不満はない。
おっと、俺のことを忘れていたな。なんと黒髪に黒目と典型的な日本人って感じだな。まあ、有彩色の髪や目の方がカッコいいと思わなくもないが、そこまで気落ちする事でもないかな。
「アルスも5歳になったから、これから毎日剣の稽古をするぞ」
「はい、お父様」
どうやら、今からアルスの剣の稽古のようだ。我が家では5歳になったら訓練するらしい。よって、アルスは俺の2つ年上ということも分かった。
稽古は庭で木剣を使い、素振りをするらしい。庭はかなり広いので訓練する場所としては十分だ。
「おとうさま、ぼくもけんのけいこしたいです」
「リオンもやりたいのか?でも、まだ体が出来てないからやらせるわけにはいかんな、5歳になったら教えてやるからな!」
「リオンちゃんはママと一緒に見学してましょうねぇー」
ダメだったか。そりゃ、3歳が剣の稽古したいって普通じゃないもんな。しょうがないので別の提案してみるか。
「わかりました。おかあさまといっしょにおにいさまのけんのけいこをみてますね。そのあとに、にわをはしってもいいですか?」
「なんだリオンは体を動かしたいのか?将来有望だな!走るぐらいだったらいいぞ!」
良しっ、言質いただきました。これで、時間がある時は庭で走り回っても問題ないな。とりあえずは、体力をつけるところから始めないとね。
「まずは木剣の握り方だ、アルス、左手はこう握って、右手は後ろにこうだ」
「こうですか?」
「いいぞ、じゃあ、ここからよく見ておけよ。木剣の剣先を正面に構えてから上にあげ、一気に素早く振り下ろすんだ」
すごい勢いだ。早くて剣先が見えなかった。
「お父様、すごく速くてカッコいいです」
「そうか、今度はアルスがやってみようか」
「はい!」
こうして、アルスの剣の稽古が始まった。
なぜ、このようなに鍛えないといけないかというと、うちは伯爵家という一応上級貴族になるらしいが、辺境の地にあり近くの森の魔物を定期的に間引くことをしないといけないので、その為に今から鍛えておこうということらしい。
コウガは腕を見込まれ、辺境の地で戦力として向かわせる為に、伯爵という上級貴族の地位につけて、森の管理を任せているとのことだ。
アルスの稽古が1時間程で終了となり、大分汗をかいていたので、お風呂に入りに行った。
ちなみにこの世界にもお風呂はある。前世みたいにシャワーはないが、桶はあり魔道具でお湯を出している。
他には冷蔵庫に似た魔道具はあるが、掃除機に似た魔道具はない。なので、掃除は結構大変だったりする。俺も最近では手伝うようにしているが、マリーに褒められてるのをみて、アルスが負けじと掃除を手伝っていた。マリーに褒めてもらえてうれしそうにしているが、かなり頑張り屋さんなのが、掃除のことと剣の稽古で分かった。
「おとうさま、にわではしってきますね」
「転ばないように気をつけるんだぞ」
「リオンちゃん、無理しないでね」
「はい、いってきます」
そして、俺は庭を1周しただけで汗だくになり、両親の前で仰向けに倒れたのだった。
「すごいぞ、リオン。庭を1周走りきるなんてな」
「本当にすごいわ、ママも感動しちゃった」
「はぁ、はぁ、ありが…とう…ござい…ます…」
1分程して地面から立ち上がり、
「リオンちゃん、少し汚れちゃったわね、きれいにするから息止めててね、〈ウォッシュ〉」
「うぼぼぼぼ」
「大変!リオンちゃん、息止めなかったの?」
まさか、今のはラノベでよくみる体を洗浄する魔法ではないのか。とうとう魔法に出会えたのではないのか。落ち着け俺、落ち着くんだ。このタイミングなら魔法のことを聞きやすいぞ。
「い、い、いまのまほうですか?」
「リオンは魔法見たことなかったか?」
「はい、はじめてみました」
「そうだったわね、急にごめんね。今のは生活魔法のウォッシュよ。水で汚れを落としてくれるの。それから〈ドライ〉、これは乾燥ね」
「すごいです、ぼくもつかいたいのですがおぼえられますか?」
「生活魔法は誰にでも覚えられるぞ。そうだな、明日はアルスと一緒に魔法の勉強をしようか?」
「ぜひ、おねがいします」
やったよ、とうとう魔法を覚えることが出来る。心の中で、『ヤッフーー-異世界サイコーー-!!』と叫びながら、盛大にファンファーレが鳴り響いていた。もちろん脳内での話だ。
明日は魔法を覚える為、アルスがお風呂から出るのを確認して、ソッコーお風呂に入り、その後は夕食を食べ、自室に戻ってゆっくりしていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。走って疲れていたのだろう。
そして次の日、朝目覚めた俺はわくわくした気持ちを落ち着かせる為、顔を洗ったのだが前世を含めて過去一服をベシャベシャに濡らしたのだった……マリーに〈ドライ〉で乾かして貰ったが、この時ばかりは子供の姿でよかったと思ったのだった。
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