第11話 新しい一歩



集合した4人はその後ラウンド2(複合アミューズメント施設)に遊びに来ていた。



ボウリングは意外にも友紀ちゃんがトップで、高志、美咲、僕の順だ。ボウリングは僕のたった一つの欠点だね、右にいく呪いに掛かっている。



そして休憩がてら入ったカフェにて…



美「セミ、いや夕!そろそろ私に決めたらどうかな?」



友「急な抜けがけ?!ずるくない?コクったのは私の方が先じゃん!」



美「数十秒だけでしょ!じゃんけんで友紀が先になっただけじゃん!」



夕「いやいや、断ったじゃん。その場で。」



そう、実はこの2人には5月頃に告白を受けた事がある。


誰が見ても可愛いく、性格も申し分ない2人からの告白は嬉しかったけれど、楓ちゃんがまだ僕の中にいるし、手紙の内容的に少なくとも2年は待ちたい、と思っていたから断った。


そっか2年…もう過ぎたんだな…。



友「やっぱまだ…ダメかな?」



美「もう2年経ったんだよね?」



夕「確かに…もう2年経ったね…」



そう言って黙り込んでしまった僕を見かねてか、僕に代わって高志が口を開いた。



高「あのさ、2年前のこいつ、飯は食わねーし、話しかけても返事しねーし、ずっと泣いてるしでさ、ふつーに死ぬんじゃねーかって思うくらい落ち込んでたんだ、何日も。元々バカで明るいヤツだったから、たった一週間の彼女と別れたくらいでここまで落ち込む?って不思議だったし、ふつーにひいてたけどさ、こいつがずっと手から離さない手紙を奪って読んでみたんだ。そしたら、なんつーか…命がけ?みたいな雰囲気で、気づいたら俺までポロポロ泣いてた。一週間何してたのかは知らないのにね。真剣だったんだろな、2人とも。中2のくせに、一生分の恋愛してました。みたいな。コクった2人にこんな話しを、しかも俺から話すのもアレだけど、昔の事はきっとこいつ話さないから、言った。わりーなセミ。と、そんな訳で、こいつにとって恋愛は相当にハードルが高いんだよね。だから、こいつが自分で動き出すまでは多分何も始まらない。すまんけど勘弁してやってくれ。」



美「う、うん。」



友「なんか、凄いね。分かった。教えてくれてありがとう。」



夕「高志、あの時ひいてたんだ、しかも、手紙読んだんだ。ゲス野郎が。そして長いし。でもま、高志だし、そんなもんか。まぁ、サンキュな。そして、美咲、友紀ちゃん、今、高志の話しを聞いてて決心がついた。このままじゃ僕はダメだ。過去の事はどうであれ、僕はこの夏から新しい一歩を踏み出したいと思います!」



高「ほー。」



友「え?じゃあ」



美「告白受けてくれるの?」



夕「まぁ。そうだよ?」



美&友「「どっちの?」」



夕「いや、今の正直な気持ちを言うとね、彼女になる人は2人以外には考えられない。だから、独占したいって気持ちが高まったら、僕の方からコクるよ。そん時2人に彼氏がいても、コクるよ。奪いに行く。」



美「マジ?!聞いた?友紀!」



友「うん!うん!いつでもコクっていいよ!今すぐでもいいよ!」



美「私も!あ、あのさ、夕、明日ひま?デートしよ?ね?」



友「また抜けがけ!じゃ明後日!明後日は私と!ね?ね?」



夕「いいよ!あ、でもあれだ、妹の相手もあるから、ラインする。」



美「うん!うん!楽しみ!(取られる前に既成事実を…ふひひ♡)」



友「はぁ♡遂にここまで…(始めてを捧げよう…ふひひ♡)」



高「悪い顔してるな。2人とも。」




この日から美咲は僕を『夕』と呼び、友紀ちゃんは『夕君』と呼ぶようになった。小さな変化だけど、僕はセミから、神田 夕として再スタートを切ったような気がした。



僕の夏が始まった、気がする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る