デスゲーム1日目~人狼編⑪~
「じゃあそろそろみんなで会議しよっか!そろそろ投票だしぃ~」
気の抜けた声でエリが号令をかけた。各々が席に戻る。ハルが戻る際、何か思いつめたような顔をしていた。
「じゃあいいかしら」
口火を切った。
「どうぞ☆」
「水瀬……さんを真占い師と仮定するならば私とマドカは白、という話だったわよね?」
「うん!」
「実は一つ前の会議から、私たち4人は役職を開示しあっているの。ハルが騎士でエリカが市民。ハルは占い師COをした私を守ると宣言し、そして昨日殺されたのは一人だけだった……どういう意味かわかる?」
「あー……、つまりハルちゃんの騎士は真で、その事実を知っていたエリカちゃんがハルちゃんを殺しに行かないのは不自然だから市民なのも頷ける、ってことかな??」
妙に物分かりがいい。やはりこいつは道化の振りをしているだけで相当なやり手だ。
「そういうことよ。なので私たちはこれからあなたたちのどちらかを吊ります」
「うーん、ずいぶんと仲間想いなんだね☆」
「……なに?」
「まず一つ、ハルちゃんが騎士を騙り誰も殺さなかった場合の人狼はありえるということ」
「……!」
気づいてきたか……
「そしてもう一つ、狂人の可能性を追っていないこと」
「なんだと?」
「カナちゃん、忘れちゃったの?これ狂人がいるんだよ☆」
「だからなんだと……ハッ」
「なんでその二人が狂人じゃない前提で話を進めているの?」
盲点。まさに人狼初心者のミスだ。自分が狂人だから、他に狂人がいるという前提を忘れていた。
「……そうね。確かに。忘れていたわ。そこは私のミス。でもだからと言って、吊り先は変わらないわ」
「ふーん……?じゃあこっちもCOしないとね。カオリ、あなたの役職は?」
「……騎士です」
「なっ!?」
「そういうこと~☆カナちゃんがさっき話してた内容はね、こっちでも同じことがあったんだよ!違うのは、騎士の守り先」
「どういうこと?」
「カオリちゃんが守ったのはマキちゃん。カナちゃんは最初から襲撃なんかされていないよ」
「くっ……!じゃあ完全に対立って訳ね」
「そうなるね~☆今回はカオリちゃんとハルちゃんかな?」
「……だとしたらこっちは4人、そっちは3人じゃない。吊れるのはこっちよ」
「そうでもないんだな~」
エリはニヤリと笑い、私とマドカに向けて語り始めた。
「今日殺されたのはシオリちゃん。もし私たちが人狼陣営なら、シオリちゃんを 狙う意味が無くない?だって、投票で不利になるのは見えていたのに。こんなふうにね☆でも、そっちの二人が人狼、無いし一狼一狂なら、特別おかしな話じゃない。確実にこっちの人数を削り、なおかつ騎士を殺れたらラッキー……もう一人は占い師をセオリー通り狙う☆或いは潜伏して信頼を得る……こんなとこ?」
「なんでそれを私たちに向けて言うのよ」
「考えを変えて欲しいからだよ。市民陣営が勝つには、一致団結しないとね☆」
「いけしゃあしゃあと……!」
「でもそうでしょ?じゃあカナちゃんは仲間に人狼がいたら死んであげるの?」
「それは……」
「カナ!騙されないで!」
ハルが静止した。
「言葉巧みに言ってるけど、そいつが言ってることにも穴はある!仮に私とエリカが人狼なら昨晩はカナを真っ先に殺すのがセオリーでしょう!」
「セオリーから外れたからと言って否定にはならないよ。疑い位置という意味ならハルちゃんが一番濃いかな~」
「カオリさんだって同じでしょ。ずっと黙って急に騎士だなんて信じられると思う?まるで打ち合わせがあったみたい」
「ラチがあかないな~」
まるで示し合わせたように、天井からアナウンスが響いた。
『時間になりました。ここから一切会話は禁止です。人狼だと思う人物をタブレットで選択し、送信ボタンを押してください』
会議はわだかまりを残し、投票へ移る。
私は……カオリに投票した。
正直、エリの演説に心を打たれた。思考が更新した。だからこそ、カオリへ投票する。まず自分が狂人なのだから市民を減らさないといけない。会議が始まるまではエリカとハルをどうするかで迷っていた。しかし、私が狂人の場合でもエリの仮定はだいたい通る。潜伏人狼はありえる話だ。
仲間の誰かは死ぬ。だが、それならば。せめて誰かと一緒に帰れることに賭ける。大切な仲間なのだから。三人のうちだれか一人が人狼なら、僥倖というものだ。
投票が完了した。数分後、アナウンスが流れた。
『全員の投票が完了しました。吉澤カオリさん 3票。出雲ハルさん 3票。山本エリさん 1票。最多票数が同数なので、本日の処刑者はおりません。今後はタブレットに記載されているスケジュールで行動してください』
背後でロックが解除された。スプリットだと……!?どういうことだ……
山本エリに1票が入っている。これはどう考えてもこちら側の人間だ。まるで、スプリットを狙ったかのような不自然な投票である。
困惑の最中、部屋に戻った。二日目が終わった。そして、長かった一日も終わった。
何とか生き残れた。生き残れはしたが……何かがおかしい。
ベットに戻るとスマホに通知が来ていた。今朝に送られてきたDMだった。送り主は……優木サクラと書いてある。
「なっ……だれがこんな悪趣味を」
メッセージを開く。確かに宛先はサクラのものだ。過去のトーク履歴が証明している。そして、画面には、ショッキングな一文が添えられていた。
「私たちの中に 裏切者がいる」
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