第9話 人気の代償

その頃、SNSで匿名で悪口を書かれるようになった。

『可愛くないのに調子乗るな。』

『太ってるのわかってる?全身の写真見せて 』

特定されないことをいいことに、言いたい放題。

毎日送られてくる通知を見て、ため息をつく。

正直もううんざり。そんなの一番自分がわかってる。

学校では気にせず明るく振舞ったけど、あることないこと好き勝手に書かれて広められて腹を立てる日々。そんな自分が嫌いになる。


もう一つ、困ってること。

「あのさ、りあちゃん翔くんと仲いいよね?連絡先教えて?」

「翔くんの写真送ってほしい!」

他クラスの子から話しかけられたらだいたいこの話。

「どんな子が好きかな?聞いてくれない?」

「翔くんの好きな髪型何かな?切ろうか迷っててさー。」

「彼女いるのかな?」

「紹介してよ。りあちゃん、翔くんと仲いいじゃん。」

うるさい。うるさい。そんなこと私に言われても困る。

翔くんとはクラスメイトなだけで、必要な連絡するだけ。

確かに翔くんは人気者で、私があの子たちの立場でも、好きな人のことは知りたい。その気持ちも死ぬほどわかる。

でも、私だって、頑張って頑張ってやっと話せるようになったのに。

正直、誰にも教えたくない。

これが本音。

でも、私には隼人がいるから、そんなこと言える立場じゃない。

だから、

「できたら、聞いてみるね!」

全然絡んだことない子たちだから、目の敵にされないようにそう答えた。

「自分で聞きなよ。」

って言いたいけど、こんなこと言ったら、また何か書かれるかもしれない。

傷つくのが怖い。

「ありがとー!!りあちゃん好き。」

嘘だよね、わかってる。私のこと好きなんかじゃない。

でもどこから噂が漏れるか分からないし、誰も信用できない。

「ありがと。」

作り笑いで答えた。

あの子たちは、私のことが好きなんじゃない。

翔くんと繋がりたいだけ。

―ピコン

隼人からだ。なんだろ。

『金曜日、花菜の誕生日だから、映画いってきていい?』

なにそれ?なんで?私が誘ったとき断ったじゃん。

しかも誕生日に?

言葉を失った。

花菜ちゃんは私の学年のミス。とってもかわいくて、私も初めて見たときモデルさんみたいと思った。スタイルもよくて、誰もが憧れる美少女。

隼人とは 1 年生の時クラスメイトだったみたいで、最近は花菜ちゃんともよくおしゃべりしている。葉月ちゃんを通して仲が良くなったらしい。

『いいよ。楽しんできてね。』

友達だし、誕生日だし。

それに、私たちが付き合ってることは、知らなかったかもしれないし。

ただの友達。私は彼女、特別。何度も言い聞かせて自分を納得させた。

それに、

『男女の友情が成立するか』

そう聞かれたら、私ももちろん”イエス”と答えると思う。

いくら彼女だからって、友情関係に介入する権利はない。

だから、寂しかったけど、行かないでほしいって言えなかった。

匿名のできていた沢山の質問の中で見た、

『隼人好きな人いるよ。』もずっと、気になってた。

え、好きな人って何?私以外に?隼人に限ってそんなことないと思いたかった。私は特別とか自惚れてるわけじゃないけど、ただ信じたかった。

でも、最近花菜ちゃんと葉月ちゃんとよく話してる隼人は私といる時よりもずっと楽しそうで。それに、花菜ちゃんも彼氏と別れたばかりで、

「あの二人いい感じだよね!」

って最近よく耳にするから、本当はただの友達だなんて思えなかった。

流石にタイミング良すぎじゃない?

隼人はそういうつもりじゃなかったとしても、花菜ちゃんは?

聞けなかったのは、怖かったから。

崩れていく関係。取り繕っているけど、

この関係はいつか壊れると悟ったから。

でも、今は別れたくなかった。

それだけ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る