年末そして年明け

「だから、これ以上は……」

そう言うしかなかった。でも、と反発されることも分かっていたし、悲しい表情にさせてしまうことも想像できていた。しかし、この職に就いているからには生徒が安全に、安心して学校に通えるようにする責任がある。あ、安心はできてないか。そもそも有間くんに相談してしまったのがよくなかったと反省して、あの5人に期待してしまっている自分に気がつく。2年ほどの間、小さな事件から、大きな事件まで、様々な場面で彼らに助けられた。ただ、それも今日で終わりだ。彼らに楽しい学校生活を送ってもらうためにも、自分の力で解決しなければ。


 彼らを守ると誓った夜も明け、太陽が水平線から顔を出しはじめた。波乱に満ちた生活ですっかり忘れていたが、今日は29日。しばらく仕事は休みだ。時計はいつも起きる時間を示しているが、今日はもう少し眠ることにする。

 次に起きると時刻は7時30分。かなりの時間眠っていたようだ。よく寝たなぁという感覚があったのでもうベッドから出ることにする。カーテンを開けると青い空に太陽が燦々と輝いていた。

 キッチンに行ってコップ1杯の水を飲み干すところから近田の1日は始まる。水を飲んだ後で朝ごはんのパンをトースターに入れて、電気ポットでお湯を沸かす。その間にインスタントコーヒーの粉をカップに入れてトースターからパンの焼き上がる匂いが漂ってくるのを待つ。何の変哲もない、いつも通りの朝だ。もしかしたら空を飛ぶ能力なんてなくなっているのではないか。そう思って横向きになってみるが、やっぱり体は浮いてしまった。

 これからどうしようかと考えながら食事をし、食器を片付けた後で昨日の帰りに郵便受けを見ていなかったことに気がついた。何も入ってはいないだろうと思いつつも念のため確認しにいく。開けば、まったく身に覚えのない住所からの手紙が一通入っているのみだった。怪しく思いつつ開いてみると、達筆な英語で宛名が書かれていた。英語は苦手だし、そのまま捨ててしまおうかとも考えたが、よく見ると文面は日本語で書いてある。

 要約すると

「色んな国があなたのことを狙っていて大変でしょう。あなたが住んでいる日本からでさえ、狙われているのですから日常生活も安心して送れていないことと思います。もし良かったらわが国アメリカへ逃亡しませんか。」

というようなことが書かれていた。今まで何の干渉もしてこなかった大国、アメリカ。私はこの手紙を信じても良いのだろうか。絶対裏があるぞ、と感じる一方でこのまま日本にいたところで安全とも限らないとも思う。一か八か、渡米してみるのもあるかもしれない。ただ、問題がひとつある。さっきも言った気がするけれど、英語苦手なんだよなぁ……

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