29 卵の在処(中)
正直言って、僕では
目の前のこの
とは言え、僕が小さく「おかえり」と呟いたのが、聞こえていたと言わんばかりに地に降り立ったのだから、きっとその勘は正しいんだと思う。
「!」
その
それと合わせて左の前足も少しだけ動いて、確かにリュート叔父さんの言った通りに、鉤爪のところに何か荷物が括りつけられているのが見えた。
「えっと、それ、僕が受け取っていいのかな?」
僕の問いかけに答える代わりに、
後ろでほんの一瞬だけ、リュート叔父さんが警戒する様子を見せたのが分かったけど、僕は叔父さんに、大丈夫だと口にする代わりにもう一歩二歩、
それに合わせるように、ますます
「じゃ、じゃあ、解くね?」
荷物に手をかけても、
ガチガチに括りつけられていたので、僕の力で解くのに少し手間取ってしまったけれど、何とか紐を解いて、荷物を
目の前の
「うわっと……え?」
しかもそこそこの重さがあって、僕は慌てて両足に力を入れて、箱ごと転倒しないように踏ん張った。
ただその瞬間、箱ごしに
「これって……」
「ハルト?」
そんな僕の戸惑いを察したリュート叔父さんが、僕のいるところまで近付いても良いかと声をかけてくる。
荷物を手にしたまま、かろうじて首だけを
少し考えてから「……大丈夫だと思う」とだけ、叔父さんに返した。
「まさか、空箱を運んで来ることはないと思ったが、ハルトの感触でも、中に何か入っているってことなんだな?」
僕の声色だけで、思っていることをすくい上げてくれる叔父さんは、さすがだ。
「う、うん……」
「分かった。そうしたら反対側から箱を持つから、一緒にゆっくりと下ろすぞ」
ここまできて、荷物の中身を確認しないと言うのもおかしな話だ。
しばらくすると、箱の重みが明らかに変化したため、それが叔父さんが箱を持ってくれた合図だと認識した。
グルグル巻きにされていた紐を、叔父さんが腰の剣で一気に切断をして、蓋をずらす。
「なっ⁉」
箱の中身が見えた途端、呻いたのは僕ではなく、リュート叔父さんだ。
僕は箱を手にしてからの感覚があったから、内心で「やっぱり」と思っただけだった。
「卵……しかもコイツは……」
そう、
しかも、素人の僕が見ても分かる。
卵の種類が違うのだ。少なくとも、二種類以上の竜の卵が、そこにはある。
「ハルト、少なくともこの中の二個は、竜の牧場から強奪されたヤツで合ってるか?」
「僕も盗まれた瞬間、遠目にチラッと見ただけだから、断言は出来ないけど多分……叔父さん、でも、こっちのもう一個は牧場の卵じゃないよ。それは分かる」
何しろ、僕が見た景色を思い起こせば、数が合わない。
竜の卵となると、他の家畜や野鳥の卵とはワケが違う。
人ひとりが両脇に抱えて運ぶのが精一杯、それも
騎獣軍が使う竜たちの卵となれば、人ひとりで1つ抱えるのが限界だと聞いている。
「あ、ああ。おまえの言っていることは正しい。こっちの一個は
「え、叔父さん、分かるんだ?」
「分からない方が良かったのか……逆に俺がいるのが分かっていたから、コイツが先行して送られてきたのか……」
口元に手を当てながらぶつぶつと呟いていた叔父さんだけど、それが何竜の卵なのかを僕が聞く前に、ふと木箱の中に卵以外にも何か入っていることに気が付いたみたいだった。
「ハルト、卵と一緒に何か入っているぞ。手紙じゃないか?」
「え?」
リュート叔父さんに言われて、僕も箱の中を覗いてみれば、確かに卵の下敷きになるように、二つに折られた紙が入っていた。
卵を割らないように細心の注意を払いながら、そっとその手紙を取り出して、二つ折りになっていた紙を叔父さんにも見えるように開ける。
あっ! と、僕は思わず声を上げてしまった。
「ダドリーさんからの手紙だ……!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます