デスゲーム1日目~人狼編⑩~


 時は少し遡り、遠山が山村女子高校調査ファイルを読んでいる所。



「なるほどね……優木サクラ。これは曲者だ」

「そうなんですよ~!そもそも華村カナのグループに売春、引いてはパパ活を勧めたのはコイツなんです!当時からパパ活が流行り出したってのもあるらしいんですけどね」

「でも高校にバレたらマズイ。そこで優木サクラはこれまでの援助交際のツテを使い、華村カナ達に客を斡旋する。少し離れた地区で悠々とパパ活を行ったわけだ……しかもパパ活用のアプリにも噛んでいるのか」

「パパ活ブームの火付け役にはアプリもだいぶ関わってますからね、どうやら優木サクラは相当のキレ者で、何人も太客を抱えていたみたいです」

「しばらくはそれで5人仲良く稼いでた、と……特に華村カナはその過程で歳上の彼氏まで手に入れた」

「ただ、順風満帆でもなかったみたいなんです。順調に売れて行った彼女たちは次第に活動場所を広げて、K町に足を踏み入れたようでした」

「しかし、そこで何かがあったのだろうか、高校にバレてしまう……結果停学処分となり、今に至るか……」

「これは確固たる証拠がある訳じゃないのですが、この停学騒動はどうも優木サクラが裏で手を引いているようなんです。」

「というと?」

「実は、これまでのパパ活の様子を陰で記録していたみたいなんですね。それで得た映像や音声を仲間に”脅し”として使っていたような痕跡がある……とのことでした。流石にリーダー格の華村カナにはしなかったそうですが」

「脅し?どんな?」

「この映像を学校にバラされたくなかったら~みたいなやつじゃないですか?何を要求したかは謎ですが、学校内でそういう現場を目撃したことがある生徒がちょいちょいいまして……」

「だから殺される動機はある……か。でも結局密室殺人には変わりないよ?」

「せんぱ~い、ここどこだと思ってるんですか?殺し屋の会社ですよ。内部の人間なら殺しくらい楽勝でしょうよ」

「いやいやいや……」


 あながち否定はできない。本城家ならば造作も無いことだろう。パパ活をしているうちに裏社会に繋がれたから依頼した、そのタイミングでこっちと被った……いやそんな偶然あり得るのか?


「まあ事実は小説より奇なりなんて言いますから」

「それを言うなら既にこの会社の存在が奇だよ。これ以上はやりすぎだ」

「そんなこと言ったらこわ~い本城家に消されちゃいますよ~??」


 本城家の血筋の人間が言うと洒落にならないんだよ。


「じゃあまひるさんは誰だと思うの?犯人」

「だから言ってるじゃないですか!華村カナのグループの誰かだって!」

「広すぎるよ。それに仮に脅しが事実で動機がソレで実行犯がウチの社員なら、あの4人のうちだれがそんな絵図が書けるのよ。偏差値見たでしょ?」

「うーん、でも出雲ハルは頭良さそうですけどねえ……」

「じゃあ出雲ハルが犯人かな」

「それでいきます!」


 なんとも適当な……


「あ!またこいつアホだなみたいなこと考えて!先輩も真面目に考えてくださいよ!」

「気が向いたらね」


 こうして雑談をしているうちに、投票は終わった。遠山達も昼休憩に入った。



 ~~~~~~~~~~


 現在

 二日目会議中

 映像室


「先輩……これはとんでもないことになるかもしれませんよ」

「それはどうして?」

「水瀬さんが送ったメールを見てください」


 添付されたファイルをPCで確認する。どうやら水瀬は匿名の捨てスマホからそれぞれにDMを送っていたらしい。一体どこで用意したのかは謎だ。


 江藤マドカには脅迫文めいた内容の文面が送られている。「お前の秘密を知っている」……か。あえてこの脅迫を匿名では無く水瀬マキから送ったことには理由があるのだろうか。


 事細かに指示が出されている。その中でも一際目を引いたのは「投票先:山本エリ」の文字だった。


「なっ……!」

「水瀬さん、仲間を吊ろうとしてませんか?」

「……これは看過できないな。シオリさんとカオリさんはD組からの派遣だからまだいいとしても、エリさんは違う。歴とした社員だ。このままじゃ大惨事になってしまう」

「水瀬さん、何考えてるんでしょうか……」

「分からない……分からないけど次の夜の時間でコンタクトを取らないと。最悪こっちに呼んでもいい」

「そうですね!」

「……それとまひるちゃん、調査ファイルの件なんだけど……水瀬さんの分は無いの?」

「うう……流石に依頼者は調べられませんよぉ……責任問題じゃないですか……」

「それもそうか」


 優木サクラは脅迫データを多数持っていた。水瀬マキは江藤マドカに秘密を暴くと言って脅迫をした。


 もしこれらが繋がるのであれば、犯人は……


「他の二通も見せてくれる?」

「あ、さっき一緒に添付しましたよ」

「ありがとう」


 丸山エリカに送られたDMと出雲ハルに送られたDMを確認する。そこには江藤マドカに送られた脅迫文は無かった。ただそれぞれ違う内容で一言だけ添えられている。


「どう思いますか?先輩」

「……お手上げ」

「ですよね~」


 後はもう成り行きを見守るしかない。

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