第27話 いつも真実が一つとは限らない
ふむー、どうしてこうなったのかにゃ?
「じゃあ、そろそろ寝るとしようか。船長はパジャマとネグリジェどっちが好きかい?」
同居人の
吾輩は決して変態ではないので彼女がところどころ透けたピンクのネグリジェを着ようが可愛らしいデザインのピンクのパジャマを着ようが正直どうでも良かったが他の人間が見たときのリアクションが鬱陶しそうなので ・・・ ・・・
「そうだにゃあ、パジャマの方が可愛くて似合っているようだにゃ」
「ふーん、船長はパジャマ派なのか。ちょっと残念、まあ今日のところはパジャマにするね」
そう言うと、さっさと服を脱ぎパジャマに着替えたのにゃ。
「まあ、いいかにゃ」
「じゃあ、灯り消すね」
「え?あ、ま、待て!なんでにゃ!」
吾輩は参謀総長に抱き締められると、一緒にシーツに包まったのだった。
「ふう、どきどきしてる。まあ、興味がなかったら聞き流してくれればいいから。 一人の少女の話をするよ……」
ふむ、密着監視を自ら宣言した以上はこれも仕事か?大人は自分の責任を簡単に脱ぎ捨てたりしないのにゃ、辛くてもこれが真実にゃ。
ヤン・リン・シャンが語る少女の話は、深夜も耽る頃まで続いたにゃ。
少女は政争に巻き込まれ、幼い頃に両親を亡くした。それ以来、少女は子供らしい遊びを止め中帝国で当時一番の軍学者について学問を学んだ。少女の熱意は、二度と同じ不幸を臣民に味合わせたくないという願いから発せられ、彼女の才能と相まって軍学者の知識を吸収していった。
軍学者の生徒にはもう一人不思議な少女(性別不明?)がいて、その少女には名前がなかった。名のない少女に学習意欲はあまり見られなかったが、一種の天才だったため二人とも甲乙付け難いほど優秀な生徒であった。
少女の熱意には理由があった。それは幼い日に亡くした両親への想い、犯人に対する復讐であった。
結局少女の両親を殺した犯人は、反主流派で頭の悪い貴族の一人ということで決着したけれど少女は納得していなかった。自分の得た知識と人脈を駆使して真の犯人を追ったけれど、確信に至ることは出来なかったそうにゃ。犯行から時間が経ってから彼女の追求が本格的になった、つまり証拠隠滅の時間がたっぷりあったことが災いしたようだにゃ。
でもとヤンは続ける、確証はないがきっと帝国の弱体化を狙ったあの国の差金だったのだろうと。
「それで、その国とはどこなのかにゃ?」
「ふっ、コメッコクラブよ。あの嘘っぽいアイドルが政権を握る虚栄と欺瞞が蔓延る怪しい国こそが犯人に決まっているよ」
ふむ、コメッコクラブか?それが中帝国の軍事力を恐れて弱体化を図り、帝国内の反乱分子を焚き付け内乱を起こしたと言うのか。
まあ、戦いにおいてはやられる前にやれと言うのは常道だからにゃ。
ところで、そのコメッコクラブが陰でシアー共和国を操り、クライナ共和国の住民を攫って奴隷として売り捌いているのかにゃ?
「クライナ共和国から住民を攫って奴隷にして売るシアー共和国。誘拐の黒幕は中帝国だと情報提供してきたコメッコクラブ。密かにシアー共和国に技術供与している中帝国か。
なんだかコメッコクラブの言い分が正しそうに聞こえるにゃあ?」
「いや、待て!それは違うぞ、我々は君たち太陽系に蹂躙され弱体化し母星を追われた哀れな流浪の民に過大な重力という過酷な環境下でも暮らせるように生体改良技術を供与しただけに過ぎぬよ。
あまりに勢力バランスが崩れるのは都合が悪いからね。彼らが得た力をどう使うかなど我々中帝国は与り知らぬことだよ」
ふむ、まあそう言うことにしておくかにゃ。
◇◇◇
船内の研究室
白衣を着た科学主任が秘密のモニタをチャックしながら呆れたような顔をした。(ふふ、流石は女たらしの船長ね。参謀総長から各国の秘密情報を聞き出す、いえ、勝手に話させるなんてどこかのスパイも真っ青ね!)
「アルド、今回得た内部情報と情報部の報告を追加検証してちょうだい」
『了解です、この手の情報は中々手に入らないので検証に少し時間が掛りますよ。でも、船長が寝物語にここまで聞き出すなんて… …』
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