第18話 スーパー銭湯①

銭湯。といっても近所にあるのは所謂スーパー銭湯ってやつだ。僕はどちらかというと昔ながらの銭湯が好きなのだが、もう何年も前に潰れてしまった。


僕達が今来ているのは半年前にオープンしたばかりの所で、数種類の岩盤浴や浴槽があり、フードコートやカフェの他マンガも沢山あって、一日中いられるお風呂のテーマパークのような所だ。


今、僕と、現地集合した高志、プラス女子ーズは浴衣みたいな館内着を受け取っている。ちなみに、僕と楓ちゃんの結婚っていうか婚約を祝福してくれた皆の代金はお礼として僕が出した。


実は、父の所有していたマンションやアパートの権利は僕にあり、オーナーとして割と安定した収入があったりするのだ。業務は外部に委託しているので、あまりやる事のない大家ではあるが、妹には高校生社長と呼ばせている。ちなみに、楓ちゃんを見た瞬間「あ、ほんとに峰がいる。」とか、「よーパリピ。」と僕を呼んだ高志は当然自腹である。時間はまだ12時を回ったところなので、少なくとも4〜5時間位はゆっくりするつもりだ。


友紀「うわー!こんな大きな銭湯初めて来た!」


美咲「私も!何気に岩盤浴も初めて!」


楓「私は銭湯自体が初めて!ルールも分からない!けどワクワクする!」


泉「私は一回お兄ちゃんと来たからもう庭みたいなもんさ!おねーちゃん任せて!」


楓「はぅぅ。生きてて…生きてて良かった!」


夕「泉!おねーちゃんは任せた!」


泉「がってん!行こ、おねーちゃん!」


楓「はぅぅ。自然に、自然に手を握ってくれた…はぅぅ。」


美咲「なにこれ羨ましい!」


友紀「美咲ちゃん!来世に期待だよ!」


美咲「順調に行って70年後くらいか、長ぇなオイ!」


夕「高志!サウナ勝負な!負けたらあだ名を変えてもらう!てかふつーに名前で呼べよな!」


高志「名前とか今更ハズいわ。お兄ちゃんの方がいい。」


泉「たかくんさー、それを私が許すと思う?」


高志「ですよね。」


美咲「男子!ここに1時間後に一旦集合ね?ご飯食べよ?」


夕&高志「「りょ。」」


…………


脱衣所にて


友紀「うっわぁー。やばー。ヒソヒソ」


泉「ちょ、もういいでしょ!ヒソヒソ」


美咲「あんたガチに妖精なんじゃない?妖精の泉から来たんでしょ?だから泉なんでしょ?ヒソヒソ」


泉「いやいや、近所の病院だし。2400グラムで生まれたし。ヒソヒソ」


友紀「ま、私も負けてないけど。ヒソヒソ」


美咲「…むぅ。まぁやるわね。ヒソヒソ」


楓「ねぇ、三角形になって何してるの?裸で。ヒソヒソと。私は少し寂しいのだけれど。」


泉「あ、違うの!おねーちゃん違うの!へへっ♡」


友紀「ごめんごめんちょっと…へへっ♡」


美咲「あ、ごめん楓、あの…ってあんたもなかなかやるわね…」


楓「なにが?」


泉「もーいいから!美咲ちゃんはふつーだけど後は皆まぁまぁってこと!」


美咲「ふつー…。」


友紀「来世に期待だよ!」


美咲「だから長ぇよ!」


楓「なにが?」


泉「さ、おねーちゃん!まずは岩盤浴だよ!館内着着て行くんだよ!40秒で支度しな!」


楓「は、ハイ!」


…………


低温サウナにて


「いやねセミ、天ぷらってな、サクサク感が命なワケ、そうだろ?」

「そーだね、職人はそこに命かけてる感はあるね。」

「だろ?けどさ、天つゆしかり、天ぷら蕎麦しかり、最終的にひたひたさせるじゃん?コレ、心理だと思うね。」

「あー、ツンデレってこと?」

「それ。つまり、職人はMってことだと思うワケよ。」

「え…せっかく命かけてサクサクさせたのに、ひたひたにされて食べられちゃう〜ってこと?」

「イグザクトリー。」

「なるほど。深いな。けど職人を見る目が変わるだけでむしろ聞きたくなかったわ。」

「それも心理ってやつさ。」

「深いな。てかセミなんだな?どうしてもセミなんだな?」

「それも心理ってやつさ。」

「それ言いたいだけじゃん。」

「だけどな、セミ。パリピって向井さんがパリに住んでたって所も含んでたんだぞ?」

「……深いな。」

「さらに言うと、だ、峰ってのもな、セミの心を盗んでったっつー意味だかんな?泥棒だけに。」

「……ふか、いや何かお前怖いわ。深い通りこしてキモいわ。」

「それもしん、、、」

「言わせねーよ?!」


…………


1時間後 フードコートにて


泉「お兄ちゃん達天ぷら蕎麦にしたんだ。仲良いよね。」


夕「まぁ、なんとなく…な。」


高志「泉ちゃん、心理ってやつよ。」


泉「へー。キモいね。お兄ちゃんエビ天1個もらうね。」


高志「キモい…。」


夕「ひたひたにして食べてあげるんだぞ?職人さんのためにな?あとエビ天は1尾しかないんだけどね。」


楓「夕君、はいあーん♡」


夕「おっと。…んーパリの味!」


楓「パリに唐揚げないよ?でもかわいい♡」


友紀「私もあーんしたい!楓ちゃん!許可を!」


楓「ふむ。まぁいいでしょう。1回だけですよ?」


美咲「むむっ!!」


友紀「やた♡はいポテトサラダだよ♡夕君あーん♡」


夕「…んー北海道の自然を感じた!」


友紀「はぁ♡楽しい♡かわいい♡」


美咲「………くっ」


楓「だよねー♡食べたら無邪気に笑ってくれるのかわいいよね♡なんかこの餌づけ感癖になりそう♡」


友紀「それ!はぁ♡楓ちゃん、また機会がありましたらぜひお願いします!」


楓「仕方ないなー。私が側にいる時だけだよ?」


友紀「はい!有り難き幸せ!」


美咲「ね、ねぇ夕、あーんする?」


夕「いや、それ、ラーメンじゃん。」


美咲「………くっ悔しい!まさかこんな目に!数分前の自分を殴りたい!」


高志「俺、ラーメンでもいいけど。」


美咲「はぁ?キモいんだけど。」


高志「キモい…。」


泉「お兄ちゃん、だっこ。」


夕「あらま、寂しくなっちゃったかぁー…そっかぁ…いずにゃんおいで!」


いずにゃん「ゴロゴロ♡」


楓&美咲&友紀「「「うらやま…」」」


高志「しかしセミ、お前すげーな。夏始まってるな!ハーレムって呼ぶわ。」


夕「…悪い気はしない。」


楓「2年ぶりに帰ってきたら彼氏が魔王になってた…か。だがそこがいい♡」


美咲「ん…否定出来ない自分がいたりする。」


友紀「一夫多妻制を望んでいる自分がいたりする。」


高志「どんまい。」


最後の一言で高志は美咲&友紀から一発ずつ腹パンをくらっていた。

それこそ どんまい だった。

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