第2話 コーンフレーク

 初秋のひんやりとした朝、ヒサイシさんは住宅街の中にある、公園にいた。


 ヒサイシさんは木のベージュ色のベンチに腰掛けていた。


 ヒサイシさんはカバンからコーンフレークの袋を出し、コーンフレークを手でつかみ、地面にばらまいた。


 ハトさんたちがやってきた。


 ハトさんたちはコーンフレークを小さなクチバシで顔をすばやく上下させて食べた。


 ヒサイシさんは4回か5回、コーンフレークを地面にばらまいた。


 ハトさんたちは喜びの声をあげた。


 ハトさんたちの喜びの声はヒサイシさんにしか聴くことができなかった。


 ヒサイシさんはハトさんと会話ができるのだ。


 ハトさんもヒサイシさん以外の話す人間の言葉はわからなかったが、ヒサイシさんの話す言葉は理解できた。


 それは神秘的なことだった。


 なぜなら人間とハトさんが会話できるのだから。


 「ヒサイシさん、もっとコーンフレークくれないかい?」


 「ヒサイシはもうコーンフレークをあげることができません。これ以上コーンフレークをあげると、ヒサイシの食べる分がなくなります」とヒサイシさんは言った。


 数羽いるハトさんたちのヒサイシさんと特に仲が良いハトタロウとハトミは地面に落ちているコーンフレークをすべて食べ終えると、ヒサイシさんの太ももの上に手乗りインコのように乗ってきた。


 ヒサイシさんはハトタロウとハトミを可愛らしく思った。ヒサイシさんの心は温かくなった。ヒサイシさんはその時「図に乗るな」という男の低い声が公園の入り口から聴こえてきた。


 ヒサイシさんは公園の入り口を見た。


 公園の入り口には誰も立っていなかった。


 公園の入り口には誰も立っていないのに、公園の入り口から人の声がした。


 ヒサイシさんは怖くなったが、「怖いよ」とは言わなかった。


 ヒサイシさんはその後、ブランコに乗り、15分ほどそれを漕いだ。


 そしてその後、ラジオ体操をした。


 ハトさんたちはいつの間にかどこかにいっていた。

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