第四話 頼もしい仲間

 都賀がこの世界にきてから四日目の朝。

「都賀さん。いまから働いてほしい」と天台が言った。天台の頼みを都賀が受け入れると、天台は都賀を車椅子に乗せ、歩いて五分の大きな蔵まで行った。蔵には木漏れ日が当たっていて、蔵の壁にはつるが巻き付いていた。中に入ると、年季の入った木の棚や、錆びた電灯の笠など懐かしい気持ちにさせるものがあった。天台は奥の隠し通路に都賀を連れていき、片引き戸のエレベーターに乗り、下降した。

「着いたよ。きょうから都賀さんはここで働くの」

案内された先はとても広い三十畳の和室で、そこには六人の男女が都賀を拍手で出迎えた。天台は話を続けて

「労働時間は一日八時間で、具体的にはここにいる六人と一緒に計画を立てるの。名付けて救い隊ね。あと、このことはまだ内緒ね。みんながパニックになるかもしれないから」と言った。

 天台は突然そんなことを言ったので、都賀は動揺した。しかし、すぐに状況を受け入れて、さっそく自己紹介をした。

「都賀一(つがはじめ)、十七歳です。いろいろあってこの地にきました。よろしくお願いします」

都賀は拍手で迎えられた。続いて六人の自己紹介が始まった。

「宮野木(みやのもく)、三十歳です。天台の補佐をしております」

落ち着いた声で話していて、シュッとしてる男性だった。

「高品和助(たかしなわすけ)、二十三歳。警邏隊隊長をやっている。よろしく頼む」

ゆっくり、力強く話していて、マッチョな男性だった。

「松波梨子(まつなみりこ)三十四歳です。町内会会長をやっています。これからよろしくお願いします」

はきはきとした声で、キリッとした笑顔が特徴的な女性だった。

「更科知代(さらしなちよ)、十五歳で、天台の身の回りのお世話をしています。みなさんよろしくお願いします」

緊張しているのか早口で話していて、見ていて和む感じの女性だった。

「亥鼻丈二(かいびじょうじ)十八歳です。子供会の会長を務めています。精一杯がんばります」

頼りになるお兄さん的な感じの男性だった。

「弁天次郎(べんてんじろう)十五歳です。子供会副会長をやっています。がんばります」

こちらは何かと面倒をみてあげたくなる感じの男の子だった。

 自己紹介が終わり、続いて会議が始まった。議長は天台で、まずこの地の状況について話し合った。都賀はこの村のことをまだよく知らない。そこで、リュックからノートを取り出して、メモをとり始めた。

「生活維持システムが限界を迎えている、上下水道の老朽化が深刻、電気が不足気味」などの課題が都賀の耳にはいってきた。

 会議は一時間五十分で終わった。部屋の掛け時計は午後一時二十分を指していた。軽い休憩をとり、そのあと計画を立てた。村にいる五百三十五人全員を地上世界に移す。これが計画でとりあえず決まったことだった。それから毎日、どんな人を優先的に地上世界に運ぶのか、地上世界で何をするのかなど、多くのことを話し合った。



 都賀が働き始めてから二か月が過ぎた。どうやらこの村にも四季はあるらしい。朝晩は涼しく、日中はカラッとした暑さがあるので、いまは秋なのだろう。

 計画は順調に進んでいて、きのうは輸送機が完成した。輸送機は隊員たちみんなで知恵を出し合って造ったものだ。広さ六畳の部屋の周りに椅子を並べ、中央に荷物を置く場所をつくったもの(収容人数二十人)を、縦に十個積んだ構造にした。これなら三回に分けて運ぶことができる。

 一週間後に村のすべての人に詳細を発表するそうだ。都賀の足のけがはすっかり完治していた。

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