第37話 アフタケア

 うーん、サマンサが過保護で敵わん。参謀総長が世話焼きで辟易にゃ。千代女が義理堅くて窮屈にゃ。



◇◇◇

 惑星ルッズ コメッコクラブ大統領官邸貴賓室


 大統領とアルカナ・ファイブのレッド、イエロー、グリーンが揃って救出されたブルーを歓迎していたにゃ。


「ネコ船長、よくぞブルーを救出してくださいました。前にも申しましたが、このご恩は一生忘れません。コメッコクラブは永遠に太陽系と友好を育んでいきたいと思います」

 因みに空気を読む吾輩は、二度目の救出作戦で受けた左前脚切断痕を首輪の機能で何事もなかったように見せてるにゃ。実際は、包帯ぐるぐる巻きの痛々しい姿にゃ。同情なら美味しいお菓子を差し入れしてくれればいいにゃ。


 ふむ、大袈裟に感謝するということは一応対外的に友好関係を結ぼうとする努力の表れか? まさか、そこまで単純で大統領に成れるとも思わないがにゃ。

「まあ、今後は友人として接しましょうか?悪い虫が現れるまでにゃ?」


「ご冗談を、うちらコメッコクラブが受けた恩を疎かにするはずがないじゃありませんか?」

 大統領が少し心外な顔を創って見せるが、そもそもこいつらはアイドルで政治家だからにゃ。何をやっても嘘寒さが透けて見えてしまうのは仕方ないことにゃ。

「ここは、特別顧問の意見を聞きたいにゃ?」

「え、私の意見かい?まあ、政治の世界にどっぷり漬かっているから話半分くらいに考えればいいんじゃないのかな?」


 我らの参謀総長がそう言うのなら、確かにそうなのだろうにゃ?

「それにうちの情報部にも不穏な噂は流れているんだよ。たしか、トランプ・スリーだかトランプ・フォーが失踪してどこぞの国で高級娼婦として第二の人生を送っているそうじゃないか?

 彼女たちって、君たちとライバル関係にあったらしいね?」


 アルカナ・タロット大統領が居心地悪そうに右上を見つめていたにゃ。

「それは、どこにでも政争相手を陥れようとする勢力が居るんですのよ。そんなことはアタル帝国の参謀総長ならよくご存じのはずですよ。

 それを言うなら、そちらの白衣の魔女でしたっけ?彼女の開発した異種間交配技術がベアタッカーの戦闘能力向上に一役買っているみたいだと、うちの情報分析官が言ってましたよ!」


 今度は参謀総長が若干引き気味に、言葉を濁す番だにゃ。


「ふう。現シアー共和国の鉱山には良質の鉱石が眠っているんだが、あの惑星は何分我々では採掘が困難ほど高重力で劣悪な環境なのでね。少しばかり彼らの肉体改造に力を貸したんだよ。言わば国際貢献なんだよ。

 彼等がそれを他惑星国家からの略奪、復讐に使用したのがいけなかっただけさ」

「ふむ、まあそのあたりは吾輩たちには関係のないことだから。

 それは、そうとシアー共和国の王族を排して権力を奪取した教団とかについてはわかっているのかにゃ?」


「教団ねえ?うちの調査団を送って探ってみてもいいけどね。ネコ船長には世話になっているかね。このぐらい、なんでもないよ」


 参謀総長が、教団について調べてくれるらしい。まあ、それなら任せてもいいかにゃ?


「中帝国にそこまで手間を掛けさえる訳には行かないな。教団の調査については我がコメッコクラブの方で調査してすぐに報告するよ」

 うん?なぜか、大統領まで調査に乗り気のようだが?


「まあ。じゃあ、そう言うことで判ったら報せてくれにゃ。くれぐれも、国家間でいがみ合わないようにして欲しいにゃ。

 それでは今日のところは、引き揚げるとするにゃ」




◇◇◇

 惑星ダンキン首都ナツード ヤン・リン・シャン侯爵邸


「いろいろと世話になったね、ネコ船長。本当はもっと長く君の船に乗っていたかった気がするよ。まあ、お互い忙しい身だから叶わないだろうけど」

「ふむ、あんまり他国を引っ掻き回さないで欲しいにゃ。今はそれくらいかにゃ」

「まあ、それにはできるだけ善処しよう」


「アルド、帰還する。エネルギー転送」

「了解、船長」

「さようなら、ネコ船長!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る