第2話 最初で最後の異動(知ってるよ…)

「IT&業務改善室から来ました堀です」


 この日は何度同じことを言ったかな…。

 でもね、新卒で入社して以来、EDP、情報システム室、IT室、IT&業務改善室、と名刺の所属部署は数度変わりましたが、会社が勝手に部署の名前が変えただけでまったく同じ部屋、同じ部署、同じ机にいたので、販売物流系の皆様には堀の名前は知られていました。


「知ってるよ、いまさらなんだよ…」

 そうですよね…。


「はじめての異動なんですから、挨拶ぐらいさせてください」

「そうだよね…、長かったね…」

 ねぎらってくれる皆様。

「よかったね…、筑波にこれて」

 その時はまだよくわかっていませんでしたが、本当にいい異動でした。

 そのことは他のお話にいろいろと書かせて頂いています。


 きっと傍から見ても

「堀ちゃん、システム室、新卒で入社してからずっとだもんな…、異動させてやればいいのにな…」

「でも、あの仕事、あの部署、あのメンバーの中でやっていくのはなかなかむつかしいよな…」

 と思われていたようです。


 実際、その異動より10年前に2か月間心療系の病で休職しました。

 人って、人生っていろいろとあるのです…はい。


 異動先は物流部です、システム室からロジスティクスのお仕事になりました。


 物理的に物が動くのは面白いです。

 物理的に物を動かすのは大変ですが、リアルでね、苦労もありますが楽しかったです。


 販売物流系のシステムを組んでいたので、みなさん顔見知りなんですが、帳票もね、僕が作ったり、修正したものでした。


「まだ使っているんですね…、これ」

 昔僕がつくったパーツのピッキングリストを持って部品を探しているとき、西村さんに言いました。

「不便なところないしね…」

 慣れなんでしょうね、でも嬉しいものです。

 きっと私が退職した今でも使っているのでしょう、各種帳票。


***


 昔々、入社して数年の若手のころ、ベテランの山田さんに言われました。

「堀君よ…、いろいろと情報盛り込むのはいいよ…」

 テストで印刷した紙をみながら超ベテランさんに話かけられ僕は緊張しました。


「だがな、俺たちくらいになると細かい字は読めないんだ…。必要な情報だけでいいんだ…。だからこれやり直しな…」

 何度も修正しましたね。


 でもわかります。

 今ならわかります。


 細かい字が見にくいんです。

 過多な情報もいらないんです。


 現場は略品名でわかるのです。

 名鉄運輸の運輸までの表記は必要ないのです。

 その他いろいろとね。


 今ならわかります。


***


 自分で作ったシステム、それで印字した帳票で商品やパーツのピッキングをして出荷します。

 自分の作った送状、納品書を添付します。


 複雑な心境というより、

「堀も昔から頑張っていて、少しは役立ってたんだな…よかった…」

 そんな感じでした。


 これが最初で最後の異動の初日のことでした。

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