気まぐれ短編集

ねあ

第1話 大人の私

 かいつまんで話すととても簡単な話だ。

 

私には3人の男がいて、今とても幸せで、どこか危ない毎日を送っている。

一人目はとても大雑把で、洗濯物を床に投げ捨てるような男だ。加えてとても乱暴で、よく物を投げたりしてくる。やる時だって、平気で首を絞めてくる。私は最中によく殺されかけた。

怒れば何をするかわからないので、そういうときは雨の中一時間ほど散歩をしてみる。傘はあえてささないでおく。しばらくしてかえってみると、濡れた私をみて泣きながら謝ってくるのだ。

 

 もうしない、絶対にしないから。


そう言ってで傷ついた心ごと包容してくる。この人工甘味料たっぷりの飴と、鉄片を埋め込んだ合金の鞭のギャップに沼る女を、私は心底馬鹿だと思う。湿布に期待しすぎる奴と同じくらい愚かだ。私はいつか、彼に刺されて死ぬのだろうか。いや、それなら私から刺してあげる。


二人目はその対局を行く。何をしても許そうと努力してくる男だ。ドアを先に開けてくれるし、外食にいく時は、どっち側の席に座りたいかを必ず聞いてくる。私以外の女であれば、響くことは間違いない。

この間どこまでなら大丈夫だろうかと思い、彼の家で他の男とやってみた。証拠を色々残したが、結局何も言ってこなかった。ただその夜の彼は、心なしか少し前のめりだった。ああ、なんと可愛らしい。臆病で言葉にできず、それでも私を喜ばせようと必死になる。私に対しての怒りより、自分の不甲斐なさに対しての怒りの方が遥かに強い。そして終わった後に一言。


 ごめん。


健気でかわいそう。そうは思わない。きっと彼は私に捨てられたら嘆き悲しむでしょうね。でもしばらくして、1年か、2年たって、新しい彼女ができた時、私の存在はきっと、結果として彼の糧になるはずだ。


3人目は何と言えば良いのだろうか。他の二人にない物を全部持っている。持っているくせして、全部は与えない。私の心が離れかけた途端、何も言わずにすっと、欲しいものだけを差し出してくる。そういう男だ。ご飯も必ず奢ってくれるし、高身長で顔もいい。住んでいるのは高層マンションの23階で、よく知らないがどこかの社長だろう。そういうところは唯一私に釣り合ってる。忙しいと言う理由で、遠出したことはないが、会えば必ず好きだと言う。そう言って私を押し倒し、2時間ほどで私の体を食べ尽くす。きっと、私にとって彼が運命の人。


 というフリをする。


一体どれだけのバカな女が引っ掛かっているのだろうか。どれだけの女が、このクズの権化のような男に将来を夢見ていることか。そう言う女たちに、”彼が見ているのはあなたの股だけよ。”そう言ってやってもいいが、そうすれば私の箔が剥がれてしまうのでやめておく。


誰に対しても罪悪感はない。だって私は大人だもの。私が重ねているのは罪ではなく経験であって、いつか現れる“私の運命の人”というロゴのTシャツをきた誰かのため。


これが私。これが大人。そうでしょう?


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気まぐれ短編集 ねあ @ner_kpop

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