第22話 定例会議
◇◇◇
宇宙船
『船長、至急制御ルームにお越しください。みなさん、お待ちですよ』
お?吾輩としたことが、もう定例会議の時間か。紳士たる者、時間に遅れるとはあるまじき失態にゃ。訓練ルームから緊急モードで、制御ルームに駆け付けたのは内緒にゃ。
◇◇◇
制御ルーム
『船長、誰かさんの所為で押しています、開会宣言等は省略しますね。では早速定例会議を始めます、司会はいつものように私アルドが務めさせていただきます。
通常業務については、お手元の資料をご覧ください。質問がある項目に限りご説明いたします。担当からは特別ご報告する事項はございません』
ふむ、みなが揃って待っているところに吾輩が到着するといつにも増して機械的で冷たくアルドが定例会議を仕切り始めたにゃ。これはかなり怒ってるみたいにゃ、反省すべきなのにゃ。
『次は科学部門の発表です、科学主任お願いします』
物憂気に白衣姿に伊達眼鏡のネコさんが、レーザポインタをくるっと回すと発表を始めた。
「惑星グレイで我々を襲った盗賊の正体ですが、やはり予想どおりシアー共和国の勢力でした。実態はシアー共和国の正規軍ですが、他の勢力の批判を躱すため謎の
今回のサマンサ救出に伴って執事ボットが惑星ドルーンへの侵入時に偵察用のナノボットを潜入させてようやく突き止めた情報です」
ふむ、判明した情報は次のとおり
1 盗賊の正体:シアー共和国正規軍の仮の姿
2 シアー共和国の科学レベル:特定分野、特にバイオテクノロジーは非常に高度 な技術水準を持っている。
3 ベアタッカーの能力:重力制御、隠密飛行が可能な宇宙船、熊怪人に変身可能
4 誘拐の目的:奴隷売買、特に優秀な遺伝子を持つ場合は繁殖用の受精卵を採取
「うっ、あぁ」
誘拐の目的についての説明が終わる頃に、サマンサが蒼い顔をして俯いてしまったにゃ。小刻みに身体が痙攣しているところを見ると、シアー共和国で受けた仕打ちがフラッシュバックしたのかも知れないにゃ。
「サマンサ、ごめんなさいね。少し配慮が足りなかったかも知れないわね。船長、予定を少し変更して定例会議を切り上げて、サマンサの治療に掛りたいと思いますがどうでしょうか?」
『必要事項は、共有できているので定例会議を終了しても差し支えないと思いますよ、船長』
ネコさんに続いて、アルドまで会議の終了を提案してくるとは。まあ、吾輩も会議は好きじゃないので喜んで了承したのは言うまでもないにゃ。会議よりも仲間、サマンサの方が大事にゃ。
「うむ、これにて会議は終了にゃ」
◇◇◇
医務室
サマンサがベッドに横たわっている。落ち着いた声でネコさんが、サマンサに暗示を掛けているようにゃ。油断していると吾輩まで催眠暗示に掛かって眠ってしまいそうで危ないにゃ。
「サマンサ、惑星ドルーンで貴方の身に何があったとしても誰もあなたを非難したりしないわ。安心して話してちょうだい、私たちはあなたの精神の負担を取り除きたいだけよ」
「はい」
サマンサが語った内容は、こんな感じだったのにゃ。
ベアタッカー本部で、ボスに奴隷の首輪を嵌められてから三日の間、誘拐犯であるゲインによって奴隷商人の館に連れられ調教や辱めを受けたのだった。
そして、毎日体内から繁殖用に原始卵胞を採取して高速育成装置により受精可能な状態まで卵子を育成していた。つまり、三日間に渡り体外受精を三度行ったということらしい。
一度奴隷調教師に、体外受精させるのなら態々男女で性交する必要はないのではないかと質問したところ答えは予想外のものだった。
なんでも、実際に性交をしていないカップルでの体外授精では能力が劣った子供や成人にまで成長できないらしい。逆に男女で性交し心と身体を刺激した場合は能力も高く成人まで成長できると信じているとのことだった。シアー共和国では統計的にもこれが立証されているのだと。
このため、サマンサに対する凌辱は性感を刺激することに重点が置かれていたらしい。
とにかく、ナノボットによる情報収集でもサマンサの子供が少なくても三人は惑星ドルーンで育てられているらしい。
「じゃあ、三つ数えたら辛いことは綺麗に忘れて貴方は清々しい気分で目を覚ますわ。一つ、二つ、三つ」
「はあぁ、あれ? みなさん、どうしたんですか?会議は終わったんでしたっけ?」
「ええ、会議が終了したときに貧血で倒れただけよ。心配しないで念の為に検査したけど何ともなかったわ」
「あーあ、やっちゃった。みなさん、ご心配をお掛けしました。ごめんなさい」
「気にすることはないにゃ」
吾輩は、軽くウィンクしたのにゃ。
(それにしても、奴等の手にサマンサの子供が最低三人も握られていると思うとモヤモヤするにゃ。サマンサが帰ってきたときに、惑星グレイへのエネルギー転送前にスキャンしたときより原始卵細胞が三千個減少していることをネコさんが気にしていた意味がようやく分かったにゃ)
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