第36話 ハーレムハリケーン
美咲&友紀「「タオル係ー!」」
夕「おっ?」
楓「夕君ストップ!」
タッタッタッタ、バタン
楓「それはダメー!」
美咲&友紀「「いじわる!」」
翠「さすがにおばさんも嫁入り前の娘さんにうちのタオル係は容認出来ないわね。」
美咲&友紀「「はーい。」」
そんなやり取りが脱衣所から聞こえる。タオル係と呼ばれるとついつい体が反応してしまうな。危ない危ない。
夕「おっと。どした泉。」
ソファに腰掛け、高志の操作するデルダの伝説というゲームを見ていたら、急に泉が膝の上に乗って来た。
泉「お兄ちゃん。さっきおねーちゃんだけ連れてコンビニ行ったの良かったよ。ちょっと寂しかったけど。」
夕「あ、高志その見張り先倒さないと仲間呼ばれるぞ。イテテッ」
高志「でも弓矢ねーから。どーする?」
夕「マジか。じゃコソコソ爆弾作戦だな。さっきみたく。イタタタッ」
高志「らじゃ。」
夕「いや、ツネるな泉。聞いてるって。別に褒められるような事か?僕がしたかっただけだよ。」
泉「でもあんなの嬉しいよ女は。お兄ちゃん。妬けた。私の中の女が傷ついたよ。キスして。」
高志「泉ちゃんよー。そんなんじゃ彼氏できねーぞ。」
夕「黙れたかにゃん。マイエンジェルに彼氏とか言うな。コンセント抜くぞ。」
高志「掃除中のママか。あとたかにゃんは言うな。二度とな。」
泉「ねぇちゅーは?」
夕「やだよ。だってさっき女出してきたもん。キスとか言ってきたもん。」
泉「違うの!だって寂しかったんだもん!お兄ちゃんはさ、おねーちゃんのだよ?分かってるよ?けど最近まで私だけのお兄ちゃんだったんだよ?うっうっ…」
夕「泉ぃ!ごめんよぉ!はいちゅー。」
泉「もっかい。」
夕「ちゅー。」
泉「ひひっ♡おにちゃん♡」
翠「楓ちゃん。ごめんねあんなんで。」
楓「ふふ♡泉ちゃん!おねーちゃんともちゅーしよ♡」
泉「おねちゃん♡」
翠「いい家庭だわ!きっと!」
高志「いや、どーすかね?」
美咲「あー素敵♡混ざりたい!」
友紀「泉ちゃんが妹とか最高だよね!私も甘やかしたい♡」
高志「マジか。」
夕「あ、ダメだそこやっぱ弓ないと詰むわ。」
高志「マジか。」
…………………
就寝前 、泉の部屋にて
泉「さすがに4人だと狭いね。ごめんね。」
友紀「全然いーよ!ねぇ泉ちゃんのベッドに一緒していい?」
美咲「えー。私も狙ってたのにー。」
泉「ダメだよ!隣りはおねーちゃんだもん!」
楓「わぁ♡嬉しい♡」
友紀「あぁ。いーなー家族。」
美咲「ねぇ楓ー実際さー家庭に入るってどーお?」
楓「いやー…普通に家だね。神田家が特殊なのかもしれないけれど。」
友紀「でもお母さんもいるしさー。緊張したりさー居づらいとかない?あ、泉ちゃんごめんね。」
泉「いいよ。全然。ただ私からすればおねーちゃんがいるのが普通なんだよね。マジで。そりゃさっきみたくさ、お兄ちゃん取られて寂しくなる時もあるけどさ、でもおねーちゃん居なくなる方がイヤ。絶対イヤ。」
楓「嬉しい…泣きそうだ…。ちょっと抱きしめるから友紀ちゃん返事待ってね。」
ぎゅっ♡
楓「ごめんごめん。えっと緊張ね、緊張。そりゃ最初はあったよ。けど本当に最初だけ。なんなら最初の挨拶の時だけだよ。それから3週間?ほぼ一緒だけど、楽しいだけだね。」
美咲「うわー凄いね。確かに夕も泉ちゃんもおば様も自然体だけどね。私は出来るかなー。自信ないなー。」
友紀「だねー。想像出来るのは夕君の彼女くらいかなー。泉ちゃんとは友達だけどさーやっぱ家庭に入れば変に意識しちゃってうまく行かなそう。」
泉「言ってる事は分かるな。普通そうだよねきっと。だってあくまでも好きな人は彼であって家族じゃないもんね。ただね、おねーちゃん見てるとね。分かるんだけどね。おねーちゃんはね、お兄ちゃんに関わるもの全てが好きなの。大事に大事に思ってくれるの。私も、ママも。最初っからそうなの。私もママもそれをすぐに感じた。だからなのかな?居て当然って思うようになるまで1日くらいしか掛かってないんだよね。」
ぎゅーっ♡
楓「ありがとう泉ちゃん。あのさ、私はね、2年前に夕君の彼女でいた一週間と、2年間…半年寝てたから1年半か、その間は本当に夕君の事しか考えてなかったの。正直彼女がいてもおかしくなかったし、いなくても私を彼女にしてくれるのかは分からなかったけど…。ただ、私の願う未来には絶対に夕君がいてさ、その為に私は生きたかった。それが無かったら…たぶん私はまだ夢の中か、この世にはいない。幸せなことに、私は生きてる。彼に生かされているし、彼のために生きたい。…きっとそんな想いがあるから、彼に関わるもので辛いことや嫌なことなんて一つもないし、ありえない。全部全部が愛しいと思えるんだよね。ふふっ♪でもこれって例外なパターンだから、誰にも参考にはならないよね。アハハッ」
美咲「えっと…ちょっと楓…半年寝てたって…何?本当に本当にヤバい病気ってこと?」
友紀「あ、楓ちゃんごめん、私も聞きたい。後で話すけど、私達楓ちゃんと本当の意味で友達になりたいと思っているから。だから、聞きたいな。」
楓「え、友達じゃなかったの??かなりショックだけど…。でも友達になってくれるなら…話すね。…私のした病気はね、生存率が10%以下だったの。運良く手術は成功したけれど、ずっと昏睡状態でさ、奇跡的に目覚める事が出来たのは半年経ってからだった。これだけ昏睡が続けば、一生目覚める事はほぼ無いんだけれど、ある日、蝉の声で目覚めたんだ。あ、手紙で夕君がセミって呼ばれてるーって言ってたから…勝手にそう思っているだけだけどね…。私が二人に後悔しないようにって言うのはさ、この病気を経験したからなんだ。生きてるってさ、凄い事なんだからね♪」
二人は驚き、涙を流している。
美咲「それは…夕が起こしてくれたんだね…良かったね楓…頑張ったね…」
友紀「楓ちゃん…話してくれてありがとう。良かったね、良かったね。」
楓「ありがとう。重くなっちゃってごめんね。それより、本当の友達ってなに?」
友紀「うん…この間ね、夕君から『楓ちゃんを特別だと思うな、僕を通して見るな、楓ちゃんはただの女の子なんだよ?』って言われたんだよね。その時に私達はさ、楓ちゃんを夕君の女で、高い壁の存在とばかり思ってて、楓ちゃん自身を全然見て無かった事に気付かされたんだ。そして、夕君を愛する楓ちゃんに単純に惹かれている自分達に気付いてさ、一生の友達と言えるような関係になりたいって思ったの。認め合って、遠慮がなくて、強い絆みたいな関係に。だから…改めて宜しく。」
美咲「うん。私も。私さ、楓好きなんだわ。嫉妬もあるけどさ、あんた好き。魅力的。だから宜しく!」
楓「そっか。単純に嬉しいなそれ。ありがとう!じゃ二人とも、改めてよろしく!でも…ふーん…夕君が私を守ろうとしてくれたんだ…♡めちゃ嬉しい!!」
美咲「それなー。めちゃ羨ましかったわ。てかさーあんたの命がけの想いとか、家族に受け入れられている所も改めて知ったけどさー…何で私まだ夕好きなんだろ?バカなのかな私。」
友紀「バカなんじゃない?楓ちゃん、もうほんっとこんな私達でごめんなんだけど、それでも、それでも夕君の側にいたいし、構ってほしいの。それって…どう思う?」
楓「どうって…でもバカになれる程の相手って…そんなにいるのかなぁ?私は夕君初恋だから分からないけれど…。かなり凄い事のように思うよ?私はフィアンセだから、夕君に関しては上から発言するけれど、それでもいいなら、二人共さ、とことんやりなよ。私と夕君にならいくらでも迷惑掛けていいからさ。何があっても好きな人がいるなら、進むべきよ。私を超える自信が出来たのなら、その時は受けて立つから。」
美咲「…何であんたってそんな格好良いワケ?なんならあんたに惚れそうなんだけど。はいはい、分かりましたよ!上から発言?上等よ!でも私は媚びないからね!友達だし、仲間だからね。けどね、もし、夕が私に惚れたら知らないからね!よろしくぅ!」
友紀「全くさー清々しい程にボスだよね。今にも下に付きたくてウズウズしちゃうよ。けどね、私はもう二度とボスとは呼ばないよ!ライバルにはまだなれないけれど、友達だからね。ふふっ。楓ちゃん、この間はちょっとキス出来たんだよ。次の目標はちゃんとしたキッスなんだよ。止められるもんなら止めてみな!よろしくぅ!」
楓「面白い。本当に面白い。泉ちゃん、夕君の周りはなんで変な人ばかりなの?私も変なの?あのね、夕君に関してははっきり言ってあなた達は邪魔者よ。でもね、楽しくて仕方ないよ!夕君が惚れたら?ちゃんとしたキッス?望む所よ!よろしくぅ!」
泉「うん。うん。変かもねー。だけどね、お兄ちゃんに関しては私だってバカなんだよ!皆になんか負けてないんだよ!でもね、そんな妹から見てあなた達は最高だよ!おねーちゃん!私も仲間に入れて!よろしくぅ!」
楓「もちろん!てか元より仲間よ!では、どうしようもなくバカで、愛すべき同志達よ、これから夕君を襲いに行こうと思いますが、準備は出来ていますか??」
美咲「キターーー!」
友紀「はいっ!はいっ!」
泉「いつでもいいにゃん!」
楓「よろしい。では、よーい。ドーン!」
……………
前代未聞の嵐が来た。
後にこの夜を夕はそう語った。
『ハーレムハリケーン』
窓際に追いやられた高志は震えながらそう呟いたという。
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