第5話 兄弟②

一方、自身がペット認定されているとは露知らず、泉は並んでテレビを見る兄をチラりチラりと覗いてはほとばしるパトスを必死で抑えこんでいた。




(私のお兄ちゃん。優しくて、頼りになって、かっこよくて、かわいくて、面白くて、安心する。ずっと抱きついてたい。はぁはぁ。もう!なんなの?ねぇ?もう!好き!好き!す・き・な・の!ねぇ?結婚しよ?ね?ね?はぁ…つらたん。)




私の名前は 神田 泉 です。


神田 夕の妹です。14歳です。


私は、兄が好き。大好き。


ごめんなさい、マジなやつです。



自覚したのは割と最近で、兄の事はそれまでも大好きだったけれど、今はもう、意味が違う。控えめに言って抱かれたい。



とにかくパトス(性欲)がパない。それを発散するだけの為に、中3から陸上部に入りました。レアなやつです。



同級生は受験のために皆ほぼ来ませんが、私はきっと卒業まで走り続けます。ある意味、生活が掛かっているので。



おっと、少し話がズレましたが、とにかく、私、神田 泉は、ふつーに兄に恋しています。



そんな、私の愛する兄ですが、私の事を全く、全く女として見てくれません。


最近では、顔やスタイルに関してはかなり高い水準だと自負しているのに…。



まぁママを困らせるのは嫌なので、ガチに告ったり体の関係を迫ったりは出来ませんが、そろそろ限界じゃないか、と感じています。



私ももう中3ですので、異性からの熱い視線を感じたり、時には告白なども受けていますが、はっきり言って邪魔でしかありませんし兄以外とは考えられません。



ただ、一方の兄はと言えば、2年程前に一時的にでも彼女がいてみたり、高校でも何やら宜しくリア充しているご様子で、気に入りません。



私がどんだけ裸を見せつけても、ベッドに潜り込んでも、全く動じないのに、ポッと出の誰かさん達に鼻の下を伸ばしているかと思うと、納得出来ません。腹立たしい。



ほんと、なんなんでしょうね。私を一体何だと思っているのでしょうか?


とにかく、気に入りません。



兄は、自分の事を何者でもないただのモブだ、と言っていますが、はっきり言って兄はモテます。


顔だけの話ならば兄の親友の方が上、という意見も多いですが、性格や雰囲気等を含めれば例えあの超絶イケメン親友でさえ比肩する事の出来ないレベチな存在です。


ですが、ファン心理、とでも言うのでしょうか、『積極的に兄と関係を持ちたい』よりも『兄の邪魔をしないようにそっと見守っていたい』という思いが自然発生し、女子の間では暗黙の了解的に兄に色目を使うことがタブー視されており、兄視点では全くモテている自覚がなかったのでしょう。



中2までは背も低く、かわいいだけの顔でしたが、サッカーが上手く明るく爽やかだったので学年問わずにファンが大勢いました。憧れ値が高かったので告白こそされませんでしたが。



今は、サッカーこそ辞めてしまいましたが、背も173cmまで伸び、顔も、かわいいからカッコかわいいにクラスチェンジしてしまいました。


今後は背も益々伸びてしまうだろうし、さらにスタイルも良くなってしまうでしょう……はぁ…はぁ♡



と、とにかく、そんな素敵な兄ですから、私はどこぞの馬の骨子ちゃんに兄が取られやしないかと気が気ではないのです。



まぁ、たとえ彼女が出来たからといって私との関係が変わる訳ではないのですが……なんだか、焦ります。



何とかせねば。何とか。。。

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