第105話 取り敢えず解決かな
「はあ? そんな奴いつまでもここに置いておくわけがないじゃろう?」
そう言って、ボウンがジルベルトに向かって告げる。
「おい、お前。残念じゃがここから戻るにはこやつの言うとおり自力で戻るしかない。それはお前には不可能じゃ。そうなれば方法は一つ。死ぬしかないのう、これはわしにもどうすることもできん、じゃが、死ねばわしにもできることはある。お前は永遠に消滅するだけじゃがの? わかったらどうすればええかよぉく考えるんじゃな、今生かされておることの方を幸いだと思った方がええぞ?」
言っていることの意味は充分に理解できている。
ジルベルトは首を縦に振りたかったが、全身の麻痺は相変わらず解けていないのでそれは出来ない。
「お? そうじゃった、まずは頭だけ麻痺を解いてやろう。それで返事はできるじゃろう」
そう言った瞬間、ジルベルトの首が動くようになった。
「わ、わかった! もうわかった! 俺にはもうあんたをどうこうするなんて無理だ! 今度こそ、本当に誓う! もうあんたの命を狙うようなことはしない、誓う!」
ジルベルトは寝っ転がりながら懇願した。
「そうか、誓うのなら仕方がないね。じゃあ、その身を捧げてもらおうかな。誓いには『代償』が必要だろ?」
「な、何をすればいい? なんでもあんたの言うとおりにする! だから、命だけは助けてくれ――」
ジルベルトの目は真剣だ。さすがにここまでの格の違いを見せつけられればもう何もできない。
「そうだな。君からもらうもので僕が必要なもの、そんなもの、存在するのかな?」
「くぅっ。お、俺だって何かの役には立つだろう? 例えば『シュニマルダ』の情報とか――」
確かにそれは欲しいもののひとつかもしれない。
まぁいいだろう。
「目的」は達成したのだ。その上で、「
「うーん、まあいいだろう。じゃあ、いろいろと聞かせてもらうことにしよう。でも、自分の身は自分で守るんだよ? 君が組織を裏切った代償は君の命で償うしかないんだからね?」
キールは「とどめの一撃」を刺し貫いた。
「あ、ああ、わかってる。それは俺の問題だ、あんたには関係ねぇ――」
ジルベルトはようやく事態の収束が見えて安堵の表情に変わっている。さすがにもう、攻撃をしてくることはないだろう。
******
数分後――。
ルイは一人で森の中でただ待っているしかなかった。
王都に近いため、魔物に襲われる心配はないとは思うが、真っ暗な森の中でただ待っているだけという状況は、心細さしかない。
しかし、キールはここで待ってろと言った。言いつけを守らなかった場合、あとで何をされるかわかったものではない。だから待っているしかないのだ。
そんなことを思っている時、目の前に霧のような靄が現れたかと思うと、二人の人影が現れた。影はやがて形となり、キールとジルベルトが戻ってきた。
「やあ、ルイ、言いつけ通り待ってたんだね」
「あ、あたりまえだろ? もうお前に逆らうなんて馬鹿な真似はしないよ」
「ちゃんと学習しているようで何よりだよ。そうやって勉強していけばいい商人になれるかもしれないね」
ルイはぽかんと口を開けている。はっきり言って、キールが何を考えているのか全く分からないからだ。
「こ、これからは、お前のいう事を聞いていくしかないのか――。おれにとっちゃ、この男がお前に代わるだけだ。何も状況は変わらないんだ――」
ルイの表情は変わらず沈んでいる。
「はっ! 命も
ジルベルトが当然と言えるような言葉をルイに投げる。
「全く同感だね。とにかく、僕はめんどくさいことは嫌なんだよ。ルイ、お前ももう僕には関わらないでくれ、親父さんのことは残念だと思うが、僕だって好きでやったわけじゃない。もとはと言えばそっちが仕掛けてきたことだ。いいね」
キールはルイに詰め寄った。
「お、お前は俺から金を奪うつもりはないのか?」
ルイが答える。
「ホントにお前は馬鹿だな。そんなに
キールはルイに冷たい視線を送る。
ルイはさすがにあの苦しみを二度と味わいとは思わない、何度も首を縦に振った。
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