デスゲーム1日目―①
デスゲーム開始はAM10:00からだが、昨晩の事後処理がまだ終わっていなかったので遠山は7:00から出勤している。
結局あのあとは日付が変わる頃まで残業していたので、ほとんど身体を休めることはできなかった。しかし、社宅が近いことと長年のブラック企業勤めの経験により体力の80%を回復させることに成功した。
今現在解決していない問題は二つ。「優木サクラの死をどう標的に説明するか」と「補充要因と依頼者のすり合わせが完了していない」という点だ。
優木サクラの死を隠蔽するか公表するか。隠蔽をするにしても不自然だ。標的内で一連の黒幕は優木サクラなのでは……という疑いがかかる。
今回の依頼者からの要望は「復讐」だ。ノイズになる情報は避けたい。
しかし、自身が参加し、黒幕であることを匂わせ、復讐を完了させる……依頼者である水瀬マキの思惑には困ったものである。
ミーティングの時のことを思いだす。
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「結論から言って、マキ様ご自身がゲームに参加するのはお勧めできません」
人狼ゲームの大枠が決まった所で、水瀬マキとの意見のすり合わせをするべく、遠山とまひるは水瀬マキをオフィスに呼んでいた。
「人狼ゲームの性質上、集団の総意によって結果が変わります。ハッキリ言って、初日吊られることになるのは、マキ様です。いじめをしている集団からすれば、切り捨てても問題がない駒ですから、連中はまずマキ様を吊って様子を見るのが最善手になってしまうんです。マキ様が人狼ならばそれでよし、違くても人数を減らせる訳ですし……」
「……はい。分かっています」
「更に言いますと、こちらで票の操作も行えますが、それでマキ様を生き残らせてしまうと人狼ゲームでは無くなってしまいます。標的5人からしたら、このデスゲームの首謀者はマキ様と繋がるのは自然ですから。そうなれば心理戦も何もなくなってしまいます。適当に殺した方が早くなってしまうんです」
「はい……」
目の前の少女は、ひどくやつれており、夏服から見える腕には痣が見える。
「ですので、こちらとしては複数人補充要因を入れてカモフラージュをするか、5人で人狼をさせるかのどちらかをおすすめしたいのです」
「それでも、やらせてください」
頑なに少女は反発する。
「……理由をお聞きしても?」
「どうしても連中が苦しんで死ぬところを近くで見たいんです。参加者という特等席で。遠隔の映像じゃ満足できません。それに、ある程度は私が黒幕って分からせたいんです。死の間際に私の手によって殺されることを意識させたい。そうじゃないと復讐にならないでしょう」
「気持ちは分かりますが……しかし……」
「お金なら足せます。なんとかできませんか」
これは折れそうにないな、と遠山は思った。
「ですが、今回はもう諸般の事情で人狼ゲームに確定しているんです。ゲーム変更ができない以上、初手吊りのリスクがどうしてもありますね」
「なら初手吊りのあと死を偽装して、現場にいさせてください。確か参加者が脱走しないよう周りに警備兵を配置するんですよね。そこに私をいれてください」
「万が一、という場合がありますし、戦闘経験が無い方に任せるわけにもいきませんが……」
折衷案としては悪くない。現場にいるのは腕利きの殺し屋達だ。まして相手は女子高生。万が一といっても可能性は限りなく0に近い。
「……分かりました。その方向でこちらも話を進めさせていただきます」
警備班に頭を下げる必要が生まれ、遠山は心の中でため息をついた。
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