第二話 探索
目が覚めて都賀は驚いた。辺り一面荒れ野が広がっていて、さっきまであったはずのチャペルがどこにもなかったからだ。そのうえ、風が強く吹いて土や砂が舞っていて、遠くまでは見えない。都賀は焦った。突然の出来事に都賀は理解が追いつかず、かえって冷静になってしまった。
都賀はもう一度辺りを見回した。都賀がいつも使っている通学リュックだけはなぜかあった。都賀が通っている学校では、礼拝時は星書と讃美歌以外は基本的に持ち込まない決まりになっている。もし都賀が単身でこの地に来たのなら、チャペルと教室は離れているので、リュックが巻き込まれることはないはずだ。考えても答えが見つからないので、都賀はモヤモヤした気持ちになった。
気持ちを切り替えて、非常に危ない状況であると都賀は判断した。都賀はこんなときのために、普段からポケットにサバイバル手帳を入れている。都賀は手帳を取り出し、何かしらのヒントを得ようとした。「自然災害から身を守る方法は、いまはあまり役立たない。だけど、登山時の疲れない歩き方や荒れ野での水の確保の仕方など、いまの状況下で役立つ情報もある」
風が吹きつけている荒れ野から身を守るため、都賀は近くにあった大穴に移動し、一夜を過ごした。
次の日、都賀は空腹で目が覚めた。リュックにお弁当が入っているのを思い出した都賀は、急いでお弁当のフタを開け、一気に口に詰め込もうとした。だが、都賀は手帳に書いてあったあることを思い出した。
『登山は非常にカロリーを消費し、カロリー切れは体のエネルギーがなくなり動けなくなる可能性がある。(中略)また、一度に多く食べるよりも、こまめに食べるほうがエネルギーが持続できる』
都賀はお弁当に入っている白米の三口分を口に入れて、ドロドロになるまで嚙み、飲み込んだ。体が元気になった都賀は一旦大穴から出て、辺りを見渡した。風は弱まっていてきのうより見通しがよく、遠くのほうまで見えた。
すると、都賀はあることに気づいた。昨夜寝た大穴は一つだけではなく、周囲に数え切れないほどあったのだ。穴の一つ一つを見るとどの穴も、縁がきれいな丸で、大きさや深さもほぼ一緒だった。「荒れ野などの自然界にある穴は縁がいびつで、大きさや深さもバラバラだ」都賀は何かがおかしいと感じた。
それはそれとして「体力があるうちにもっと過ごしやすい場所に移動しよう」と思った都賀は、もう一度遠くのほうを見た。うっすら街の建物らしき影が見えた。都賀は不思議とやる気が出てきた。穴に戻り、荷物をまとめ、穴から出てそこに向かった。
一時間歩き、やっとそこに着いた都賀はきょとんとした。建物はあるにはあるが、人がまったくいなかった。それどころか生活している雰囲気もなく、不気味であった。急に恐ろしさを感じた都賀は、街中を「どなたかいませんか?」と叫びながら走り回った。下り坂に差し掛かったところで都賀は転び、三十メートル先の底が見えない穴に落ちていった。都賀は気を失った。
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