ゴールライン
「あー、逃げる必要なかったのかよ」
そう言って歩香さんは地面に胡坐をかいてしまいました。
「足が傷つきますよ、ベンチに座りましょう」
そう言いながら歩香さんへ手を伸ばしてみました。
手を握っていただきたいです。
「おう」
あー!
握って下さいました!
暖かいです。
「よっと」
「そうだ、恋人つなぎをしませんか?」
「ああ、いいよ」
やった!
念願の恋人つなぎ!
「えへへ…」
「嬉しそうだな」
「はい、ずっとしてみたかったことの一つです」
指と指の間にある体温がとても心地よく、ずっと握っていたいほどです。
「そうか、他にしてみたかったことは…いや、言わなくていい、一部応えたら危険そうなものもありそうだ」
「えー、そうですか?」
そこまでおかしいものは思いついておりませんが。
「あ、ありました、座りましょう」
手は離しませんよ。
告白をしてから頭が回らないような気もします。
ですが付き合いたてはこういうものでしょう、好きが抑えられないのです。
「ああ、よっと」
「んしょ、そうでした!まだ返答を受け取っておりません!」
本当はまだ恋人ではありません!
なんということでしょう!
「もう答え言ったようなもんだろ」
正確には言われてません!
「あなた…歩香さんは男性か女性か、どう呼べばよいのでしょう?」
彼や彼女などの呼び方を一定にしておきたいのです。
「んー、女より男の方が断然しっくりくるから男で認識してくれ」
「わかりました」
さん付けは〈私の夫〉感がしますので変えません。
次は…。
「私はレズビアンと自分を認識していましたが、これからはどう言えば…」
「あー、んー、俺が好きとか、彼氏が好きでいいんじゃないか?自分で言うのも恥ずかしいが」
どうせ比べる相手がいないので、固有名詞でも問題ありませんね。
「…そうですね、では貴方も詩琳が好き、彼女が好きという認識でお願いします」
「わかった、人に伝える場合は恋人で」
親には言わざるを得ませんしね。
「わかりました」
あとは言いそびれた本題です。
「これで、認識のすり合わせは完了しました、では、先程の返答をどうぞ!」
「はいはい…。付き合おう、詩琳」
付き合おうからきっちりした雰囲気を出しておっしゃられました。
こんなの答えないわけにはいきません。
「はい!末永く、よろしくお願いします」
人事を尽くした甲斐があったのでしょうか。
いいえ、天命ではなく、私と歩香さんの頑張りが実った。
そう想うことにいたしましょう。
りく女”s恋愛 歩行 @lcoocoo
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