第17話 襲撃
パンダの像か、何でそんな物が残っていたのかにゃ?
***
惑星グレイ 特殊攻撃船
「おい、あと三分で着陸だ。襲撃の準備しろや!」
「へーい」
船長の指示で一斉に装備を確認していく。と言っても大した手間じゃないから新入りでも二分あれば終わるルーティンだ。
俺くらいのベテランだと三十秒だけどな。まあ、精神安定剤のアンプルと無反射コーティングされた大型のタクティカルナイフを確認するくらいだけどな。
俺はゲイン、惑星ドルーン生まれだ。今回の出撃からチームリーダーを任されている。うちのチームは全員、高重力(惑星グレイの倍)のドルーン生まれで成長促進剤を使用して二年半で成人している。何が言いたいかと言うとグレイから脱出してきた奴等より重力の制御が格段に上手い。
俺たちの”船”には、三人一組の襲撃班が三班そして船長の合計十人が乗って来た。”船”が高速で降下しビルの屋上、上空三メートルの位置で停止するとハッチが開き一班が落下していった。俺たちにとっては、三メートルの落下などは遊びの範疇だ。
「さて、行くか」
俺たちは一班に続いてクレイナ共和国の首都ギールの高層ビル屋上に降り立った。屋上からはビルが立ち並び広い道路が縦横に延びる様を見渡せる。この国の首都だけあって街並みは綺麗だ。だが深夜なので人の数はそれほど多くない。
俺たち二班はエレベータを使って発見されずに、ビルの一階にある宝石店に侵入した。
おいおい、新人相手にマウントを取りやがってまさか冗談だよな。揶揄ってるだけだよな。
「へへ、俺ぐらいになるとよダイヤの偽物くらいわかるんだぜ。こうやってハンマで割れなかったら本物よ。はぁっ!」
小指大のダイヤはあっさり粉々に砕けてしまった。
「割れたってことは、偽物なんですね」
馬鹿力でハンマーで殴ったら本物でも割れるわ!運良く偽物であってくれよ。
俺は割れたダイヤの破片をルーペで確認すると力なくため息を吐いた。
「馬鹿やろう、こいつは本物だ。ダイヤが強いのはひっかき傷が付きにくいだけで鉄のハンマで殴れば簡単に割れるんだよ。お前、一体誰にそんな馬鹿な判定法を習ったんだ?」
「え?引退した親父に教わったんだよ」
「お前んとこの親父さんか、そりゃお前が揶揄われたんだよ。まあ、お前の稼ぎから引いとくから。おい新人、下手な知識は役に立たねえ。いい教訓になったろ?」「はい」
「くそ親父が ・・・・・・」
「もう過ぎたことは、後だ。ここにある宝石は全て回収するぞ」
「おう」
「俺の稼ぎが・・・・・・」
俺たちは獲物を確保すると侵入したビルの二つ隣のビルに移動した。一班と三班は降下したビルの上層階でまだ上級市民の物色を行ってる頃だろう。
「抵抗する奴は、容赦なく殺せ」
「おう」
「さっきの損失を取り返すぞ!」
上層階で獲物を物色してその後は、屋上で”船”が待っているはずだ。
「うん、若い女の匂いがする。よし、ここに入るぞ」
鍵なんか持ってるはずないからドアを強引に引き千切って、部屋の中に俺たちは侵入した。
「きゃあ!」
新入りが慌てて悲鳴が聞こえた寝室に駆け込むと女の口を手で塞ぎ、頸動脈を軽く圧迫して失神させた。俺ともう一人でアパートの中を確認したが他には誰も居なかった。
俺たちが戻ってくると、新入りが獲物を縛りタオルで猿轡を施していた。今回の新人は出来が良いな。
他に三軒襲って獲物を合計を六人確保して、屋上上空で待機していた”船”に乗り込むと一路母星に帰還した。
***
『船長、またクレイナ共和国の首都ギレルが襲われたみたいです』
むむ、ゆっくりパンダ像の謎でも灰色の脳細胞で解こうとしていたのに。せっかちな犯人にゃ。
「それで、襲撃の証拠とか掴めたのかにゃ?」
『それが船長、ドアを力づくで破るとかかなり力技で襲ってきた割に当局の防犯カメラ等の映像記録も残っておらず。正直、証拠が取れなかったのが不思議です』
「ふむ、これまでのパターンから次の襲撃が何時頃か予測できるかにゃ?」
『今回の襲撃、住民の誘拐と宝飾品の強奪にはパターンが認められますので推測可能です。およそ、二週間後の深夜です』
「じゃ、そのとき罠でも張って尻尾を掴むとするにゃ。それまでのんびり謎を解くとするにゃ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます