第16話 別れ
花菜ちゃん達と話した後、隼人に電話した。
「はい。もしもし。」
怒ってる様子もなく、いつも通り優しい隼人の声が響く。
「花菜ちゃん達と話したよ。仲直りできた。ごめんね、嫌な気持ちにさせて。」
「そっか。よかった。」
「それでさ、」
泣きそうになる。声が震える。
「うん。」
隼人は、多分これから私の言いたいこと、全部わかっているはず。
わかっていて、私から切り出すのを待っていてくれた。
「隼人、私のこと信じられる?」
隼人にカッとなってしまったのは、悲しかったから。
『信じてもらえななかったこと』じゃなくて、
『それが隼人だった』のがショックだったんだ。
確かに付き合いが長いのは花菜ちゃんで。
でも、彼女として私は隼人に私を信じてもらいたかった。守ってもらいたかった。
「もちろん。」
裏切ったのはお互い様。私だって隼人を利用してた。
それが一番悔しかったのかもしれない。
隼人は優しい。でもさ、
「正直に言いなよ。」
仮にでも私彼女だよ?隼人が考えてること少しはわかる。
「正直言うと、花菜もりあもどっちを信じていいか分からなかった。」
「そっか。ねぇ隼人、このまま続けられる?私はね、隼人に信じてほしかった。」
数分の沈黙が続いて、隼人がいつもより小さな声で呟いた。
「別れよう…俺、初めからりあのこと好きじゃなかった。ごめん。
彼氏として何もできなくてごめん。」
もう十分。
隼人、ありがと。この3カ月、苦しい時も寂しい時も、あなたの笑顔に救われてた。 隼人はどうだった?少しは幸せだった?
最初のころ私は確かに隼人に惹かれてた。今ならいえる、ちゃんと好きだった。
無口だけど優しいとこも、全然続かない会話も、時々見せる無邪気な笑顔も、1度も合わない視線も好き。そうじゃなきゃ、あんなに努力できないし、好きになってほしいなんて思わない。ときめいたりもしない。
でも、それは、隼人の優しさを利用してただけだった。
なんで隼人じゃダメだったんだろう。今でも分からない。
うまくいってないこと、ずっと前から分かってたのに、
苦しくてもここまで別れなかった理由。
翔くんから逃げる理由が欲しかった。私のこと見てくれる人が欲しかった。
寂しさを埋めたかった。自分勝手すぎる。
でも、伝えさせて。最後だけは後悔しないように…
「私の方こそ、何もできなくてごめんね。」
体が震える。涙で視界が滲んでく。 でもこれだけは伝えなきゃ。
「隼人、今までありがとう。」
今まで素直に言えなかった”ありがとう”。たった5文字だけど私にとってはケジメの言葉。今までの想いのすべて。
ねぇ、隼人。私泣かなかったよ。私に泣く権利なんてない。被害者ぶる権利なんてない。最後に好きじゃなかったって言ってくれてよかった。
好きだったって言われたら私きっと自分の事責めてたと思う。許せなかったと思う。
私のこと思ってくれてる人を傷つけただなんて私最低だ。
隼人の本心は私には分からないけど、隼人は最後まで優しかった。
別れて数日後。
部活に行く途中、隼人の友達に会った。
「うん、お疲れー!」
「隼人さ、お前と体育祭の写真撮ったって顔真っ赤にして言ってたぞ。」
え?隼人が?
「隼人があんな顔するの俺初めて見た。」
「まぁ頑張れよ。」
隼人の友達はすぐに去っていった。
隼人、私のこと少しは気にしてくれてたんだ。
嬉しかった。、一瞬だけでも両想いだった?
目に溜まった涙が流れた。
隼人…私たちなんでダメになっちゃったの?
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