原因不明の大災害、「いろんなものが消失してゆく」という現象のため、今まさに崩壊しつつある世界の物語。
滅びゆく世界に生きる人の姿を描いたSFです。ポストではないまさに現在進行形のアポカリプスSF。
何がすごいってもうこの『消失』が!
単にモノが消えてなくなるだけでなく、記憶や概念などのような「形のないもの」まで消えちゃうという、この設定がもう本当に最高でした。
本当に理不尽だし容赦もないし、なにより物悲しくてゾクゾクしちゃう。
とても大事なものを失くしているはずなのに、その失くしたこと自体を認識してなかったりするんですよ……たまらん……。
中でも特に好きなところは、以下にちょっと作中の本文を一部引くのですけれど、
〝標識はだいたい一番大事な部分だけ消えて棒になっている傾向が強く〟
この「意味のあるところ、機能性の関わる部分が消えやすい(のかもしれない)」という、何か指向性のようなもの。
起こっていることはとても想像の及ばない滅茶苦茶な災害なのに、でもその裏に何か「私たちの知らないなんらかの法則」のようなものが自然と推測されてしまう、こういうお話は本当にわくわくします。
まさにSFらしい想像の愉しみ。
もちろん、単に「滅びゆく世界に生きる人間のドラマ」としての面白みもあります。終盤なんかもう最高でした。
何か想像力のようなものをモリモリ刺激される、ワクワク感の止まらない(なのに擦り切れるような切なさのある)素敵なSF作品でした。
とっても面白かったです! 大好き!