ハトさんとヒサイシさん

久石あまね

第1話 はじまりの秋

 朝、スズメたちがチュンチュンと誰かに甘えるように声を弾ませていた。


 いつの間にか夏は終わっていた。


 初秋の涼しい風が窓の隙間から部屋に流れ込んできた。



 ヒサイシさんはスズメの声を聴きた。朝だとヒサイシさんは思った。ヒサイシさんはベッドから起き上がり、寝室からのそのそと出て、顔を洗った。その後、ヒサイシさんはコーンフレークを牛乳にひたして、食べた。

 

 そしてヒサイシさんはパジャマからジーパンとカッターシャツに着替えた。ヒサイシさんは26歳の男にしては、あまりオシャレとは言えない、服装をしている。


 ヒサイシさんは古びた廃墟のような平屋から、まるで地面に落ちている砂粒をひとつひとつ数えるように下を向きながら、出てきた。


 ヒサイシさんには時間という概念がないぐらい、それはそれはゆったりとしたものだった。


 朝日を背に浴びて、色とりどりの住宅街を西に向かうと、住宅街のなかなかいきなり公園が出てくる。


 公園にはヒサイシさんの友達であるハトさんたちがいる。その中でもハトミとハトタロウがヒサイシさんと仲が良かった。


 ヒサイシさんは公園のベンチに座り、ハトさんたちを待っていた。


 ヒサイシさんはハトさんの鳴き真似をしながら、池にいる鯉に餌をやるみたいに、コーンフレークを地面に撒いた。するとどこからかハトさんたちが喉を鳴らしながらやってきた。いつもの馴染みのハトさんたちだった。その中にはハトミとハトタロウもいた。ヒサイシさんはその二羽を見るとなぜか安心した。

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