デスゲーム1日目~人狼編①~


 目が覚めたら知らない天井だった。


 私たちはいつも通り放課後にモールで駄弁って夜に帰る生活を送っていたはずだ。


 頭が痛い。気を失っていたようだ。


 確か、家までの道のりで急に覆面の人たちが現れて……



「……拉致じゃん」



 華村は事態を受け止め、頭を働かせる。

 今いる所はワンルームのようだ。ベット、机、自分の鞄、化粧品セット、鏡、冷蔵庫には水が入っている。バスルームにトイレが完備されており、まるでホテルの一室だ。



 ……拉致にしては待遇が良すぎる。



 ふと机の上に目を向けると、一通の便せんが置いたあった。

 中身には一枚の書類が入っている。



『おめでとうございます。あなたは選ばれました。山村女子高校人狼大会への参加権が与えられます。詳細はお手元のタブレットをご確認ください』



 人狼……?ゲーム配信者がやっているのを前見たことがあるが、あれのことか?

 うちの高校がそんな大会を開いているのか?

 そもそもここはどこだ?


 疑問は尽きないが、今はまず現状できることをやるしかない。

 便せんの近くにあるタブレットを起動する。


 程なくして、人狼ゲームのルールやこの部屋についてなどの説明が動画で流れてきた。



 ~~~


 動画を自分なりにまとめる。混乱している場合ではない。



 ・オーソドックスな人狼ゲーム

 ・人狼2狂人1占い師1騎士1市民3

 ・初日の夜は人狼以外の役職が動ける

 ・会議が毎日行われ必ず投票をする必要がある

 ・勝利陣営には賞金2000万円が贈呈される

 ・部屋にある備品は自由に使って構わない

 ・毎日身体を綺麗にして参加しなければならない

 ・食事はタブレットから注文可能

 ・人狼ゲームの会場は部屋を出てすぐにある

 ・会場にタブレット以外のものは一切持ち込み禁止

 ・AM9:00~10:00が「夜」10:00~12:00が「会議」12:00~13:00に昼休憩を挟み、13:00~14:00に再び「夜」14:00~16:00で「会議」 これが1日の流れ

 ・AM8:00までには必ず起きていること


 注意事項として脱走を試みようとしたりゲームに参加する意思を見せなかった時点で「失格」になるらしい。



 そして、肝心な自分に与えられた役職は……


 華村カナ 狂人


 狂人。人狼は中学生の修学旅行で少しやった程度だ。好きな配信者が人狼系のゲームを実況していたが本気で追いかけてはいない。だから狂人がどの程度重要な役職かがピンとこない。


 いや、そもそもこの状況はなんだ?


 学校帰りに拉致されて、人狼ゲームをやれ、だと?ふざけている。

 勝利陣営に2000万円という話も急に降って湧いたようにしか見えない。


 本番は明日の9時から始まるらしい。明日も学校はあるんだが。まあサボれるだけマシとしておくか……


 スマホに手を取る。案の定圏外ではあるが、お優しいことWi-Fiは完備されているのでネットは使える……と思ったがほとんどのサイトやアプリは使用制限がかかっている。


 唯一使えるのは、普段使っているSNSアプリのDMのみ。


 とりあえず、グループにチャットをしてみる


『ねえ、なんか拉致されて人狼ゲームに出ろとか言われてんだけどこれどうしよ笑』


 まったく笑っている場合では無いが、いきなり緊急事態と告げても仕方がない。

 それと、少し悪い予感もしている……


『カナも!?ウチもそうなんだけどwwww』

『ちょっと待って、私も笑』

『これウチら皆拉致られてね??』


 ハル、マドカ、エリカから返信が来る。思った通りだ。

 拉致されたのはうちらのグループだ。


『サクラは?』

『既読つかないね』

『寝てんじゃね?サクラ昨日オールしたとか言ってたし笑』

『ありそう笑』


 とりとめないやり取りが続く。少し緊張が解れた。思えば目が覚めてから何も口にしていない。


『ねえ誰か夕飯頼んだ人いる?』

『マドカやったよー!コンビニの弁当っぽいのが出てきたわw』

『よく頼めるねあんた……』

『本当に拉致とかだったらこんないい部屋用意しなくね?大丈夫でしょw』


 マドカは相変わらずだ。能天気と言うか、楽観的というか…今はその明るさに少なからず心が晴れる。


 とりあえず食事は安全のようなので親子丼を頼んでみた。


『てかこれさ、水瀬が仕組んだんじゃねーの?』


 ハルが急に切り出す。


『それな』

『うちらがピンポイントで狙われるとか意味わからんし』

『でもあいつがこんな部屋用意できるん?』

『パパ様に頼んだんでしょ』


 水瀬の父は地方の有力議員だ。かなりの金持ち家庭らしい。だから私たちはアイツをこき使うし、ストレスのはけ口に使う訳だが……


『どうなんだろ あいつ父親から空気扱いなんでしょ?』

『出来の悪い娘は存在しなかったことにされてんのマジウケるwww』

『それなwww』


 水瀬の悪口に花が咲いてしまった。

 まあ明日になればもう少し分かることも増えるだろう。

 それこそ、水瀬がゲームに参加していれば問い正せる。


 扉の方から音がする。郵便受けのようなスペースにコンビニの袋が押し込まれているように見える。

 どうやら注文していた親子丼のようだ。


 取りに行く時、外から物音や人の話し声がしたが、よく聞こえなかった。

 今はまず夕食が先だ。


 親子丼の容器を開ける。中身は少し崩れていたが、味はいつも食べるコンビニ弁当と変わらなかった。





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