第47話 体育(女子編)

皆様ごきげんよう、水野 遥です。

今私達は体育の授業中です。

来週からは体育祭の準備が始まりますが、今日はまだ通常の授業です。

私達の学校は人数が多く、1クラスずつではグラウンドや体育館の使用が間に合わなくなる為、2クラス合同で体育の授業を行います。

私達のA組とB組各クラス20名、計40名の女子が体育館に集まっています。

午後の2コマを使い、冬休み前に行う創作ダンス発表会に向けてのチーム決めと、チーム毎のテーマ・振り付け・曲についての話し合いを行っています。

1チームは4名〜10名までと決まっているので、私達の場合はハーレム部の面々で即決まりではあったのですが…少し…モメておりまして…


美咲「やだよ、ズルいじゃんそんなの。」


楓「でも劇団四季折々は気に入ったんでしょ?じゃ仕方ないじゃん。」


友紀「そーだよ!格好いいって言ったじゃん!」


遥「春は譲らないからね!」


はい。私達はまずチーム名を劇団四季折々と決めたのですが、その担当季節について美咲ちゃんが文句を言っています。

別にどーでもいい事ではありますが、私にも譲れない理由もあったりして…取り敢えず、担当季節については以下の通りです。


楓 (秋): モミジから秋を連想(植物名のカエデはモミジとも言うので)


友紀(冬) : 雪から連想


遥(春) : ハルカのハルから連想


美咲(夏) : あまり



美咲「あまり、って。私の名前、美咲だよ?美しく咲くんだよ?春でしょ。そんなもん。」


遥「夏でも花は咲くでしょ?いいじゃない。」


美咲「大体さ、あんた水野じゃん?水ってば夏じゃない?夏だよ。そんなもん。」


友紀「さっきから『そんなもん』が気になるんだけど。てかさ、美咲の名字だって南野(みなみの)じゃん?南ってば夏だよ…そんなもん。うん。言いたくなるね。ごめん続けて?」


遥「じ・つ・は、私はね、神田君にね?笑顔がね、あのね、ふふっ♡ふふっ♡春みたいだねって♡言われちゃったんだー♡だから春は譲れませんよ。そんなもん!」


楓「え?!めちゃ素敵!!いいなぁいいなぁ…そんなもん。」


美咲「ど、ど、どーゆうこと?!そ、そ、そんなもんプ、プロポーズじゃん!」


友紀「そこまでじゃなくない?!確かに言われたいよ?羨ましいよ?美咲ちゃん変なとこピュアだよね。そんなもん夕君にしてみたら挨拶だよ挨拶。」


楓「そうよ、プロポーズな訳ないでしょ?そんなもんさ、ってもう『そんなもん』縛りいいよ!めんどくさい。いい?プロポーズなんかじゃないからね!遥ちゃん、違うからね!」


遥「いや、だいたい私は勘違いしてないよ?!美咲ちゃんが変なだけで。あと楓ちゃんプロポーズに反応しすぎじゃない?怖いよ!」


美咲「あっそ。ならいいけど。あと私別に変じゃないし。てかさ、私さ、『美咲といたら退屈しないね』って言われた事ありますー♪プロポーズ?って聞いたら違ったけど。」


友紀「はいはい。私なんて『うなじ見てたら授業終わってた。』って言われ事ありますー♪それからは度々うなじ出してますー♪」


遥「ハイッ!ハイッ!私、今朝ね、『え?味噌汁にパパイヤ?飲んでみたい。今度作って。』って♡言われた!まだ採れたてホヤホヤの言葉でーす♡」


美咲「え、それってプロポ、、、」


友紀「違うわ!!てかふつーに興味あるやつそれ。」


楓「あーもう!イライラする!何なのよ皆してさ!私なんて今日『ブラジャーネットに入れるのメンドイからさ、脱いだらすぐ入れて。』って言われたんだよ。泉ちゃんやママンにはそんな事言わないのにだよ?おかしくない?」


遥「てか下着まで神田君に洗わせる関係なんだね…そうだよね…。そっか……入れなよ……入れなさいよ!!ネットくらいさ!!羨ましいだけだしそんなエピソード!!」


友紀「本当だよ!私だったら言うね。『夕君に見てほしいからワザと入れないよ♡』ってね!ぶりぶりだろーがあざとかろーが言いますよ私は!絶対夕君そんなの好きだもん!」


美咲「わかる!私なんて『ゆーたん脱がせて♡』から始めちゃうもんね!いーよ、いーよ、楓さ、せいぜい不幸風自慢してればいーさ。あんたはアレだよ、婚約者の座に胡座(あぐら)をかいてさ、そーゆう小さい幸せを見逃してればいいのさ!」


楓「くっ…た、確かにそうよね…慣れって怖いわ…。私がバカだった!ネットに入れられる幸せを噛みしめるわ!皆には礼を言う。ありがとう。ところで、夕君があざといの好きなのは本当?」


友紀「それな。間違いないよ。だって夕君はね…いや、やめとく。あなた達に教えるメリットないもん。頑張ってね。いや、頑張らなくていいケド。」


美咲「……ラーメン食べる時さ、髪を耳にかき上げるの好きって言ってたな…しめしめ。」


遥「もしかして今の心の声?!全部言っちゃうんだね。美咲ちゃんて本当憎めないよね。とりまメモりました。」


美咲「しまった!あ、思い出した!髪で言うとさ、前一緒に帰った時さ、帰宅中のOLとすれ違ったのね?そん時さ、後ろで一本に縛ってた髪のゴム取ったんだ、で頭振るじゃん?髪ファサるために、それをさ、夕、見てた。そう!見てた!あれ好きなんだきっと!やろ!後でやろ私!っあ!てゆーのは嘘!全然見てなかった!カラス見てた!カラス!」


楓「美咲ちゃん、あなたヒントマン?めちゃ有り難いんだけど。助かるわー。」


友紀「マジ黙っとけよ美咲ちゃん。ところでさ、今思ったんだけどさ、劇団四季折々って何?ダンスだよ?劇団いらなくない?四季折々で良くない?」


遥「話題変えたよね?あからさまに話題変えたよね?友紀ちゃんあなた腹黒いとこあるよね。まぁいいけどさ、そもそも、チーム名決める時間じゃないのよね。」


楓「もう四季折々でいーよ。夕君のフェチの方が大事だし。」


友紀「いや、その時間でもないよ?」


美咲「私、春がいいんだけど。」


遥「振り出しに戻った!」



その後、美咲は夏担当に無理やり決められた。ちなみに、友紀の名字は春野(はるの)なので、実は一番春にふさわしいのは友紀だったりする。

あと、教室でやたらと髪をファサる女が4人いたのは言うまでもない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る