夜は明るく、人を刺す

シャンガード

第1話

『次のニュースです』


テレビから聞こえる音に耳を傾ける


『昨夜、珊漂さんひょう地区にて殺傷事件があり警察は…』


「珊漂地区?近いな」


最近は殺傷事件ばかりだ。毎日のようにやっている。物騒、なんて言葉で済ませていいことではないだろ。


「勇世も気をつけるんだぞ」


「わーってるよ」


父さんの言うことに適当に返事をする。

夜宗勇世やそうゆうせい

勇世は『勇ましく、世界を見る』みたいな意味だって父さんは言ってた。


「いってきま〜す」


「気をつけろよ」


気をつけるもなにも最近の事件は全部夜。

つまり昼はなにも起こっていない、平和な町なんだよ。


なんてぼんやり考えながら学校へと向かうと


ドンッ!


後ろから誰かにぶつかられる。

たいして痛くはないが驚きはする。


「…大丈夫ですか?」


そう言いながら後ろを向くと満面の笑みを浮かべた男が一人いた


「だ、大丈夫ですかって…おまえ、面白すぎるだろ!」


腹を抱えて爆笑しているコイツは新堂浩介、昔から家が近くて家族ぐるみで仲が良い。


「知らないやつだと思ったんだよ」


「いや〜ごめんごめん!ちょうど前にいたからさ〜」


ヘラヘラしながら笑っているが悪いやつではないんだよな…

浩介も俺と同じ私立峰鐘学園の2年生で登校時間もいつもこんくらい。ただ…


「そういや朝のニュース見た⁉︎」


「どれ?」


「珊漂であった殺傷事件だよ!」


「みたみた、父さんが念入りに気をつけろよって言ってきたよ」


「気をつけたほうがいいって!今までの被害者に関係性はないらしくて、誰が狙われるかもわからないみたいでさ〜」


と、まあこんな感じで最近の殺傷事件を推理するのに夢中になってる


「やっぱり影の組織とか、脱走した犯罪者とかかな⁉︎」


「んなわけないだろ。脱走したニュースもないし、影の組織ってそもそもなんだよ」


「ええ〜ありそうじゃ〜ん」


若干妄想も入ってきてるからかなり夢中になってるみたいだな…


そんなこんなで学校に近づいて行くと人だかりができていた


「なんだあれ?」


「行ってみようぜ勇世!」


「あっ、おい!待て!」


荷物を置いて走り出す浩介を追いかける。

浩介はその横でうまく見れずにウロウロしている


「遅いぞ勇世!早速だけど俺の代わりに見てくれ!」


「お前の荷物を置いてがなかっただけ感謝しろよ?」


「サンキューサンキュー!ほら、見てくれよ〜」


「たっく、しゃあねぇな」


とは言ったもののやはり人が多くうまく隙間から覗くしかなさそうだ。


「ん、どれどれ…え?」


隙間から見えた先には倒れている人…いや、人なのかもわからないが赤いかたまりが置いてあった


「ゆ、勇世?どうかしたか?」


「い、いや、あれって…」


浩介にうまく伝えられずにいるとサイレンの音が聞こえ、車が何台か来た


『全員その場から離れろ!通報があり調査のために来た!』


 拡声器でそう言うと警官が何人か出てきて辺りに集まっていた人を解散させる。


 結局、俺も浩介もそこで事情聴取を受けてしばらく話をすることになったが、後から来たことも含めて話したおかげか学校にはなんとか間に合った。


 二つだけ気になることがあるとすれば、何故あそこにいた人たちは誰も慌てずにじっと見ていたのか。

 そして、何故俺より背の高い・・・・・・・浩介が代わりに見てくれと頼んだのか






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜は明るく、人を刺す シャンガード @imkg

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る