第38話 定例会議
◇◇◇
吾輩は、サマンサに抱き締められて無為な時間を過ごしていた。二度目の救出作戦から戻って来た大怪我をした吾輩を見てから、サマンサの監視の目が厳しくなっていたからにゃ。そろそろ、リハビリを兼ねて訓練もしてみたいのにゃ。
「ネコ船長、後五分で定例会議が始まりますよ」
むう、もうそんな時間なのか。まだ左前脚が不自由というかサマンサが厳しくて逃げるにも逃げられないから仕方ない。
「サマンサ、会議に行こうか」
「はい、船長」
吾輩たちが、船長室から出ると目には見えないが隠形中の
◇◇◇
太陽系制御室
『船長、入室。会議の時間に遅れずに船長が来られることがあるなんて… …
こんなにうれしいことがあるもんなんですね。これからも船長には怪我して貰いましょうか?』
「おい、アルド。いくらなんでも、吾輩をディスり過ぎじゃないか。まあ、みんな揃ったようだし会議を始めるといいにゃ」
『はい、では会議を始めさせていただきます。司会はいつものように私アルドが務めさせていただきます。
では、通常営業部門から報告をいたします。
今期利益は前期と比較して二十パーセント上昇しました… …
次は科学開発部門の報告を科学主任、お願いします』
「はい、お手元の資料をご覧ください。
オーナーの
白衣の科学主任ネコさんが伊達眼鏡をキラーんと輝かせて報告を始めたにゃ。
「船長、どうぞ。今日のおやつは、フルーツ大福ですよ。イチゴ、キウイ、パイナップル三種のフルーツが白餡と求肥に包まれていて豪華ですよね。船長は、どれにします?」
吾輩は、キウイと紅茶を選んだにゃ。上品な白餡とフルーツの織り成すハーモニーが退屈な会議の一服の清涼剤となっているにゃ。
「次に最近船長が獲得した能力ですが… …」
科学主任が吾輩の能力についての研究発表を始めたにゃ。
1 ”そんなの知らないにゃ”:重力の加重変化を向こうとする能力。(多分、重力の存在自体を否定する魔導的な力の制御によって達成しているかのように思われます。)
2 ”猫の手だったらかしてやるにゃ”:切断された船長の手を相手に貸すことによって相手の固有能力を封じるように思われます。能力の効果範囲については更なる検証が必要かと考えます。
「ところで、船長御本人の感触などはどうでしょうか?」
「ふむ、痛いのは嫌なので出来るだけ使いたくないにゃ。と、いうことで実験には付き合えないにゃ、悪いんだけどにゃ」
吾輩が真面目に答えたのに、何だか弛緩した空気が部屋全体に流れて不本意だにゃ。ネコさんの方は実験に協力的でない吾輩の答えを聞くと、残念そうに首を振っていたにゃ。
「そう、仕方ないわね。ところで船長専属の非合法部隊を雇い入れたけど、この船の秘密は勿論のこと船長の能力についても一切他言は無用だからこの定例会議が終わったら秘密保持契約について説明するからメアリー・スカーレットと藤林千代女は私の研究室に出頭すること、いいわね?」
「了解だわ」
「承知、お館様の不利に成るようなことこの千代女がする筈も無いこと」
二人とも納得しているようで、なによりにゃ。
『最後に情勢の変化について報告します。
先ほど、各国からの報告及び情報部の分析により判明したことですが… …』
ふむ、何でもシアー共和国から多数の宇宙船が発進、宇宙海賊《ベアッタカー
》はシアー共和国を捨てどこかに行方を眩ませたらしい。
その際、行きがけの駄賃とクライナ共和国から数十万人規模に迫る大量の若い女性を誘拐したらしい。
ベアタッカーの行方は各国及びアルドにも分からないらしい。
ふーむ、そろそろコメッコクラブを始め各国との縁を切るかにゃ?放って置くと面倒事が追いかけてくるようになりそうにゃ。
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