第8話 7月1日午後2時8分

 時計を見ると2時8分を指している。

 純介「俺らが何もしなければ...斉藤紬さんは死ぬ運命...なら、止めるしか無い...」

 斉藤紬は日比谷線の北千住駅で線路に落ちた。ここから北千住駅までは1時間かかる。

 純介「と、すると、止めるには電話か...」

 俺は社長に電話をかける。

 社長「もしもし?純介君かい?どうしたんだ?」

 純介「社長!斉藤紬さんの電話番号を教えて下さい!」

 社長「いいけど...どうしてだい?」

 純介「どうしてって...必要だからです!」

 社長「しょうがない...斉藤紬の電話番号を教えよう!少し待ってておくれ!」

 社長に電話が切られる。

 純介「こっちは、時間が無いのに...」

 俺は、電車のアナウンスを思いだす。確か、その内容は...

 ー 日比谷線で只今人身事故発生。線路に落ちたか。 ー

 純介「もしかして...このニュースは...斉藤紬さんなのか?」

 と、するとニュースを最初に見たのは電車に乗ってからだ。と、考えると...

 純介「もう、時間ないじゃないかよ!」

 ”ピロリン”

 俺のスマホにメールが送られてくる。社長からだ。

 純介「よかった...電話番号...」

 俺はそれを電話アプリに打ち込む。そして、電話をかけた。

 ”プルルルルルルプルルルルルルプルルルルルル”

 3コール。まだ出ない。移動中だろうか。

 ”プルルルルルルプルルルルルルプルルルルルル”

 プラスで3コール。出てくれ。頼む。出てくれ。

 ”プルルルルルルプルルルルルルプルルルルルル”

 純介「そんな...遅かったのか?」

 ”プルルルルルルプルルルル”

 ”ガチャ”

 電話の声「もしもし?あ...あなたは?」

 電話の中から女性の声がする。そして、その奥からざわめきが聞こえてくる。

 純介「斉藤紬さん...ですか?」

 電話の声「いえ...私はただの通りすがりで...」

 純介「じゃ、じゃあ!斉藤紬さんは...どこに?」

 電話の声「多分...線路の下で...」

 純介「なっ...」

 遅かった。遅かったのだ。間に合わなかった。

 純介「ありがとうございます...さようなら...」

 俺は電話を切る。

 純介「これも駄目なのかよ...もしかして...間に合わない?」

 何度ループしても間に合わないのではないか。ロスタイムを無くさなければならない。

 純介「なら、そうだ!」

 俺はもう一度社長のメールを見る。そして、スマホを閉じた。

 ***

 グルグルグルグル。視界が回る。頭がキンキンと痛くなる。そして、少しの喪失感があり。

 純介「さて、電話をかけるか...」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る