第11話 死霊術
先ほど死んだばかりの新鮮な死体があり、そこに死霊術師がいるなら交霊術は成功した様な物である。残る問題は、呼び出す霊が人間と意思疎通できるほどの知能があるかどうかだが ・・・・・・
「交霊術により、巨大ゴキブリの霊を降ろします。まず場を調えますので少々お待ちくださいね、ネコ船長」
そう断るとサマンサは、巨大ゴキブリの左右の触覚、六本の脚を無造作に引き千切っていくと本体と少し離して積み上げた。左手の親指を短剣で傷付けると、懐から出した怪しげな液体の入った瓶に血を注いだ。
巨大ゴキブリの周りを歩きながら、怪しげな液体を円を描くように撒いていき一周したとき魔法陣が完成していた。
「では、始めます。我、サマンサの名において命ずる。そこに横たわる骸の霊よ我の面前に現れ、我が問いに誠意を込めて答えよ!」
ふむ、なかなかサマンサの交霊術も様になっているにゃ。
すると、一陣の風が吹き黒い
「さあ、其方の名を答えよ」
『名、名前?俺はゴードン、ゴードン教授』
ほう、ゴキブリに名前や役職なんかあるんだにゃ。
「其方はなぜそんなに大きくなった。他にもそれほど大きな者はいるのか?」
『俺ほど大きな者はいない。俺は何でも喰らった。こっちに来てからは雌を何度も何度も襲って犯したが、子を成した者はまだいない。雄は殺して食った、抱くのに飽きた雌も喰った。食って喰って喰いまくったから大きくなった』
ふむ、共食いであんなに大きくなるものかにゃ?
「おかしいわね、共食いじゃそんなに大きく成れない筈なんだけど。サマンサ何か特別な物を食べたか飲んだかしていないか聞いてみて。それと、最初からこの惑星に住んでいたのかもね」
「はい。其方は、最初からこの惑星に住んでいたのか?特別変わった物を食べたり飲んだりしていないか?」
霊が、首を傾げているような雰囲気がした。
『うーん、別の星で生まれたが。捕まって、しばらくしたらこっちに連れて来られた。変わった物は食べていない、普通に雄と雌を喰らってだけだ。
親子丼も喰ったことはあるがな。母親は俺が寝取って、助教授まで引き上げてやった女だ。結構乳もデカくて、娘の方も側に置いて色事を教えてやりたかったが最初に母親と並べて喰ってやったらそれ以降拒否しやがった。
だから下っ端の研究員として辺境の惑星に飛ばしてやったわ。綺麗な顔して泣き声もそそったんだがな。少し乳が小さいのが欠点だったな』
「うーん、何だか相当なセクハラ野郎みたいにゃ」
「え、そこ。でもゴキブリに親子丼とか乳とか助教授とか研究員なんて役職あるんですね。驚きの新発見ですね!」
「はあ?そんな訳ないでしょ。言葉じゃ伝わらないわね、サマンサ。ゴキブリの記憶を再現表示できないの?」
(動物の死霊を憑依させるのは危険だから絶対やってはいけませんよ!最悪、人に戻って来られなくなりますからね)
「・・・・・・ お祖母様、ごめんなさい。
今から死霊のイメージを表示させます。もし私が正気を失ったらネコ船長、引っ掻いてでも起こしてくださいね」
「任してくれにゃ」
「頼みにしてます。
我が身既に空成り、我が心は鏡成り。彼は我、我は彼。彼の心を
我が前に映し出せ!」
サマンサの銀色に輝く髪が宙に逆立つ、彼女の瞳は紅く燃え上がった。
『きゃあー。止めて娘の前では止めて!お母さん、こんな男になぜ?』
母親と娘が裸で四つん這いになり、後ろから中年男が覆い被さっていた。
『私を陥れたのはお前か?な、何をする。まさか、俺にゴキブリのDNAをそんなことをして何になるんだ。それがお前の復讐なのか、ドロテア!』
手術台に縛られた裸の男が喚いていた。白衣の女がゴキブリのDNAを注入していく。手術台を囲むように描かれた魔法陣が妖しく輝いていた。
蜂、ゴキブリ、クマムシがそれぞれ透明な箱に入れられて放射線を浴びせられていた。
『あの女は、復讐と実験の一石二鳥だと笑っていた。幽閉中は何度も実験ビデオを見せられたよ!あいつは魔女だ、白衣の魔女。あいつは致死量の何百倍もの放射線を俺たちに照射しやがった』
人気のいない場所で密会する男女、迫る焦げ茶色の影。気を失った男女を巨大なゴキブリが跡形もなく貪り尽くしていった。
『しばらくは人の形を維持していたが食欲が・・・・・・ 手近な食い物に手を付けてからは食事行くときは本来の姿ゴキブリになった。
ドロテアに手術を受けた場所か?覚えてないなあ。ホテルに呼び出されて薬を盛られ、そのまま何処に運ばれたのか・・・・・・ 』
それにしても驚いた、犯人は白衣の魔女ドロテアにゃ
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