第3話 住処
地下3階には自然に作り出された空間ではなく、切り石を積み上げ人工的に整えられていた。
壺や木箱と言った小物から、家具が置かれている。
小部屋に並べられた壺が邪魔で奥に見える通路に行くことが出来ない。
洞穴兎は、行く手を阻む壺を押していた。
「なんて邪魔な壺なんだ」
「おい、勝手に動かすなゴブ!」
子鬼達が壺の中から顔を出す。
紫色の顔で額に小さな角が生えている。
長く尖った耳が特徴的だ。
「奥に行きたいんだ。
頼むから通してほしい」
「嫌だゴブ!」
子鬼は性格が悪く、悪戯好きだという。
洞穴兎が困った顔をすると子鬼達は笑い喜び始めた。
「ニンゲンと隠れんぼしているんだ。
このままだ負けちゃうな」
子鬼達は顔を見合わせて相談を始めた。
子鬼は特に人間を困らせるのがご飯よりも好きなのだ。
子鬼達は壺を除けると洞穴兎を奥へと案内した。
暫くすると何かを引きずる音が聞こえてくる。
あの女がやってきたのだった。
壺を持ち上げると放り投げ砕いた。
中にいた子鬼達は驚いたが直ぐに女に襲いかかった。
子鬼は相手が弱いと見て勢いづき強気になっていた。
「たった一人だゴブ、やってしまえ!」
女が棒を一振りした。
たったそれだけの事で子鬼達は魔石へと姿を変えたのだった。
「魔物の気配がする……、出てきなさい」
女の言葉は虚しく響くだけだった。
女は壺を一つづつ持ち上げ壊し始めた。
奥の部屋へ辿りついた洞穴兎は、後ろから聞こえる破壊音に震えた。
そこは宝箱が一つ置かれているだけの行き止まりだった。
「もしかしてここで終わりなのか?」
「ククッククッ、見ての通りゴブ」
「下の階層に行きたかった……」
「諦めが早くてつまらないゴブ。
実はこの宝箱は二重底になっている」
子鬼が宝箱の底を外すと、地下へ続く階段が現れた。
洞穴兎は降りていく。
「ここでお別れゴブ。
さて俺はここで待つか」
子鬼は底を元に戻し、宝箱の中に潜み待つ。
暫くすると女がやってきた。
鍵穴から女が祈りを捧げ何かブツブツと唱えているのが見える。
子鬼は今か今かと時が来るのを待った。
軋む音を立て宝箱が開く。
「ご褒美だゴブ!」
子鬼は石のナイフを女に向けて突き出した。
完全な不意打ちだった。
だがその刃が届くことはなく、子鬼の体を木の棒が貫いていた。
「
子鬼の体が薄っすらと青く光を放っている。
女は魔法が使えたのだった。
「無念ゴブ……」
魔石が転がる。
その音が何時もと違うことに女は気づく。
なにか空洞を感じさせる軽く弾く音だ。
普段なら調べることはない宝箱の底を叩く。
底が割れ階段が顕になった。
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