八
ついには外出すらしなくなった。
幸い、大学は夏季休暇に入っていたが、新学期までに元に戻れるかどうかはわからない。実家に帰省することも考えたが、そっちまで視線が着いてきたら、心がぽっきりいきそうだったので、すぐさま取りやめた。
一日中、クーラーをかけっぱなしにして、タオルケットに包まる。最初は冷えていた布もすぐさま温まってしまったが、かまわず潜り続けるせいで、頭は湯だっていた。
食事と水分補給の時だけはタオルケットから這いでるが、途端に背中に獣の視線が張りつき、あの笑い声が聞こえはじめる。だから、カロリーメイトやウィダーインゼリーで簡単に済ませて、また潜る、そんな生活を繰り返す。
もはや、寝転がり過ぎてなかなかやってこようとしない睡魔の中で、ただただぼーっと過ごす。考えはじめると、正体不明の背後にいるなにかについて触れなくてはならないため、できるだけ頭を空っぽにしたかった。しかし、考えまいとすればするほどより、なにか、の存在感は増していく。
毎日、姿もわからないなにかに、怯えて無為に時間を費やす。ただただぼんやりとした頭を抱えながら。
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