第46話 体育(男子編)

「セミ、ナイスアシスト。」



「あぁ。あと1点、いけるか?」



「お前次第。」



「なら、2点だな。お前をヒーローにしてやるよ。」



「ははっ、頼んだぞ、相棒。」



パンッ!




体育。



陸上競技、柔道、器械体操、球技。



うちの高校に水泳は無いが、僕、そして高志は数多ある種目においても特に苦手なものはない。



特に二人共球技は得意で、中でもサッカーに関しては頭一つ飛び抜けていると自負している。



特に強豪校ではなかったが、僕達二人は中学時代にスポーツ推薦の話があったくらいには実力があった。



そんな僕らにとって体育でのサッカーなんてヌルゲー。



重課金プレイヤーが初心者ギルドで無双しているようなもんだ。



そこで、先程の会話を思い出してほしい。




そう。



完全に僕達は調子に乗っていた。



有頂天、とも言う。



舞台は全国大会決勝と勘違いしている。



サッカー漫画の主人公と思い込んでいる。




もう、哀れだ。



何が哀れかって?



だってもう…試合終わってんだもん。



先程のセリフの直後にね。



ははっ…ウケる。




『パンッ』



ハイタッチの音は虚しく響いた。




「な、なーんてね。セミ、格好わるー。プププッ」



「へへっ、高志ったら変なの。『お前次第』なんてさ、へへっ。」



「よ、よせやい。この『いけるか?』星人め。」



「はー?黙れよヒーロー。」



「は?まだもらってませけど?いつくれんのかな?2点。」



「な、なんだよ!お前だってノリノリだったじゃん!ねぇねぇ相棒って誰かなー?会いたいなー君の相棒に。」



「くっ、テメー!もう許さねー!表出ろやー!」




他生徒「…いや、二人とも出ろよ。いつまでいんの?次の試合始まっから。」




「「サ、サーセンしたぁー!!」」





グラウンド脇に腰掛ける二人。




「高志、高志、ここ表、ククッ、グラウンド、ここ。既に外だよ。表出ろっってククッ。」



「うるせーなマジで。つかよー思わず謝っちまったけど、息合ってたな。ただの隣りのクラスの奴なのにな。」



「そりゃキミー、僕らが何度謝ってきたと思う?鬼畜な先輩達相手にさー。体に染み込んでますよ。洗っても落ちませんよ。」



「だなー。グラウンドってだけで気合入るよな。」



「ですね。タイガー&ホースってやつです。」



「トラウマな。」




??「おーい。」



呼ばれて振り返ると、三好、加藤、石田の3人のクラスメイトが駆け寄ってきた。




加藤「いやーセミ、お前に教わりたい事あってさー。」




夕「カトゥー。どーせアレでしょ?前言ったじゃん無理だって。」




加藤「いや、何でもいいんだ。最近はセミと全然絡めないじゃん?話したいんだよ俺らは。」




石田「そうそう。お前のハーレムにゃ近寄れないからさ、体育の時くらいしかないのさ。」




三好「セミちゃん、分けてとは言わない。だって無理だもん。出来上がっちゃってるもん君達。だからせめてヒントくれ、な?モテたいのよ。」




夕「確かにね、最近はなかなか身動きとれないもんね。僕もカトゥ達不足と思ってた。だけど三好、その件はさ、無理だって言ったろ?君ら妹いないじゃん?」




石田「だから何なのその理屈。お前の中じゃ妹いない奴はモテないって思われてんの?お前や飯塚ほどとは言わないけどな、俺らだって顔はまぁまぁと思うよ?」




夕「いや顔は置いといてさ、僕なんて今までモテた事なかったもん。最近はヤバいけどね。だからね、僕がモテるとしたらね、妹を溺愛している以外の要素がないの。モテたかったらまず妹を愛せ、としか言えないワケ。高志に聞きな?コイツはモテるよ。」




高志「いや、俺はさ、、、」




加藤「いーよお前の話しは。全然参考になんねーよこのハンサムが。顔だけアカデミー賞が。」




高志「面白い。加藤、今まででお前の例えが一番面白い。そして一番ムカつく。」




三好「しかしこの前の委員長達は凄かったね。恥ずかしながワタクシ震えましたよ。」




石田「俺も震えた!向井さんの迫力なにあれ?俺今だに目を見れねーよ?あんなに可愛いくせに怖かったなー。セミ知ってるか?男子の中じゃ極道の妻と呼んでるからね。」




夕「マジか…僕の女神をそんな風に……ま、でも言い得て妙だね。僕に関する事になると般若が浮かび上がるもんね。」




加藤「あん時のセミは影薄かったなー。まぁ俺がセミの立場なら逃げてたけどね。アハハハ」




石田「なぁセミー、ハーレムとか実際ラクじゃないだろ?どーなん?」




夕「んー。本来ならさ、その中から相手を選ぶやつじゃん?ハーレムって。けどさ、僕は楓ちゃん一筋だし、このまま想いを持ち続けてくれてもさ、最終的な結果はもう分かってんだよ。誰もが。ただ、彼女達は苦しむのを覚悟してるからさ、それまでは出来るだけ苦しさも楽しさも共有しながら過ごしてさ、思い出たくさん作っちゃおっかなー?って考えてる次第です!宜しくお願いします!」




加藤「う、うむ。頑張りたまえよ、我社は全力で君をバックアップしていくよ。」




三好「だねー。ワタクシも協力する所存です。君らだけじゃ男手が足りない時はぜひ弊社へお声がけ下さい。」




石田「俺はまず向井さんの目が見れるように努力致します。」




夕「ありがたい!実はなかなかのパワーだからさ彼女達。一人じゃ心細かったんだよ!心強いわー。」




高志「俺は見守るわ。」




夕「見てるだけなの?」




高志「違う違う。見て、守るの。バカが。」




夕「…同じ事じゃん。表出ろや。」

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