第3話 地元でファンタジー
喫茶店ミーティングからの帰り道、家が近所の高志と自宅付近を歩いていると、金髪にグリーンがかった瞳のお人形さんみたいに可愛らしい少女と、黒髪をアップに纏め、エレガントにワンピースを着こなした貴婦人が、日傘を片手に手を繋いで歩いてきた。
庶民感覚から言えば、映画の撮影?オサレ雑誌の表紙?はたまたグレードの高いコスプレ?といったまるで現実味の無い光景に、二人して呆然と立ち尽し見惚れていると、こちらに気づいた金髪少女がトテトテっと駆け寄ってきた。
なんだろ?と思っていると、何故かムッとした表情でバッと手を広げ「5歳!」と言ってきた。
間髪入れずに僕が両手を突き出し、それを見た高志がすかさず片手を突き出して、「「15歳!」」と言ってあげると、可愛らしくニパッと笑い「ボンジュール♬」とペコッと頭を下げてまたトテトテっと貴婦人の元へ戻って行った。
高志と僕は変に上がったテンションのままブンブンと手を振って、二人の姿が見えなくなるまでボンジュルボンジュル言って見送った。
「おいおいおい!セミよ!王族だ!王族と出会った!」
「だな!親友よ!見たか?あの小さき姫の無垢で純真なる満面の笑みを!そしてあの女王の儚くもエレガントな微笑みを!」
「あぁ!ヤバかったな!あの笑顔を守るためにこの国を滅ぼしちゃならねぇ!そう思った!」
「わかる!今すぐ騎士学校に入学したい気分だ!」
「だよな!てゆーかさ!俺さ!16なんだけどな!」
「あぁ!お前!5月生まれだもんな!」
「「あはははははははは!」」
世にも珍しいファンタジーな出会いを果たし、興奮冷めやらぬまま高志と別れた僕は、どことなく気高い気分で自宅の玄関に足を踏み入れる。
すると、「おか〜。」とか低いテンションで何か言ってくる下民と出くわす。
妹だった。
「はぁ…所詮うちは庶民か。」と急に現実に戻された気分になりうなだれた。
そんなモブい町娘な妹は憂鬱げな僕に一切構うことなく、「アイス買ってきて。」などと言う。などと。。。
とはいえ、たとえただの町娘なれど、妹は我が家にとっては大切なお姫様である事は間違いないので、「仰せのままに」と踵を返す僕であった。
「いざゆかん、決戦の地へ(コンビニへ)。」キリッ。
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