✳︎ 血色の声
憎い、憎い憎い憎イ憎イ憎イ!
もうアイツは死んだはズなノニ!
私は悪クナイ悪クナイ悪クナイ悪クナイ……
全テの元凶ハアイツなのだかラ!
捨てなければ良かった。
私が自分の手で処理していれば良カッた。
そうしてイレバ安心できたのニ。
ドウシテ死んでも私を苦しめルノか。
最早アイツの存在自体ガ忌ワシイ。
殺シテモ殺シ足リナイ。
今手元にアイツがいたのなら、
手足をもいで
髪を引きちぎって
爪を剥いで
皮膚をめくって
泣いても、鳴いても、ナイテモ!
拷問にかけてやる。
私の愛をあの人に。
私の愛を捧ぐために。
だってそれがあの人の望みだもの。
…………アイツハ生キているニ決マッテイル。
デナケればコンナニ不安にナルはズガナイ。
私ノ幸セノ為ニハアイツヲ殺スシカナイ。
あの人のノゾミのタメニハ殺スしカない。
何としてもあの森へ入ってやる。
異端だろうと人間だろうと魔術師だろうと、
私を止めることはできない。
次ハ息ノ音ヲ止メテヤル……
待っていろアリス!
少女は夜中に目を覚ました。
なんだか嫌な感じがしたけど、何かは分からない。家の主は今はいないようだ。
しんと静まり返った家、外から何かが鳴く声がする。ここが悪名高い「異端の森」か。もっと恐ろしいところなのかと思っていたが、どうなのだろう、あまり怖くはなかった。
あの人の家だから?
少女はぐるりと家の中を見渡すと、自分が今までベッドで寝ていたことに気づいた。
(良いのかな、こんな、私みたいなのが)
思いのほか寝心地のいい、ふかふかの布団。さっきまで自分が寝ていたからまだあたたかだ。顔をうずめると、優しいあの人の匂いがした。あの人は優しく頭を撫でてくれた、……たぶん。だから怖くない。
「もう少しだけ眠って、あの人が帰ってきたらお返ししよう」
そう、誰ともつかない相手に言い訳。そしてもう一度ベッドに上がって布団にもぐる。だってこの魅力にはあらがえない。
眠気にまぶたが降りていく。
夜はまだ長い。
もう少しだけ、少しだけだから……。
そう思いながらも、疲れきった子供の眠りはぐっすりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます