第32話 オーディション
◇◇◇
コメッコクラブ大統領官邸 貴賓室
「もう、仕方ないにゃ。アルカナ・タロット大統領、一応救出依頼の件善処するにゃ。細かい条件等についてはアルドと詰めてくれにゃ。準備があるので一旦吾輩たちは帰らせて貰うにゃ。
面倒だけど、猫の手だったら貸してやるにゃ」
「ありがとうございます、ネコ船長!」
大統領の涙に打算は浮かんでいなかったにゃ。
「アルド、帰還する。エネルギー転送にゃ」
『船長、了解』
◇◇◇
「アルド、地球から傭兵を集めてくれにゃ。数はそうだにゃ、二、三十人位腕の立つ奴から鍛えれば三人位は使えるようになるにゃ。(なってくれないと困るにゃ)」
『何か、特技とかご希望はありますか?』
「特には、ないにゃ。紅い
◇◇◇
太陽系訓練室
女がナイフを奪われ、男に命乞いをした。
「ま、待って、お願い殺さないで!」
「ふっ、向こうへ行け!」
ブー!
『三番失格、本日までの訓練手当は
「おい、待てよ!俺がヘマしたってのか?」
「ああ、恰好付けずに殺せる時に殺せ。そうでないとお前か仲間か、その両方が死ぬことになるにゃ」
吾輩が男の傭兵の首に爪を突き付けると、素直になったにゃ。
「ネコ船長、俺は… …」
「ねえ、あたしといいことしない?」
いかつい体格で、お姉言葉の傭兵か。いいだろう、いっちょ揉んでやるにゃ。
傭兵のコンバットナイフが吾輩の漆黒の毛を数本切裂いた。吾輩は尻尾で傭兵の手首を払ってナイフを叩き落した。
傭兵の蹴りが吾輩の腹に吸い込まれて行く、蹴り飛ばされた吾輩は勢いよく路地裏の壁を吹き飛ばしながら背中から落ちた。
「ふーん、やはりこの程度じゃ効かないのね。どんな鍛え方をしたらここまで強くなるのよ。ねぇ、教えてよ?」
吾輩はゆらりと立ち上がると地を蹴って、傭兵の額に体当たりした。
「ああーん、痛いじゃないの。凶暴な猫ちゃんね。
今度はこっちから行くわよ。そーれ、お仕置きよ!」
身体は頑丈だし、反射神経も優秀、お姉言葉が気になるがLGBTだか何だか知らないが昨今の情勢では致し方なし。異常じゃなくて個性だと飲み込むことにするにゃ。したがってこいつは、合格にゃ。
『十九番、テスト終了。合格ですよ』
「おい、十九番。名前は何だったかにゃ?」
「私は、メアリー・スカーレットよ。ブラッディ・マリーなんて失礼な仇名もあるわね」
「そうか、メアリーこれからよろしくにゃ」
こうして、傭兵を戦士に作り替えるネコ船長ブートキャンプ最初の合格者が現れたのにゃ。
焦げ茶色の忍者衣装の他と比べて頭一つ低い人物が、五人の男たちに囲まれていた。
「へっへ、こういうのは早めに弱い奴を仕留めておくのさ。俺が伝説の船長の片腕として傭兵業界を締めるのも時間の問題だな。
よし、お前たち見といてやるからそいつを始末しちまいな!」
「一応、聞いておく。故郷に親兄弟を残してる奴はいるかい?」
「そんな奴は、いやしないよ」
「じ、実は病気の妹が田舎にいるんだよ。俺が帰らないとあいつの薬代が… …」
「ふん。おいおい、とんだ臆病者が混ざっていたようだな」
先ほど吾輩の片腕候補だと勝手に燥いでいた男が不機嫌に鼻を鳴らす。
「なら、逃げてもいいよ。見逃してやる。だが、逃げないなら容赦はしない。だいぶ時間も押して来てるから行くよ!」
忍者は真っ先に自称片腕候補の脚に苦無を突き刺し、周りの雑魚の関節を極めながら片腕候補にぶつけていく。
「ふふ、結構容赦ない奴だにゃ。もう少し様子を見るかにゃ」
三度ぶつけられて、漸く片腕候補は苦無を脚から引き抜いた。
「くそ、ゆ、許さん!
奥義、雑魚クラッシュ!」
片腕候補は、ぶつけられた拍子に脳震盪でも起こして気絶している雑魚を力任せに振り回すと忍者目掛けて放り投げた。
「笑止!」
忍者は、雑魚の身体を躱すと天高く舞い上がり、急転降下で片腕候補の脳天を剣で突き刺して止めを刺した。
一陣の風が吹き、どす黒い煙が忍者を襲う。
「そう、逃げなかったのですね」
ふらつく忍者に故郷に病気の妹を残している雑魚の生き残りが、無言で剣を突き立てた。
かのように見えたが、忍者が剣で男の喉笛を引き裂いた。
「なぜ、あの毒に解毒剤などない。俺が勝っていたはずだ」
「忍者の私に毒は効かぬ、惜しかったな」
『お疲れ様です。十三番、合格です。船長、制御室へお越しください』
「十三番、お主の名前は?」
「拙者、伊賀忍者の上忍の一つ藤林家の末裔、千代女。以後お見知りおきをネコ船長」
◇◇◇
太陽系制御室
「船長、なにとぞ速やかに我がグループのメンバーにして主要閣僚の救出をお願いします。特急費用なら如何様にも出させていただきますので」
ふーむ、流石に自身を除くアルカナファイブの四名が誘拐されたままでは格好が付かないのかにゃ。
「お待たせしました、明日より救出作戦を開始します。
猫の手だったら貸してやるにゃ」
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