第45話 偽装船を追え
◇◇◇
『船長、例の農産物強奪犯についてですが、情報部の解析結果によりベアタッカーの生き残りによる犯行だと判明しました』
情報部と言うのは、アルドの中で情報分析に独立特化した人格を持つAIを指しているのにゃ。何でも、古い文献によると情報部門は運用と独立した方が良いらしいのにゃ。
なんでも、昔の軍隊では運用部門の下に情報部が組織されていたため、シミュレーションで作戦の成否を判定するにも係わらず味方がいつも常勝不敗だったため最後まで作戦のアラが分からずに滅んだらしいのにゃ。いつも、味方の負けが濃厚になるとサイコロを振り直した勝たせていたらしいのにゃ。
とんだ時間の無駄だったのにゃ、ということで厳密なシミュレーションを行ってちゃんと味方が負ける結果も示すようになったらしいにゃ。難しいことはわからないけどにゃ。
根性とか、気力で勝てるような作戦は前提が間違っているらしいにゃ。
「それでベアタッカーの残党が、牛肉とか小麦とかコーヒーとか高級フルーツを盗みまくって何がしたいのかにゃ?」
『何も』
ぬう?なんか、アルドが極シンプルに答えてきたので一瞬意味がわからなかったにゃ。
「ふーん、なるほどね。特別な意味もなく、ただ欲しかっただけなんだと言う事かい?」
何でか、答えに辿り着いたような顔でドヤる参謀総長が少しうざく思えるにゃ。
『そのとおりです、参謀総長閣下』
あ?アルドが適度にふざけているにゃ?
「それは、なにかい。大した目的意識もなしに各国に喧嘩を売って回っているということかい?」
『まったく、持ってそのとおりみたいです』
「ふむー、ところでアルド。ベアタッカーの隠密兵器の対抗手段は出揃ったのかにゃあ?」
『いいえ。ですが… … そのことについて科学主任とも相談したんですが、ここはベアタッカーの本拠地があったシアー共和国の惑星ドルーンを調査すれば必ずやヒントを掴めると推測しています』
なんか、アルドの解答に歯切れがないにゃあ?サマンサのことを気にしているのかにゃ?
「ふむ、わかったにゃ。上陸班を編成するにゃ。メンバーは科学主任にサマンサ、オブザーバに参謀総長、その護衛に藤林千代女、メアリー・スコット両名を付けるにゃ。指揮は吾輩が自ら取るにゃ」
「おおっと、ネコ船長。ありがとう、迷惑は掛けないし必ず役に立って見せるよ」「吾輩は、何もしてないにゃ。面倒臭い駆け引きをしている時間が惜しかっただけにゃ!」
本当に面倒になったら、シアー共和国の首都ゾルーンにでも押し付けておけばいいだけにゃ。
吾輩たちは、質素なお茶会で喉を潤すと(因みに今日のお茶菓子は小さなプチケーキだったにゃ。熊柄のプチケーキを喰ってベアタッカーを殲滅するにゃ)
◇◇◇
惑星ドルーン 森林地帯
『上陸班のエネルギー転送を確認、これより追尾モードでモニターします』
「了解にゃ」
鬱蒼とした森が続く薄暗い道を道なりに歩いていく。この星は地球の約二倍の重力があるが吾輩たちは、重力制御装置を作動させているので普段通り行動できている。
川幅数㎞もある大きな川を見つけたので、少しその上流を目指して進んで行くことにした。
「親方様、大きな気配がありますが姿は見えません。お気を付け下さい」
「うぉ、なんだこりゃ?!」
そして、予想通りもう一人の護衛が餌になってくれているにゃ。ほんとに律儀な奴にゃ。ちょっと、素に戻ってそうだけど。
「何をやっている、護衛が捕まってどうするつもりだ?ブラディ・マリー」
「もう、怒ったわ。アタシに触れるなんて百年早いのよ!」
絵面的には、ムキムキマッチョのお姉さんが何者かに捕まって空中を攫われて行くようだが、生憎敵の姿が隠蔽されていて分からないにゃ。怒ったメアリーが目に見えない相手に滅多斬りしているが、相手は堪えていないようだにゃ。
「千代女、虫の嫌いそうな煙玉とかないのかにゃ?」
「虫でございますか?お館様、それでしたらこの虫よけを。ほれぃ!」
千代女が紅い煙玉に火を点けると、メアリー目掛けて投げ込んだにゃ。
「こ、この。味方にぶつけるんじゃないわよ!」
ぎりぎりで、メアリーが煙玉の方向を微修正したにゃ。
羽音を盛大に震わせ、メアリーを投げ飛ばした何かが、川に勢いよく突っ込んだのにゃ。
川の水を跳ね上げて現れたのは、体長十メートルに達するほどの
「なるほど、惑星ドルーンにしかいないとても珍しいカマキリみたいね。とすると、ベアタッカーにはこのカマキリを操る能力者がいるみたいね。早くサンプルを持って帰って研究したいわね」
今日もうちの科学主任の研究熱は旺盛なようでなによりにゃ。
なんか、川に十数メートルの細長い虫がウニョウニョと蠢いているのがとっても気持ち悪いにゃぁ。
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