第46話 偽装船を追え2

◇◇◇

 惑星ドルーン森林地帯川辺



 うにゃ、一匹だけでも気色悪いのに数匹の細長い虫が巨大カマキリの腹からうねうねと川に喜び勇んで飛び出して行った。その全長は、優に巨大カマキリの倍以上の長さだにゃ。ホント、気持ち悪いにゃ。

 巨大カマキリの方は、なんだか元気がないみたいにゃ。弱々しく川から上がって来たがもう飛ぶ気力もないみたいにゃ。


「なるほど、これなら。アルド、カマキリとハリガネムシを緊急収容してちょうだい。一応、生体免疫管理基準バイオハザード5を適応、出来るだけ活かして欲しいけど。無理なら殺して標本にしてちょうだい」

『了解、科学主任』


 フィールド調査においても白衣に伊達眼鏡が最近のお気に入り、科学主任ネコさんが貴重なサンプルを殺しても良いと言うとは余程危ないモノが潜んでいるのかにゃ?


「君たちの反応からすると、まさかこの巨大カマキリがベアタッカーの偽装工作船に関係しているのかい?」


 オブザーバのアタル帝国参謀総長が、勘の良いところを見せて質問してきたが果たしてどうなのかにゃ?


「そうね、サンプルを回収して研究室で精密検査をしないと正確なことは言えないけれど。たぶん、あの巨大カマキリが偽装船の隠密機能の秘密を探るカギになると思うわね」

「ふむぅ、じゃあこの川でサンプルを回収したら船に戻ろうかにゃ。お腹も空いたことだしにゃ」


「そうね、サンプル回収も終わったし。真相は研究室で待ってるわ」

「アルド、上陸班を全員エネルギー転送にゃ!」

『了解、ネコ船長』




◇◇◇

 太陽系マンズーマ・シャムセイヤ制御室


「これが、惑星ドルーンで採取した巨大カマキリのサンプル細胞です。こちらが電磁波等を照射したときの反射スペクトルです。

 ほぼ、減衰して検出レベルは極小です。偽装船のサイズが二十メートル級だとすると最大探知距離は百メートル未満だと推測されます。

 これが、偽装船の隠蔽技術の秘密ですね」


 白衣に伊達眼鏡で活き活きと、ベアタッカーの隠蔽技術について語るネコさんは最近の謎が解けてとても嬉しそうに見えるにゃ。


「ねえ、あの巨大カマキリがアタシたちの鍛えた目にも見えなかったのはどういう理屈なのかしらねえ?」

 護衛任務で同行していた心は淑女、身体は筋肉ムキムキマッチョの傭兵メアリー・スコットが現場で感じた疑問をぶつけて来たにゃ。


「そうね、あの巨大カマキリ。預言者Praying mantisには極短期の予知能力のようなものが備わっているわ。それによって、外敵に対して可視光線を含む電磁波のスペクトルを変化させて外敵に自分の姿が見えないようにしているのよ」


「なるほど、だからアタシにはあの巨大カマキリが見えなかったのね。それなら、まったく仕方ないことよね。アタシの腕が落ちた訳じゃないのよね、安心したよ」

 ふむ、まあ傭兵稼業に長年従事していると変なしがらみや、プライドに憑りつかれるのにゃ。




◇◇◇

 ベアタッカー特殊工作船


「ふう、本当にどうでもいいことに付き合ってるのって疲れるわね。私がいくら食べたって太るなんてことは決してないんだけれど … …」

 残存するベアタッカーを纏める実質首領とも言うべき美しき三姉妹の長女は独り言ちた。

「まあ、そう言うな。生まれながらにして死人などという業を背負った姉の秘密を知ったら二人の妹が悲しむぞ。わははっはは。

 ふふ。そういうのもそそられるがな」


 ベアタッカーの中でも特殊な血筋の男が、長女アイン・ベアビーの柳腰を抱いて酒を煽った。二人の関係はもはやどうでもいい秘密の上に成り立っているがお互いそのことに気付いていたのだろうか?

「ああ … …

 船長。もう、た、堪りませんわ」


「そうだな。じゃあ、今夜も楽にしてやろうか」

 船長室の夜は更けていった。

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