デスゲーム0日目―④
やるとこが決まれば後は早いもので、デスゲームの準備は滞りなく進んでいった。
比較的シンプルかつ事例も多い人狼ものなので、簡単な部類だったことも大きい。
かくして、初夏、うだるような暑さの中、いよいよデスゲーム開催日の前日という所まで差し迫っていた。
「いよいよっスね~」
「そうだね…何事もなく終わればいいんだけど」
「先輩それフラグって言うんですよ~?」
まひるは笑っている。
「で、拉致の方は完了したんだよね?」
「はい!現場から報告があった通り、放課後に連中が別れたあと拉致は完了してます!今は各部屋でゆっくりさせてます~」
胸を撫でおろす。部長が言うには「一番しくじるのは拉致」らしい。最初の関門はクリアした……といったところか。
「わかった。ゲーム開始は明日だし、まひるさんは確か今日の出勤早かったよね?時間になったら帰っていいからね」
「了解っス~!」
と言いつつ、遠山も所定時間がそろそろ過ぎる頃合いだ。デスゲーム開催中は残業がままあるが、部長から「初めての主任業務だからな、あまり根を詰めすぎるな」とありがたいアドバイスも頂いている。
もう1時間して何も無ければ帰るか……
社内電話からの着信音が鳴った。
「はいこちらデスゲーム企画運営課。お世話になります~!……はい、少々お待ちください」
「遠山さ~ん現場の新田さんからお電話で~す」
「わかった……お電話代わりました遠山です」
『あ、遠山君?こちら現場班の新田です。ちょっとアクシデントというか、事件というか……』
「何かあったんですか……?」
『えーっとね、今回標的を拉致後は眠らせずに各々好きにさせよう、って方向だったじゃない?確か依頼主からの要望だったとか……』
「そうですね…………まさか逃げられたとか……」
『いや、そういうんじゃなくてね……えーっと、ごめんねまどろっこしかったね。ちょっと混乱してて……簡潔に言おう。標的の一人が死んでいる』
「え……?」
『確か名前は……優木サクラ、だったかな。部屋の中で血を流して死んでるよ。ご臨終だ』
「いや死んでるって……どういうことですか!?自殺!??」
『それがなんと他殺っぽいんだよねぇ……まあ詳しい状況はこっちで話すからさ、悪いんだけど会場まで来てくれない?』
「……了解、しました」
電話を切ったあと、遠山はしばらく茫然としていた。
意味が、分からない。
「せんぱーい、どうかしましたー?」
いつもの調子でまひるが訊いてくる。
「あ、いや……ごめんちょっと現場に行ってくる。まひるさんは時間になったら帰っていいからね」
「あ、ちょっと先輩!?……もう」
遠山は、鞄を持ち会場まで走り出した。
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