四
自然と人といる時間が増えた。
所属する飲みサー。先輩たちに混じって、サークル室内の冷蔵庫に常備されているビールや日本酒、ワインなどを口にする。
ノリと友だち作りのために入ったきり、会費を払うだけ払って、飲み会への参加自体は最小限に抑えていたが、今はとにかく一人でいたくなくて、積極的に人の輪に混ざろうとした。
「いい飲みっぷりだ。これは将来有望だな」
八年大学にいる長老みたいな先輩に、強く肩を叩かれて喜ばれたりもして、ちょっとだけ誇らしくなる一方、ちょっとだけ後ろめたさもあった。
違うんです、先輩。俺は、ただただびびってるだけなんです! そんな本音はしまいこんだ。もしかしたら、犯人はこの中にいるかもしれないし、そうでないとしてもいらぬ心配はかけたくなかったから。
……いや、そうじゃないな。とにかく、忘れたかったんだ。酔いはすべてをぼんやりさせて、楽しい気分を呼びこんでくれる。酒盛りの間も視線を感じなくはなかったけど、サークルのみんなといれば無視できたし、楽しいが勝った。呑めば呑むほど酒の味もわかってくる。
ずっとこうしてれば、ちっとも怖くない。……怖く、ないんだ。
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